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【行ってきた】オディロン・ルドン ―夢の起源―
最も本質的な色、黒で表現される幻想世界。
【なずな】 2013年05月05日
今晩は、なずなです。
新宿の損保ジャパン東郷青児美術館にて、こちらの展覧会イベントに行ってきました。
オディロン・ルドン ―夢の起源―
≪夢や無意識の世界への一歩≫
http://evenear.com/event/detail/7923/
損保ジャパン東郷青児美術館は、景色もなかなかです。
黒の画家、と言われたオディロン・ルドンの作品が展示されています。
彼は木炭画や、リトグラフ、版画などの「黒」を用いた作品を多く残して
います。
私は小さいころ、どこかで「蜘蛛」という作品を見たのですが、その絵に
とても衝撃を受けました。
黒くて丸い身体に、長くて細い手足。何より特徴的なのはその顔です。
「身体の中心に人間の顔を宿す驚くべき蜘蛛」、という表現もされている
ようですが、身体の中央に顔が付いているのです。
大きな丸い目はどこか上の方を意地悪に見つめていて、醜悪な鼻に、
にやりと嫌らしく曲がった口。
絵本か、子供向けの雑誌に載っていたのだと思いますが、細かい状況は
忘れてもあの絵を見たときの不気味さというか、心のどこかにひっかかる
感じは忘れられません。
この絵を見て「ユーモラス」とか、「温かみのある絵」なんていう人もいるよう
ですが、私はトラウマとも言えるくらいなんとも嫌な気分になってしまうのです。
上手く表現できないのですが、明らかにこちらを嘲っているように見えます。
「何か悪いこと」が起こる、もしくは、この蜘蛛が災厄をもたらすのを知っていて、
何も知らない私たちをニヤニヤ眺めているようにも見えます。
この蜘蛛は私より‘下等’な存在、汚らわしいものなのに、そんなものに見下され
ているような感じがするという苛立ち。そして、この蜘蛛が持つ禍々しさみたいな
ものを子供ながらに感じたのではないかと思います。
ともかく、そんなものを見たことすら忘れていたのに、このルドン展のポスターを
見て「あの絵だ!!」と、一瞬であの気持ちが甦りました。
さて、そんなトラウマ的な絵を描いた画家オディロン・ルドンですが、幻想的で怪しい
絵のイメージが多いですが、精神世界を描きながらもその手法、考え方は科学的な
ものに基づいていたんだな、という印象です。
科学の及ばない何か不気味なもの、を描いている作品が多かったです。‘黒の画家’と
いわれるだけあって、白黒の不気味な作品も多いのですが、晩年は鮮やかな色を
使った作品も多く見られました。取り扱うテーマも、神話、聖人などが多く、人物の表情
も穏やかな感じがしました。
一人の画家の考え、人生の変遷が表れているような展示でした。