NUMEN/FOR USE Exhibition「TAPE TOKYO」
東京/ スパイラルガーデン
クロアチアとオーストリアを拠点に活動している、NUMEN / FOR USE(ヌーメン / フォー・ユース)のアジア初となる個展「TAPE TOKYO」が開催されている。
このイベントでは、NUMENの代表作である「TAPE INSTALLATION(テープインスタレーション)」が展示される。これは、ビニールテープを幾重にも巻きつけることによって作られた、巨大なオブジェである。
左下が実際に使われたテープ。何の変哲もない透明なビニールテープだ。
11月24日までは、アーティストと、一般公募で集まった日本の数名のアシスタントらによって、作品が作り上げていく様子を見ることが出来た。
AR展示があり、タブレットやスマートフォンをかざすと、作品作りの様子が見られる。最初は数本のテープだったものが、次第に太くなり、立体的になっていく。蜘蛛の巣や、カマキリの卵を連想させる。
現在は、実際に出来た作品に、鑑賞者が入って楽しむことが出来る。会場入口で荷物を預け、靴を脱いで中に入る。係の方が『中は狭いところもあり、暑くなるのでコートが無い方が良いかも・・・』とアドバイスしてくれた。入口には「中で飛び跳ねたり、走ったりしないように」という注意書きもあった。
作品入口から中を覗く。半透明の不思議なトンネル。奥が見えず、この先がどうなっているのかは分からない。
恐る恐る一歩踏み出すと、少し足元が沈み込むものの、テープの床はしっかりと体重を支えてくれた。安定感はなく、よろよろしながら前に進む。狭いのと、ぐらぐらするのとで、ゆっくりとしか進めない。
しかし、楽しい。こんな変な場所をよろめきながら歩いていることが楽しい。足元のふわふわした感覚が楽しい。入ってすぐ、1人でにやにやしている自分に気づく。
天井を見上げてみた。ぼやけた照明がきれい。
良く目を凝らすと、隣のカフェの景色が見える。何となくこっそり覗いている気分。
(だが、後でカフェに行ってみたところ、カフェからは人の様子が結構良く見えた・・・)
油断すると足元が危うい。実は、この瞬間もよろけて足がクロスしている。下が半透明なので、浮かんでいるみたい。
消化器官の中にいるような気分。
テープは伸びて、建物の上の方に繋がっている。狭いけれど、なぜか落ち着く空間だ。周りが見えるようで見えないのも、奇妙な安心感がある。また、座ったり、寝転んだりすると、テープがその分たわんで、自分の体にフィットする形になる。大きなハンモックのなかにいるような感覚。ここで本を読んだり、昼寝をしたり、ずっと居たくなる。
これがテープで出来ているとは思えないが、一瞬だけ足の裏にテープの粘着面がくっつく感触があった。やはりビニールテープなのだ。
恐らく高さが20~30cm程しかない狭いトンネル。
分かれ道では、作品の外にいるスタッフの方が『こちらに進むと先が狭くなっています』などどアドバイスをしてくれる。確かにかなり狭いところがあり、ほふく前進のように這いつくばって進む。出口に来たとき、まだ出たくないな、と思ってしまう位、楽しかった。狭いところを通ったり、身体全体でバランスを取ったので、結構汗をかいてしまった。コートは脱いで正解だった。
あんな狭い場所を通ったのか。
外側にテープがついていた。これでこんなに大きなものが出来るとは・・・。
外から見ると中の様子は意外とはっきり分かる。
こんな物体見たことないし、ましてや中に入ったこともないのに、なぜか懐かしさを感じるのはなぜだろう。大人も子供に還った気分で、ワクワクしてしまう。外から見ても、中に入っても、不思議で面白い作品である。
これを作った人はどんな人なのか?後編はアーティストのトークライブについて。
2013.11.27 文・写真 篠崎夏美