東京ビッグサイトで行われた、ドール関連手作りグッズ展示即売会「 I・Doll(アイ・ドール) vol.46」。さまざまなドール(お人形)に関する手作りグッズが集まるフリーマーケット(展示即売会)の模様をレポートします。
◆最新ドールから懐かしのドールまで勢ぞろい
セキグチ/ペットワークスさんのブース。ポストペットの生みの親がプロデュースした、東京の今を切り取るリアル・ファッションドール「momoko(モモコ)」。すごくオシャレ! 今どきのドールという感じですね。昔懐かしいモンチッチもいます。
株式会社リ-メント(受託販売:株式会社ユウメディア)さんのブースでは、ぷちサンプルシリーズ「みんなの音楽室」と「勉強づくえ」が紹介されていました。『マツコの知らない世界』で、マツコ・デラックスさんも絶賛していたミニチュア商品。こんなに小さいのに引き出しもちゃんと開くのがすごい! お手軽な価格も魅力で机に飾っておきたくなりますね。
ドール肖像写真館「Dollux」さんは、クラシカルな雰囲気のモノクロ写真が撮影できるスタジオ。19世紀の写真技法で、銀を使いガラスや鉱石にドールの姿を写します。自分がお迎えしたドールを撮影するため、いくつかの方法を試していくうちに、このやり方にたどり着いたのだとか。
◆I・Doll 注目のディーラーさんたちを直撃
50以上のプロブース、およそ500ものアマチュアブースが出展しており、どこから見たらよいのか迷ってしまうほど。その中でも特に注目のディーラーさんたちにお話を聞きました。
<SMART DOLL(スマートドール)>
3Dプリンターなどを用い、国内で製造されている60センチの可動式ファッションドール。その第一弾となったのが、日本の文化を世界に発信するテレビ番組『カルチャージャパン』のマスコットキャラであり、オリジナルアニメ『ミライミレニアム』のメインヒロインである末永みらいちゃん。
みらいちゃんは、通称「永遠のぴちぴち17歳」」。身長165cm、スリーサイズはB86cm、W58cm 、H85cm。カジュアルな服からメイド服まで、さまざまな衣装を着こなします。浅草メトロポリタン高等学校に通いつつ、ソーラーマリーン紅団の一員として人知れず戦ったり、報道部でニュースキャスターやレポーターをしたり、と大活躍。将来の夢はカメラマンで、さらには日本刀好きな一面も。
2007年、ダニーさんが運営するサイト「カルチャージャパン」のマスコットキャラクターとして誕生。内閣官房のクールジャパン戦略推進会議に出席したり、テレビドラマにも出演したりしています。様々なアニメ・ゲーム会社とコラボしているほか、日本とマレーシアの観光庁のマスコットキャラにもなっています。
サイトではキャラクター設定資料集も公開され、誰でも自由にコスプレや二次創作が楽しめるようになっています。
開発者のダニー・チューさんは日本の“オタク”文化や、伝統文化を海外に広く紹介しています。ダニーさんによると、海外市場も意識しており、イスラム圏のお客さんのためにヒジャブを被ったものや、褐色の肌のドールも作成し、それぞれ人気が出ているそう。国や人種、年齢、性別を超えて、世界中のファンに愛されているのですね。これまで約40か国の人たちがスマートドールをお迎え(ドールを購入すること)しています。
また、衣装にもこだわりが。二次元のアニメの服を再現すると、平面的な服になってしまうのですが。3次元でもリアルな質感を出すため、カジュアルな服装にしているとのこと。さらに「チープで人間にとって着心地の悪い生地は使わない。なぜなら服がチープだと、ドールまでチープになってしまう」というモットーがあり、妥協することなく質とデザイン性の高い製品を提供しています。
特に靴に注目。ダニーさんのお父様は、女性なら誰もが憧れるあの『ジミー・チュウ』。共同デザインしたスマートドールの靴は、人間用の靴と同じ工程で作られているのです。人間用のジミー・チュウのハイヒールは手が届かなくても、こちらなら買えるかも。
今回のイベントではワークショップも開催されていました。好きなパーツを選び、ここでドールを完成させます。ちなみに、スマートドール自体のカップ(バスト)サイズは、S、M、Lの3種類から選ぶことができますよ。
<Dearmine(ディアマイン)>
本格出展は今回が初めてで、朝から列ができていたとのこと。日本初売りの目を閉じたシャムネコや、同じく国内初売りの新しい原型で作られたキリン、個人の原型師とコラボしたコーギーなどが注目商品。世界中で販売しているメーカーですが、日本での売れ行きが一番良いそう。
また、ドールの耳が取り外せるタイプもあり、カチューシャや帽子、ヘッドドレスをつけやすいのも特徴です。
左が社長さん。ご本人もカワイイ!
―― どういったタイプの人形が多いですか?
動物がメインで人はあまりいません。韓国でも日本でも猫が人気ですね。ただ、日本は他の動物、例えば爬虫類、ウーパールーパーなども売れますが、韓国ではそこまで売れません。
―― 今後はどのような人形を作る予定ですか?
もっといろいろな動物の種類を作って、タイプを増やしたいです。
―― コンセプトはありますか?
可愛ければいいんです!(断言) 自分がカワイイと思ったものを作り、やりたいと思ったことをやります。サイズも個性も異なりますが、全体としての「温かみ、豊かさ」というディアマインらしさを出しています。
カジュアルではないものの、ファンタジックになりすぎないように気を付けています。また色もパステル系を多くして優しい感じにしています。
―― 日本の伝統的な衣装を着たドールもいますね。
狩衣(かりぎぬ)を着たドラゴンですね。服装ですが、浴衣など日本のスタイルは世界中で人気があります。当社でも一年に二回ほど新作のフルセットを出しています。
日本の生地は質もよいですし、デザインも好きですね。日暮里で布地を買っているんですよ。
伝統的な日本の衣装、狩衣(かりぎぬ)を着た龍のドール。
前回は肌の色がグリーンだったが、今回スカイスキンという淡い水色のものが登場。
動物系ドールが充実しているため、人外、獣人、ケモノっ子好きのファンが多くいるようです。コロンとした体形とぱっちりした目がカワイイものから、スタイルが良く思わずドキッとするくらい妖艶な表情を見せるものまで、かなり幅広いバリエーションがありました。
<ROSEN LIED(ローゼンリード)>
こちらも初出展のブランド。繊細な造形と優美ではかなげな顔立ちが特徴です。開場してすぐにほとんどのドールが売れてしまったそう。
ここでも社長さんにお話を聞きました。
―― 一体作るのにどのくらいの時間がかかるのですか?
メイク、服、髪型など、それぞれ別の人が担当して同時進行で進めていますが、それでも大体一か月かかります。一から全てコンセプトを決めて、髪型、メイク、服の担当が集まり、打ち合わせをします。全体のバランスなどを見てちょっと違うと思えば、完成後でも修正をします。特に色合いにはこだわりがありますね。
―― 日本のお客さんと韓国のお客さんの違いは?
国による好みの差はあまりありませんね。ただ、韓国では一般的に、購入したドールに自分でカスタマイズをするのが主流です。一方、日本では会社が出したセットを全部買う人が多いです。限定モノも人気ですね。メイクはメイク、服は服の、それぞれの専門アーティストが担当しているので、それぞれにファンがいるのです。
―― どんなところが特徴でしょうか?
韓国では頭身の高いドールが流行っていますが、あえて小さめにしてクラシカルな雰囲気を出しています。また、現在は工場で作るドールが多いですが、一つ一つ手作りすることにこだわっています。そのため、同じタイプでも少しずつ表情が異なります。
世界観を一言で表現することは難しいのですが、フランスのアンティーク調を意識しています。作り手も嗜好性が近い人たちが集まっていますね。
新作ドールの受付も行っていました。
人形本体、メイク、ウィッグ、送料なども含めると5万円ほどですが、同時に2体予約する方も……。
非常に繊細かつ豪奢な衣装にうっとり。さらに、まつげの一本一本まで本当に丁寧に作られていることが分かります。そこに一体のドールがいるだけで、ROSEN LIEDさんの世界になってしまうところがすごい。
◆ドール(人形)の世界は奥が深い
人間サイズのお人形さんを発見! しかも動いている! マスクをつけているとは言え、本当にお人形のようで驚きました。ドール好きを極めるとドールになりたくなるのでしょうか。会場にはコスプレ更衣室も用意され、ドールと同じ服装でイベントに参加することもできるとのこと。
ドール用の食器、服や靴はもちろん、浮輪まで販売されていました。服が並んでいる様子は人間の服屋さんと変わりありません。どんなコーディネイトをするか迷ってしまいそう。
また、ここで買った衣装などを着て写真撮影ができるよう、背景の貸し出しとスペースの提供も行われていました。ドール好きのお友達同士が集まって撮影会をするようです。
持ち運びのためのケースもさまざまな種類が販売されていました。一緒にお出かけするときには必須ですね。
担当の方によると、このイベントは来場者の半数以上が男性というのも特色の一つだそう。ちなみに、男性は何を買うか計画を立てて来場する人、朝から並ぶ人が多いとのこと。一方、女性はいろいろ見ながら買い物をする人が多いらしいです。
ドールは高いものだと一体数十万円。お洋服も数千円します。もはや芸術品の域ですね。さらに季節ごとに人形に合う服や、家具を自分で作る人もいるとか。自分好みの表情にするため、メイクを別注することも。
値段だけでなく楽しみ方も幅広く、とても奥深い世界です。お人形遊びは子供のもの、とあなどるなかれ。大人だからこそ楽しめる趣味かもしれません。
取材/篠崎夏美