01.30[金]~03.01[日] / 東京都 / ポーラミュージアムアネックス
会場に一歩足を踏み入れると目の前に広がる白い模様。レースのように繊細なパターンが床いっぱいに広がるその光景は、とてもダイナミック!あまりの迫力に思わず息を飲んでしまいました。
実はこの作品、私たちに欠かせない○○で描かれています。そしてそこには、大切な人への想いが込められていました…。
あたり一面を埋め尽くす白い模様。まぶしい朝日に照らし出された棚田の様にも、連綿と紡ぎだされた白いレース細工のようにも見えるこの作品。ずーっと見つめていると、吸い込まれてしまいそうな気分にも、空を飛んでいるような気分にもなります。光を反射してキラキラと輝くその素材、実はとっても身近なアレ。
よくお好み焼き屋さんで見るような油さしチューブに入った白い粉。
にわかには信じられませんが、よくよく目を凝らすと確かに小さな結晶が…
こちらが作品に使われている塩
何より一番驚いたのは、失敗した時は敢えて直すことはせずに、そのまま続行するということ。山本さん曰く「現実はやり直すなんてできないのだから、あえてそのままを受け入れてどう膨らませるか、その場所で考えたことを反映する」とのこと。
海に還った妹へ
塩のインスタレーションを制作する山本基さん
○作品を作り始めたきっかけは?
僕には妹がいましたが、21年前彼女が24歳だった時に脳腫瘍で亡くなってしまいました。彼女との思い出は、時間がたつとどんどん忘れて行ってしまう。もともと忘れっぽい自分だからこそ、大切な記憶を思い出したい、もう一度会いたいという感情を作品に込めて表現することで、24歳という若さで旅立った彼女との見えないつながりを表したかったのです。
『人が死ぬ』という事を自分なりに解釈してみたのです。身近な人の死を認めて乗り越えていくというテーマを考えたり、お経や終末期医療などに対し疑問に思ったことを各々のテーマに合わせた素材を使って作品を作ったりしていくうち、その中でお葬式のお清めに使う塩が出てきたのです。作品に塩を使い始めたのは96年からですね。自分でもこんなに長く使うとは思ってもいませんでした。
13年ぶりですね。近年は海外での発表が多かったです。塩は人間の生命にとって大切な物という共通の認識があるからか、海外でも日本でも塩から感じるイメージというのはそんなに変わらない感じがしますね。
○どのように作品接して欲しいですか?
よく質問されますが、特にこれといった強いメッセージは無いです。自分の大切な思い出に出会いたい一心で作っているから・・・。僕と似たような経験をした方が、こころが穏やかになって、前向きになってくれたらと思います。
○最終日には作品を壊してしまうそうですね
以前は自分の作品が触られるなんて、踏まれて壊されるなんて嫌でしたよ。今は参加者が思いっきり楽しんで、壊す様子を見るのが嬉しいし楽しいです。
塩=しょっぱい。塩にまつわるエピソードって、なんとなくマイナスなイメージにとらわれがちですが、こんなにもたくさんの想いが込められていたなんて思いもしませんでした。
家族、友人、恋人・・・。大切な人と一緒に作品を観て、思い出を作るのにとてもおススメです。
http://www.motoi.biz/japanese/j_project/j_project.html
2015.02.02 文・写真 青木美佳
(撮影協力:篠崎夏美)