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お雑煮は正月だけじゃない! 日本人のDNAレベルに刻まれた、究極のローカルフード・雑煮を食べつくす。「ご当地雑煮祭 2015秋」

アイコン新たなお雑煮の可能性がここに。雑煮×日本酒を堪能してきた。

2016/02/09(公開:2015/11/03)
寒くなってきたので、汁ものが恋しい。

普通はここで“鍋”かもしれないが、あえての“雑煮”を提案したい。
雑煮は、汁ものの中に地方ごとに特色のある食材とお餅が入っている究極のローカルフード。



餅は丸か角か、焼くのか煮るのか、具は肉なのか魚なのか、どんな野菜を入れるのか、何の出汁を使うのか……などなど。地方によって、これほどバリエーション豊かな食べものも珍しい。
 
ご当地雑煮祭り 2015秋 
6種類のお雑煮と10種類の地酒で至福の乾杯を!

 

基本はお正月に食べるハレの日の料理だが、そんなこと関係ないとばかりに、東京カルチャーカルチャーで、夏に続き第2回目となる「ご当地雑煮祭り 2015秋」が開催された。

イベニア取材班は「雑煮がどれだけスゴイ食べ物なのか」ということを、実感することになる……。
 


「夏にお雑煮のイベントを開催して、かなり反響がありました。みんな正月に関係なくお雑煮が好きなんだな〜と思いまして、2回目の開催にいたりました」と東京カルチャーカルチャー・プロデューサーのテリー植田さん。
 


今回は、閃き作家の高柳優さんのご当地クイズ・パズルもあるという。様々な方向から雑煮を楽しめるイベントになりそうだ。
 


入場時に、参加者の出身地とふるさとのお雑煮のお餅のアンケートをとり、マップ化していた。「丸餅か、角餅か」、「焼餅か、煮た餅か」、それぞれ4タイプに分け、シールで色分けする。東京近郊などの東側は焼いた四角いお餅、西側は丸い煮たお餅と分かれる結果に。一目でお雑煮餅の分布が分かるのが面白い。

 
■  世界でひとり!? お雑煮マイスターによりセレクトされたお雑煮たち

本日のお雑煮は、お雑煮マイスターである粕谷浩子さんのセレクト。粕谷さんの立ち上げたお雑煮研究所でパッケージ化された(または今後される予定の)お雑煮だ。
 


粕谷さんは、日本、いや世界ただ一人のお雑煮研究家。親の転勤が多く、鳥取、北海道、新潟、静岡、広島など地方へ引っ越していた。そのたびに、さまざまなご当地のお雑煮に出会い、お雑煮のおもしろさに目覚めたそう。今でも全国各地をまわって、さまざまな地域のお雑煮を研究している。
 


ちなみに粕谷さんの母方のご実家は香川県で、あんが入った餅入りの白みそ雑煮。父方のご実家は広島県、牡蠣のはいった豪華なお雑煮をよく食べていたのだとか。
 
本日登場のお雑煮6種類を南から順に食べてみた。
 
[鹿児島県 焼きエビ雑煮]



干して焼いたエビとしいたけの出汁。九州の甘い醤油を使ったすまし仕立て。具はほうれん草、もやし、かまぼこなど。エビが香ばしく、出汁の甘さもよかった。具がもやしというのも新鮮。
 



[香川県 あん餅雑煮]
 


あんこが入ったお餅がイン。いりこ出汁、白みそを使用。最初はびっくりしたけど、あんの甘さと白みそのまろやかなしょっぱさが意外といける。

会場からは「あり得ない!」「不思議〜」といった声も。筆者も初めて食べた。上にかかった青のりの香りが食欲を誘う。
 




香川県は、昔から和三盆の産地。高級食材のため庶民は食べられないけれど、お正月くらいは食べたい! ということで餅の中に隠して食べていたのが起源だそう。様々な歴史が詰まったお雑煮、確かにおもしろい!

 
[奈良県 きなこ雑煮]



白みそ仕立て。具はお豆腐とにんじん。珍しいのが、汁の中のお餅を取り出してきな粉につけて食べるところ。
 
これも初めての体験。粕谷さんいわく、お餅を取り出して食べることは、全国的にも割ある方法だそう。岩手では砂糖や出汁で味付けした「くるみだれ」につけて食べる地域があったり、福岡では、納豆につけて食べる地域もあったりするとか。雑煮、なんて自由なんだ!



 
[東京江戸雑煮]



昆布・カツオ出汁のすまし仕立て。鶏肉とにんじん、ほうれん草など。でっかい椎茸もイン。イベニア取材班2人とも(秋田&茨城出身)「一番、馴染みのある味だね」と意見が一致。
 
ちなみに、本日一番早く品切れになったのもこちら。東京近郊の出身の人が多かったというのも理由のひとつかも。西のほうではみりんを使わないことが多いそうなので、そこが味付けにおける大きな違いのよう。

 
[新潟 新発田 鮭いくら雑煮]



鮭と、あえて火を通してトロッとさせたいくらが特徴。だいこん、にんじん、こんにゃくなどが入ってとっても具沢山。鮭といくらの贅沢コンビ。
 


本来はもっと具沢山、というこの新発田の鮭いくら雑煮。毎年1月に「全国雑煮合戦」がおこなわれる新発田市から、新発田商工会議所の青年部の方々が登場した。
 


お雑煮で町おこしをしているという新発田市。タイ風、中華風、豪華なカニ雑煮、スイーツ雑煮まで実にさまざまな雑煮を開発している。これは、ぜひとも一度食べてみたい!

 
[帝京平成大学生によるココナッツカレー雑煮(リニューアルバージョン)]
 


これまた変わり種! カレーにお餅。確かにあわないワケはない。ただのカレーじゃなくて、海老出汁がしっかりでていて、うれしい意外性。前回の反省をふまえ、桜えびを増量したのがリニューアルバージョンだそう。
 




栄養士を目指す若い学生さんたちが、雑煮の未来を変えていくんだ……! と勝手に期待。

実食してみて気づいたのは、どの雑煮にも高い頻度でにんじんが入っていること。さまざまな出汁や調理法のなかで、色や固さ、味が違っていて、各々のお椀の中にひっそりと佇み、なじんでいた。雑煮とにんじんの切っても切れない関係がそこにはあるのかもしれない……。

 
日本酒も飲み放題!雑煮と日本酒の相性は?
 
雑煮だけでなく、10種の日本酒も飲み放題という素晴らしいイベント。お燗にしたもの5種類、ひと夏をこしてほどよく味のりした「ひやおろし」が5種類。日本名門酒会のセレクトによるもの。
 
ラインナップをご紹介。
 


[燗酒]五橋純米酒お燗酒(山口)、華鳩お燗純米(広島)、大雪渓純米酒(長野)、西の関手造り純米酒(大分)、大七純米生酛(福島)。
 


[ひやおろし]大山特別純米ひやおろし(山形)、純米吟醸義左衛門ひやおろし(三重)、若竹鬼乙女幸(静岡)、七冠馬純米ひやおろし(島根)、奥の松純米吟醸原酒ひやおろし(福島)。
 


それにしても雑煮と日本酒というのは、餅と米、つまり炭水化物&炭水化物の組み合わせである。これは相性がいいのだろうか?
 
そんな疑問を日本名門酒会のスタッフの方へぶつけてみたところ「あわないわけがない!」と力強い答えが。いりこやカツオ、昆布などの出汁は、日本酒との相性ぴったりなのだそう。そうか、餅じゃないのか。どうやら出汁がポイントの模様。


今回のイベントでは、意外性のあるお雑煮が多く用意された。一番気になったのは“あん餅雑煮”。「これにあう日本酒は?」と聞いてみたところ、「お燗酒の『西の関』があうよ」と教えていただいた。
 
試してみると、ふんわりやわらかな口あたりで、甘み旨みもバランスよく、しっかりとあんこの甘さを受けとめてくれた。甘いものと日本酒の名コンビ。ここは体重を気にせずいただきたい。



人気があったのは「大山特別純米ひやおろし」。ほのかな吟醸香にキレもよく、グイグイいけた。最初に瓶が空になっていた。

たまたまお酒の列で隣に並んだ方に「若竹鬼乙女幸」もおすすめされた。海老や鮭などに幅広く合いそうだ。「奥の松純米吟醸原酒ひやおろし」はパンチがあって、ココナッツカレーにもいけた。

 
■  あたたまってきたところで、史上最大「雑煮雑学王 決定戦」!



お雑煮談義がひと段落したところで、閃き作家の高柳優氏による「史上最大第一回雑煮雑学王 決定戦」がはじまった。
 
近くの席の人どうし3〜4人でチームになって相談しながらクイズに答えていく。チームにはボードが配られ、正解すると得点シールをゲット。最終的にポイントが一番多いチームが優勝となる。
 


最初のクイズは、プロジェクターに映しだされたお雑煮が、どの県のものかを当てるもの。そういえば、正面にあった各県のお雑煮の写真が貼られたパネルが……、と思ったら外されていた。参加者の方から「あー! さっきパネルで見たのに……」とくやしがる声があがる。
 


角もちで焼いてあるから、東のほう? 山菜があるから東北? などと推理していく。



われわれチームイベニアは「山形」と回答するも、ハズレー! 正解は「福島」。難しい……と思いきや1/3くらいのチームが正解していた。スゴい!
 


脱出ゲームなみの推理力を発揮するも(してない……)、チームイベニアは、残念ながら全問不正解。お雑煮、奥が深い……。
 


次のクイズは、お雑煮に多く使われている具材のベスト3を当てるもの。「にんじん」は絶対1位と思ったけど、他の2つは難しい……。「三つ葉」「かまぼこ」あたりが全国的にあるのではないかと予想。
 



 
結果は、1位・とり肉、2位・にんじん、3位・しいたけ。
 


にんじんでようやく1ポイントゲット!



4ポイントを獲得した3チームで決勝戦。出汁当てクイズへ挑戦。出汁だけで味を当てるのはかなり難しそうだが、ぴたり当てた方がいて、文句なしの優勝決定!
 




もちろん、ひらめきパズルクイズも! 何度もひっかけ問題にひっかかった。
 


さらに、日本あちこちにある小松菜の食べ比べもできた。粕谷さんが今注目しているのが小松菜。名前は地域によって、かつお菜、もち菜、雪菜、真菜といろいろ呼び方は違うものの、どれも小松菜の一種だそう。
 


えぐみが少なく甘みあるもの、苦味が強いものなど、土地によって違いがある(わずかな違いで難しいけど)。その地域の土や水で味も変わるのが、おもしろい。
 


いろんなお雑煮をいただいた後の、あっさりとしたお浸しは、口のなかがキリッとしてよかった。あと、小松菜、特有の苦味なんかがきいて、日本酒の燗とあわせてもいけた!

 
■  日常にお雑煮を!
 
お雑煮をたらふく食べて大満足! それにしても雑煮の世界は広かった。
 
「お雑煮ってホントおもしろいでしょ〜!!」と粕谷さん。
現在は、全国のお雑煮もパッケージ化しつつ、ご当地カルタも開発中だそう。46都道府県(沖縄には雑煮がない)のお雑煮カルタ、雑学にも詳しくなれそう! でも見ているうちにお腹が空きそう……。
 


閃き作家の高柳さんもカルタ開発のプロジェクトメンバーの一員なのだそう。実は、高柳さん、粕谷さんの「お雑煮やさん」の最初のお客さんだったとか。縁ってあるのですね。



お雑煮研究所の開発したレトルトのお雑煮が、この日は特別料金で販売された。

粕谷さんは、一日一お雑煮を実践中。「特別な日のものではあるけど、朝ご飯とかにもいいですよ! 食欲なくても汁物って入りますよね〜」と朝雑煮がおすすめだそう。
 
同行のライターと「朝いけそう! 昼もいいよね!」と雑煮談義でもりあがった。イベニア上層部からは、「雑煮がマズいわけがない」という名言(?)まで生まれた。
 
汁とお餅。もはや日本人のDNAレベルに刻まれた美味しさなのかもしれない。食べ過ぎでお腹がドーンとならないようにだけ、気をつけます。

取材/橋村望
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