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硝子の器を覗けば、黒い猫又が現れる。『逢魔ヶ刻、猫は跨ぐ。世を』

アイコン黒猫飼いガラス作家「可夜」、注目の初個展

2017/10/21(公開:2017/10/08)
猫と切子ガラス。ふたつが合わさると、その魅力は無限大に。

ガラス工芸家のIceCrack+/可夜さんによる初個展『逢魔ヶ刻、猫は跨ぐ。世を』が渋谷のいろどりやギャラリーで開催された。


可夜さんと言えば、猫と切子を融合させた「猫切子」や、彫刻に宙吹きを融合した「月渡り猫」といった独特の世界観を持つ作品たちで知られる。

TV番組の『所さんのニッポンの出番!』、『行列の出来る法律相談所』、NHK関西ニュースといった多数のメディアや雑誌でも取り上げられた。さらに観光庁が行っているおみやげグランプリ2017で見事『クールジャパン賞』を受賞している。



今回の個展では、可夜さんがこの日のために創り上げた作品約200点が展示販売される。

初日の展示開始時刻。ギャラリーの前にはすでに行列が。可夜さんの作品に魅了された人は多く、今回は一点モノ作品も多く出店販売される。新作を確実に購入しようという人も多いはずだ。



開場にあわせて、来場者がギャラリーに吸い込まれるように入っていく。ギャラリー内はすぐに人でいっぱいになり熱気も増す。



来場者はひとつひとつの作品を手に取り、細部に至るまで丹念に観察。細かな部分のデザイン、形状、光に当てた際の反射による輝きなど、作品の魅力を存分に体感している。

可夜さんの作品で、特に有名なのは『クールジャパン賞』 受賞作品でもある「夕焼け猫+七宝紋/切子」だろう。



しかし、だからこそ可夜さんは、「夕焼け猫」のデザインを超えるという壁に苦しめられたと言う。まさに自分自身がライバルであった2年という時間を費やし、今回、新たなるデザインの切子が登場した。



それが第2弾「逢魔猫切子」である。猫の尻尾に注目して欲しい。尻尾の先が二又に分かれている。そう、この猫はいわゆる「猫又」なのだ。そして背景はまさに個展のタイトルにもある「逢魔ヶ刻」。

古くから夕暮れには妖(あやかし)が出現するというが、この猫又もまた夕暮れに出没し、猫に化けて人間界を闊歩するのかもしれない。

「夕焼け猫」 は愛猫の雪ちゃんを撮影した写真がモチーフになっているが、今回の作品は、想像上の要素を取り入れている。並べられた作品は可夜さんのデザインと、江戸切子職人の仕事によるものだ。



今回の個展では、可夜さんが自らデザインするだけでなく、実際の作品まで自分自身のみで作り上げた作品が多く展示販売されている。

「逢魔猫」のデザインを細部にまで彫り上げた作品も。猫の躍動感や、地面に映る影、背景の電線などがひとつのグラスに集約されている。



中を覗くと、その細かさがより実感できる。グラスの形状にあわせてわずかなズレも許されないため、緻密な技術と神経が必要とされる。



「逢魔猫」のデザインの完成形とも言えるものだろう。可夜さんによると「背景に電車を入れるかどうか迷いました(笑)」とのこと。

また、宙吹きと彫刻が合わさった類稀なる制法、グラールによる作品は、絶妙なコントロールが要求され、作成にはかなりの苦労があったとのこと。




「銀箔紅葉」がコンセプトの作品。通常、紅葉と言えば秋の鮮やかな色を想像するが、こちらは銀色の紅葉である。冬の訪れを示唆するような、幻想的な雰囲気に仕上がっている。



面白いデザインといえば「小悪魔猫」。なんと猫に羽が生えているではないか。このデザインが生まれるきっかけになったのも、愛猫の雪ちゃん。

ある日、ハロウィンに使う「小悪魔」カチューシャを買ってきた可夜さんは、雪ちゃんに着けてもらおうと考えた。ただし人間用のカチューシャなので、雪ちゃんの頭には大きすぎる……。

ちょっと考えた末、背中の辺りに着けてもらうとこれがピッタリ。そしてその姿は、まるで羽が生えた猫のようだったのだ。振り向いたお顔がなんともキュートである。



この時の、あまりにも愛くるしい姿をモチーフに出来上がったデザイン。作品自体は急きょ制作に取り掛かったもので、出来上がったのは個展間近、まさにギリギリだったそうだ。そのため、このデザインを取り入れた作品は現在数個しか存在していない。



可夜さんが、自身で生み出した切子シリーズはまだまだある。「星の羅針盤(アストロラーベ)」 は古代の天体観測器具がモチーフになっている。



伝統柄においても、難度が高いとされる「菊繋ぎ」による「アストロラーベ/菊繋ぎ紋」。太い菊の部分と細い線の部分に分けることで、重なったところがより強調され、まるで星のように見える。可夜さん自身が考案した模様だ。



「逢魔猫/可夜硝切子」は、デザインはもちろん、宙吹き、彫刻、切子まで、全てが可夜さん自身の手で生み出された逢魔猫作品。光にかざすと、中がまるで星屑のように青く輝いてとても美しい。





ここまで紹介したものは、可夜作品のほんの一部に過ぎない。初めての個展でありながら、その作品のバリエーションには驚かされる。

可夜さんによると、今までは実際の写真をモチーフにしたリアルなシルエットをデザインに活かしていたが、今後はさらに幻想の世界観を取り入れていきたいとのこと。

例えば、という前置きはつくが、妖をテーマにした作品を色々作ってみたいとコメントしてくれた。グラール製法を活かして、かの「九尾の狐」が硝子に封印されたような「殺生石」といった作品イメージがすでに可夜さんの中にあるという。

今回の「逢魔猫」でもすでに猫又が登場しているように、可夜作品に多くの妖怪変化が登場する日が来るかもしれない。切子ファンや猫ファンのみならず、妖怪ファンにとっても可夜さんの活動は注目に値するだろう。

切子の新しい可能性を広げる可夜さんのガラス作品。手に取ってその存在感を実感してみて欲しい。

(取材/イベニア)

IceCrack+/可夜 個展「逢魔ヶ刻、猫は跨ぐ。世を」

展示期間:2017年10月7日(土)〜10月15日(日) 
休日:11日(水)、12日(木)
時間:13:00〜19:00 ※初日は14時より開場、最終日は17時に閉場
場所:いろどりやギャラリー(東京都渋谷区円山町14-11)
作家在廊:初日と最終日、他
アクセス方法:JR渋谷駅より徒歩8分 神泉駅より徒歩3分
IceCrack+/可夜 ブログ:http://icecrack.blog.jp/


















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