今まで数々のイベントに行ってみて、気付いたことがある。このイベントは良かった」、「あれは正直ちょっと・・・」というものには、どちらも共通点があった。
それは、『イベント会場に入るまで』と、『イベント会場に入ってからの誘導』 である。
ごくごくシンプルなことではあるが、ここがしっかり出来ているイベントは、初めから気持ちよく見ることが出来て、結果としてとても満足のいくものだったように思う。
自分はイベント運営については素人だし、飽くまでもいち参加者としての感想ではある。更には、非常に小心者で、ビビりで、しかも方向音痴である。それを念頭に置いて読んでいただければ幸いである。
今回は参加者の視点に立った‘良いイベント’、特に会場に入るまでと入ってからという、イベントの導入部分について述べたい。また、今回例に挙げるイベントは、大規模なものではなく、中小規模なものを想定している。
1.会場の場所を分かりやすくして欲しい
探検のようになることもしばしば・・・。私が方向音痴なだけ?
・地図を分かりやすく
あるイベントに行こうとして、ギャラリーのホームページ等で地図を見るが、オシャレではあるけれど、省略化され過ぎて良く分からないというケースがある。Google Mapのストリートビューと何度睨めっこしたことか。何となく気になるイベントがあっても、ギャラリーへの道のりが分からず、面倒なので行くのを止めてしまった、というのは運営者、参加者、どちらにとっても不幸な事だ。
・会場を分かりやすく
会場が住宅街の中にあったり、ビルの一角にあったりと、場所が分かりにくいこともある。地図を見てどうにか近くまでは来たものの、建物が見つからずうろうろすることが多い。そんな時、道筋にポスターが貼ってあったり、建物の前にイベントの案内看板が出ていたりすると、砂漠でオアシスに出会えたような、地獄で仏に出会えたような感動すら覚える。
これはお客さんの為でもあるし、問い合わせ件数を減らして運営をスムーズにするという効果もある。
2.会場には誰かいて欲しい
ここまで派手に登場しなくても良いので・・・
ようやく会場に入り、おそるおそるドアを開けたものの、誰もいない・・・、というケースが稀にある。そのまま黙って作品を見るのも何だか失礼な気がするし、かといって忙しいからこそ不在にしているであろう係の人を、大声で呼ぶのも気がひける・・・。
非常に日本人的なジレンマに陥ったのち、勇気を振り絞って「こ、こんにちは・・・」などと、『人が来ましたよ』アピールをするも、慌ててスタッフの人が出てきて謝られ、なんだか恐縮してしまう。自分の性格の問題もあるが、ここまでで既に気疲れしてしまい、作品をゆっくり見られない、なんてこともあるかもしれない。
また、ある時は参加登録が必要なイベントだったにも関わらず、受付に人がおらず、もうこのまま帰ってしまおうかと思ったこともある。私の場合は極端な例ではあるが、せっかく開場まで足を運んでくれた人を逃してしまうのは何とももったいない。
・張り紙、メモでもいいから
人手が足りないのは仕方ないので、「ただ今スタッフ不在ですが、どうぞご自由にご覧ください」、「すぐに戻ります。しばらくお待ちください」などというメモだけでも、随分心証が違ってくる。作品は見たい、でも勝手な奴と思われたくないという、私の我儘と自意識過剰の問題ではあるが、この案内があればスタッフの方もいちいち呼び立てられたりしないだろうし、「受付に人がいないとは何事だ!」という無用なクレームも避けられるだろう。
・挨拶してくれるだけで嬉しい
ごくまれにだが、受付に人はいても、ちらっと一瞥するだけとか、時には視線すらよこさない方もいる。お忙しいのだろうし、私も色々と話したい訳ではないし、ゆっくり静かに見たいタイプなので、それでも良いのだが、ちょっと淋しい気分になる。
私にとってはイベント会場に辿り着くまですら一大冒険なので、受付の人が「こんにちは」とか、「ゆっくり見て行って下さいね」などと声をかけて下さるだけでも、大変嬉しい。単純なので、それだけで、頑張って来て良かった!ここ好き!また来たい!と思ってしまう。
3.順路があるなら教えて欲しい
こっち・・・でいいの?
そこまで大きな会場でなれば、順路も順番もあってないようなものだが、展示を見終えた後に「順路が逆です」と言われたことがあった。どうりで内容がつながらないはずだ。聞かなかった私が悪いのだが、せっかくなら順番通りに見たかったというちょっとガッカリした気分になった。
内容によっては順番通りに見ることで、一連のストーリーになっているものもあったりするので、壁に「→」を書いた付箋を貼るだけでもいいし、入口で一声かけてくれるだけでもいい。もちろん、好きなものを好きな順番で見る人もいるだろうが・・・。
以上3点に共通するのは、「迷いたくない」、「悩みたくない」という利用者(私)の希望だ。
人間は毎日、毎時、毎分、毎秒、選択をしながら生きている。そしてそれは知らず知らずストレスになっているのだという。イベントに行くか行かないかも選択の一つだし、イベント会場でどう振る舞うかも選択である。こうした些細なストレスを解消するだけでも、気持ちよくイベントに参加出来るのではないか。
どれも非常にシンプルだし、難しいことではないと思う。会場に来た人を歓迎するという意味でも、どんな形であれ戸惑わせないというのも、一種の‘おもてなし’である。
そして、何より私がこの方向音痴と、小心者な性格を克服しなくてはならない。
2013,12.01 文・篠崎夏美