兵頭喜貴写真展 模造人体シリーズ第5弾「さらば金剛寺ハルナとその姉妹-愛の玩具たち」
遡ること、およそ半年前、2013年8月5日の未明。
兵頭喜貴は、今まで体験したこともないような激しい頭痛で目覚め、直後に嘔吐してしまう。そして大学病院に救急搬送された。
検査によって「下垂体」という、頭のど真ん中でホルモンの分泌を制御する豆粒程の脳ミソが、腫瘍により圧迫・出血していたことが判明する。
脳そのものが破壊されると、頭の中は痛みと苦しみのみで充満し、理性や欲望も完全に消え失せ、もう咽の渇きすら感じ取れなくなる。
今、思い出しても恐ろしい体験だった、と兵頭氏は語る。
それから1ヶ月間もの入院生活は、さらなる苦難の連続だった。死をも想起させる頭痛、目の異変が重り、一時は人生の終わりすら覚悟したという。
本当に辛かったのは実は回復することが出来た後だった。大量の画像診断、負荷試験という名の過酷な”人体実験”によって、もう10年以上も前から下垂体の機能障害が起きていたことに加え、今回の出血により異常が拡大してしまった。
ホルモンの分泌が完全に狂ってしまい、脳の外科手術を行うか、死ぬまで薬物治療を受けなければならないと・・・告げられる。
そして、下垂体の機能障害と薬物治療による体質の変化が、急速に実体化を及ぼすことになる。古くなった皮はぼろぼろと剥落していき、視力が下がり、その反面、味覚と嗅覚が鋭くなった。睡眠障害からは逃れられたものの、生殖機能が壊滅。ありとあらゆる意欲が低下していく羽目に。
どうにも厄介なのは、この病気が、人間の根本的体質に加えて、五感や感情面などにも影響を及ぼすということだった。
脳は壊れ、機能が変化すると、全てが変わる。現代の医療技術では、一旦壊れた脳は再生しない。今は、薬物治療によってホルモンの分泌バランスを調えようとする状態だが、やれることには限界があり、元に戻ることは永遠にない。
―もういっそのこと兵頭喜貴は死んで、新しい身体に生まれ変わった。そう考えることにした。その方がよっぽど清々する・・・。
「さらば」の後には「新たなる旅立ち」がある。以後「永遠に」「完結編」「復活篇」「2199」・・・と連綿とハルナ達との旅は続いて行く。
「さらば」とは、決別であり、新たなる決意表明でもあるはずだ。
◆期間中、都築響一さんとのトークショーが催される予定。
ぴんから体操・兵頭喜貴 展覧会開催特別ギャラリートーク
開催日時:2014年3月8日(土)17時~
出演:兵頭喜貴 ゲスト:都築響一氏をお迎えして
イベント入場料1500円(ワンドリンク付き)
※金土日は基本在廊。
(2014/3/4 時点の情報)