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まるで‘雪の女王’の世界。思わずため息が出る、水晶の国 『吉岡徳仁-クリスタライズ』

アイコン足を踏み入れれば、ファンタジー映画のような別世界が広がる

2014/04/16(公開:2013/10/03)

吉岡徳仁-クリスタライズ

東京・東京都現代美術館

 

 

海外での評価も高いアーティスト、吉岡徳仁。公立の美術館では初となる大規模個展が行われている。早速、東京都現代美術館に足を運んでみた。

 


下町の雰囲気が残る深川。駅から美術館までは距離があるが、至るところに美術館の看板があり、迷う可能性はあまりない。商店街の看板にも美術館の地図が書いてあったり、街と美術館が支え合っている印象を受けた。

 


美術館。下町の住宅街に突如現れる

 


広々とした空間

 


独特の外観

 


入り口横の休憩テント

 

 
巨大な遺跡を想像させる

 


カラフルなソファーとパンチングメタルの内装。スタイリッシュ。

 


今回の企画展チケットでは、常設展の見学も出来る。現在、「MOTコレクション 第1部 私たちの90年 1923-2013、第2部 つくる、つかう、つかまえる -いくつかの彫刻から」を開催中。常設展だけでも、かなり見応えがあった。

 


ポスター

 

会場内は、2つの作品のみ写真撮影可。ただし、使えるのは携帯電話のカメラのみ(フラッシュ禁止)

 

<ウォーターブロック>
ガラスのベンチ「Water Block」は、水をそのまま固めたようなベンチ。細かな波紋もあり、今にも流れ出しそうな一瞬が留められている。周りのストローをつなげたオブジェが、水しぶきにも見える。あまりの寒さに、一瞬で水煙が凍ってしまったようだ。

 
Water Block

 
Water Block

 

 

<白鳥の湖 結晶の絵画>
中央には浅くて大きな水槽が。中には水と、氷の塊のように見える結晶がある。空調のせいかもしれないが、その輝きに鳥肌が立った。氷のような結晶を見ているからか、なんだか寒く感じる。室内にはチャイコフスキーの「白鳥の湖」が流れている。結晶に曲を聴かせると、音の振動によって形状が変化するらしい。同じ曲でも、先端が尖った針のような結晶もあれば、規則的な四角い結晶同士が集まっているものもあった。

どれもキラキラと光ってとても美しい。思わず見とれてしまうほど。水槽の中で育っている結晶も、水の中でとてもきれいだったのだが位置が低いのでしゃがみ込まないと良く見えないのが難点。上から見ても良いのだが、やはり真横から見てみたかった。

 

<トルネード>
次の部屋に入ると、驚きで一瞬息を飲んだ。真っ白い空間が広がり、部屋の中に雲が立ち込めているよう。ウォーターブロックの周りにもあった、大きなストローで出来た作品だ。ただ、作品と言うにはあまりに大きい。部屋全体を埋め尽くし、視界も遮っているので、雲の中を歩いているような感覚だ。白い照明も当てられていて、どこを見ても真っ白。遠近感がつかめないうえに、あまりにも見たことがない世界にいるので、自分がどこにいるのか分からなくなる。不思議な空間で、こんな感覚は初めて味わった。

 

<ローズ>
バラの花が結晶に包まれている。いや、バラ自身が長い時間をかけて結晶になったと言うべきか。茎の緑、花の赤はごくごく薄く残っていてかつての面影を残しているが、今は光り輝く棘を全身にまとった彫刻作品になっている。液体窒素でバラを凍らせる実験があるが、それよりもっと冷たく、尖った針のような結晶のバラは、どこか人を寄せ付けない美しさだ。

 

不思議なオブジェの間の細い空間を通って、次の作品へ。氷河の中を歩いているようだ。

 

<蜘蛛の糸>
7本の糸で椅子の形を作り、そこに結晶を付着させていく。わずか7本のか細い糸に、結晶が生成されて椅子の形が出来上がっていく。3つの工程の作品が並べられているので、見比べてみると面白い。近くにいた学芸員の方に、どうやって結晶を作っているのか聞いてみた。特殊な薬品を繊維に付着させているらしく、部屋を冷たくしているわけではないそうだ。でも、見ているとなんだか寒く感じてしまう。

先ほどの<ローズ>を見たときにも感じたのだが、ここは小さいころに読んだ『雪の女王』を思い出させる。女王の城は全てが雪と氷で出来ていて、信じられないくらい、美しくて、冷たい。冷たいと分かっているのに、あまりの美しさに手を伸ばしたくなる。触れば、尖った氷の針で指を刺される。そんな綺麗で恐ろしい、雪の女王が住んでいそうだ。

 

<虹の教会>
天井が高い、薄暗い空間。正面からプリズムを含んだ光が差し込んでくる。まるで奇跡がそこで起こっているかのような神々しい、虹色の教会。ステンドグラスの代わりにあるのは、500個ものクリスタルプリズム。見る位置によって光が変化する。


虹の教会


虹の教会

 

 

その他、クリスタルの椅子、ハチの巣構造の紙で出来た椅子、植物繊維などを使った椅子が展示されていた。最後の空間では、吉岡氏のこれまでに手掛けた作品を振り返る映像が流れていた。トヨタ、イッセイ・ミヤケ、ファンケル、カンペール、KDDIなど身近な企業から、世界の美術館まで非常に幅広いジャンルで活躍されている。どれも本当に美しい、しかし、映像が50分もあるので最後まで見られなかったのが残念である。

プロダクト、空間、建築など、幅広い分野において、デザインアートを手掛ける吉岡氏。自然をテーマにした自由な発想、実験的な創作から生みだされた作品たち。今までに見たことのない世界を魅せてくれる展覧会だった。

 

2013.10.03 文・写真 篠崎夏美

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