世界最大のクロスワードパズル“メガクロス”をご存じだろうか?
パズル雑誌や書籍を出版するニコリが作成したメガクロス。このクロスワードパズルの盤面は縦90㎝×横13mの巻物状(書籍版も販売中)になっており、66,666語が詰め込まれている。制作期間は、ニコリ編集部、パズル作家など含め20人がかりで、約3年。大きすぎて1日1本しか印刷できないというから、何から何までメガサイズだ。
そんな、現在ギネス申請中のメガクロスに挑戦するため、お台場カルチャーカルチャーで開かれた『世界最大のクロスワードパズルへの挑戦~お台場メガクロス王決定戦』に我々イベニアチームも参戦した。
■編集、ライター、クイズ作家、プロチームで参戦!
イベニアチームは、パズル作家の高柳優さんをアドバイザーとし、イベニア編集者と、イベニアライターの筆者の3名で挑戦した。高柳さんはネクタイまでクロスワードパズル模様という気合いの入りようだ。
実は高柳さんはメガクロス制作にも関わっているため、直接問題は解かず、イベニアチ―ムサポートをしていただいた。
一応、クイズのプロと言葉のプロということで「絶対メガクロス王になってやるー!!!」と気合い十分で参戦。
メガクロスに挑む前に、高柳さんに作成してもらったメガクロス虎の巻を確認し、こちらも特別に作ってもらった「イベニア版」練習問題で肩を慣らす。
会場では東京カルチャーカルチャーの床にメガクロスが広げられていた。13メートルもあるので、一般家庭ではまず広げられないだろう。その様子はパズルというより敷物。圧倒される迫力である。
■製作期間約3年! 世界最大のクロスワードパズルができるまで
メガクロス広報担当の荒井奈緒さんにお話を伺った。
――メガクロスを作ったきっかけは?
5年ほど前、企業向けに世界最大のクロスワードを作ったことがきっかけです。作り終わった後に、ニコリでも世界一のものを作りたいよねと話が出ました。
実際にこんなにたくさんの人数で 巻物版のメガクロスを解くのは、このイベントがはじめてです。購入した方でも、おそらくまだ全部は解いていないと思われるので、 一回みんなで挑戦してみたいねということでイベントを開催しました。
―― 制作秘話を教えてください。
クロスワードは、黒マスの位置で何文字かが決まるため、何文字の単語が何千個必要か盤面設計を終えた時点でわかります。
はじめ設計したときは、2文字の言葉数が足らなくなりそうになりました。じゃあ、2文字は何千個に抑えよう。3文字は何千個にしよう。という風に、設計の段階で言葉の文字数を調整していきました。
メガクロスは大きさだけでなく、美しさも際だっている。エリアごとに異なるパターンが連なり、幾何学模様が描かれているのだ。
■いざ、メガクロスに挑戦!
まずは、「メガクロス王決定戦」のルールを確認しておこう。
・個人または2~3名のチームで参加可能。
・66,666語の中には難語や、マイナーな固有名詞も多いため、検索もOK。
・1ターン40分、合計3ターン。各ターンの間に強制休憩10分あり。約3時間の戦い。
・2回のみ、カギの答えを教えてもらえるカンニング券もある。
数字とマスが書かれた紙が配られる。その数字はチームのエリアにあるマスの数字と連動しており、このマスを埋めて3文字の単語をどれだけ多く作ったかで勝敗が決まる。この紙に書かれた数字の部分だけでもワードを埋めれば、勝てるということだ。
マスを埋めるべく、紙に書かれた数字のヒントを解くが、やはり難しい言葉が多く、なかなか埋まらない。できたと思っても、3文字の単語として成り立たず、意味不明の言葉も……。
他のチームも無言で、メガクロスに向かい続けている。カルカルの店員さんも「イベント中なのに、こんなに静かなのは初めてです……」と仰るくらい集中していた。スマートフォンやタブレット、電子辞書、さらには時刻表を持ち込んでいる人も。画像をとってチームメイトで送ったり、LINEで進捗を報告し合ったり、ハイテクを駆使しているチームもあった。
イベニアチームも悪戦苦闘。検索してもわからない難問の数々が立ちふさがる。途中、カンニング券も2度使用するがすべて埋まらず。最後は、慌てて適当な文字を入れ3文字の単語を作り時間ぎりぎりに提出した。
■そして、採点へ……
採点中は、メガクロスにまつわる数字の話や、クイズなどが行われた。
例えば「8時間」という数字は、巻物1本を印刷するのにかかる時間。「71647」は黒マスの数。「31文字」は66,666語の中で一番長いワード数(短歌や辞世の句)など。どの数字を聞いても、メガクロスのすごさがわかる。
クイズではメガクロスの中に「メガクロス」という言葉があるか、○か×か? 66,666語の中に「ン」ではじまる言葉はあるが、「ヲ」で始まる言葉はない。○か×か? など。
ちなみに前者は×で、後者は○だ。
採点を終えると結果発表。20問中19問正解した同点のチームが多く、最後は提出順で決まった。
イベニアチームの好成績を期待したものの、正解数は12問……惨敗だ。意気込みむなしく撃沈。
優勝したチームは、普段MOSAIC.WAVという音楽ユニットで活躍している、ボーカルのみ~こさんと、キーボードの柏森進さん。
――普段からクロスワードや、クイズはやられていますか?
(柏森さん)最近、クイズ熱が盛り上がっているのをネットで知って、おもしろそうだと思い、いろいろ挑戦しています。
ニコリの本は以前から読んでいて、9月に発売された「パズル通信ニコリvol.156」では、パズル好きで、パズル以外の分野の人を取り扱っている「私、実は『パズル関係者』です」というコーナーでインタビューを受けました。
――今日のメガクロスは、結構手ごたえはありましたか?
(柏森さん) 最後の最後までわかんない問題が、3つぐらいあったので手ごたえはなかったです。3時間って結構、短いですよね。終わってみてみたら、(メガクロスの盤面が)真っ白で、これだけ解いても全然埋まってないと思いました。
――作戦はありましたか?
(み~こさん)クロスワードの盤面をメモして、席に戻って二人で調べて書いて、3文字のマスを埋めたら、メガクロスに書き込んでということを繰り返していました。机の整理整頓をして、わからないヒントはさっさと相手に渡していましたね。
最後に、み~こさんは「冬のコミケにでるんですけど、そこで売るCD楽曲のテーマがクロスワードなんです」と話してくれた。クロスワードを好きで楽しんでやれたというのも勝利の秘訣といえよう。
66,666語もの文字があり、難解なワードも多々あるメガクロス。言葉の詳しさより検索力や、チームワークの良さなどが重要そうだ。
高額ながら巻物版(25万+税)や、書籍版(3万5000円+税)も購入可能。もし、挑戦する機会があればチームワークと検索力を駆使して、ぜひ健闘してほしい。
取材/舟崎泉美 協力/高柳優