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かばんの中には、箱庭がある。 大門美奈写真展「本日の箱庭展 - the Miniature Garden -」

アイコンランチタイムが終われば消えてしまう箱庭

2014/04/16(公開:2013/11/06)

大門美奈写真展「本日の箱庭展 - the Miniature Garden -

東京・72Gallery/TOKYO INSTITUTE OF PHOTOGRAPHY

 

写真家の大門美奈さんが、2010年の春頃からSNS等で掲載してきたお弁当の写真を集めた「本日の箱庭」シリーズの写真展が行われている。

 

今回の写真展では、およそ20点を超える「箱庭」=お弁当箱の写真が公開されている。ずらりと並んだお弁当箱(無印良品の横長のもの)上段には、彩り豊かなおかず。下段にはご飯。

ご飯には、ごまや、ちりめんが振りかけられていたり、ひっそりと昆布の佃煮、しば漬けなどが添えられている。鳥の唐揚げ、さわらの西京漬、ニシダヤの柴漬、豚とナスの豚味噌炒め、ニラ玉子焼き、きゅうりのごまわかめ、もやし和え、ちぎり揚げ、きんぴらごぼう・・・。

素朴で、美しい日本の「ごはん」が、きちんと並んでお昼時を待っている。 写真も勿論美味しそうだが、写真の下に記されたメニューを見ているだけで、お腹が減ってきてしまう。

たまに寝坊して梅干し2つが並んでいたり、おそらく前日のカレーが入っていたりするのも、なんだか親近感が持てて良い。ふと、これらのお弁当に対して感じていた‘好ましさ’の原因に気付く。

この弁当は、‘誰かに見せるため’の弁当ではない。「キャラ弁」のように無駄な装飾もないし、やたらと彩りや艶がある「冷凍食品」も使われていないのではないか?きちんと自分で食べるために作られたお弁当なのだ。妙に媚びたところがなく、食べられるためだけにそこに存在している、潔ささえ感じる。そして、食べ終えてしまえば箱だけが残る。

 

たまたま、大門さんが在廊しており、少しお話を伺うことが出来た。今回の作品たちは、彩りや映りなどが良い‘子’たちが選ばれているそう。毎日お弁当を作るわけではないが、小さいところに色々なものが詰め込まれているところが面白い、と語ってくださった。大門さんからは、大門さんが作ったお弁当と同じのように、静かで温かみのある美しさを感じた。

私も学生時代、自分の分と妹の分、毎日のお弁当を作っていた。大門さんのように美味しそうな手作りではなく、ほとんどがインスタントや、冷凍だったけれど。自分で作ったものとはいえ、お昼にお弁当箱を開ける楽しみは何とも言えない。

 

弁当箱を箱庭に見立てて一つの世界と考え、自分だけの庭をカバンに入れて、仕事に行く。仕事の間、ふとした時に自分の‘箱庭’を思い浮かべる時間があることは、ささやかな幸せ。 それぞれに、それぞれの風景がある。

細々と、彩り鮮やかに、美しくしつらえ、食べればおしまい。そんな日本らしさを感じる小さな、美味しそうな箱庭を見ていたら、なんだか久しぶりにお弁当が作りたくなった。

 

2013.11.06 文・写真 篠崎夏美

 

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