東京 渋谷ヒカリエ 8Fに、ゲームセンターが期間限定でオープン
ゲームセンターとは思えない、シックな入口。
けばけばしい看板も、耳を塞ぎたくなるような電子音、BGMもない。
そして、このゲームセンターで遊ぶのにお金はいらない。
そう、ここは‘普通’のゲームセンターではない。
紙のゲームからはじまるコミュニケーション展
紙を誰よりも知り、紙について誰よりも考えている「かみの工作所」が生み出した、新しくてユニークな6つの「紙のゲーム」があるのが、‘PAPER GAME CENTER’だ。
6組のデザイナーが、人とモノ、そして人とヒトを繋ぐ、新しい紙のゲームを作った。紙を加工し、印刷して可能になる表現、機能。紙だからこそ実現する楽しさが追求されている。
それでは、このゲームセンターで楽しめる6つのゲームをご紹介しよう。
①センコウハナビシ
線香花火のように火の玉を落とさないように楽しむゲーム。火の玉の周りに火花を付けて行って、火の玉を落とした人が負け。線香花火のドキドキ感が楽しめる。夏にやってもいいし、冬に夏を思い出しながらやってもいいし、勿論それ以外の季節にやってもいい。一つ一つのパーツのデザインも、とても良い。ゲームとしても盛り上がるし、オブジェとしても使えそうだ。
②G.a.m.e.
使う文字は2種類だけだが、反転させたり、裏返したりするとG、a、m、eという4文字になる。この発想がまず面白い。文字を動かしながら先にGameを完成させた方が勝ち。自分から見た文字だけでなく、相手側から見た場合も想像しながらゲームを進める必要がある。シンプルだが、かなり頭を柔らかくしなくてはならない。シンプルだからこそ際立つデザイン性も素晴らしい。
③関数標本
関数の数式をグラフで表したもの。数学というものがしばしば「美しい」と表現される理由が分かる。何枚もの平面である紙が重ねなり、立体の美しいグラフが出来ている。しかし、これはゲームと言えるのだろうか。
④トータス
コップの底に1~10までの数字が書かれている。コップを神経衰弱のように裏返し、足して10(10=とお、足す)を目指す。10になれば、そのコップが得点になる。コップの底に重りが入っており、自然に起き上がる。神経衰弱、ブラックジャック、足し算という3つの様子を巧みに組み合わせたゲーム。
⑤ビルディングパズル
ビル本体、敷地がパズルになっている。道路がつながるように街を作ったり、ピルに合う敷地を探したり、2種類の楽しみ方が出来る。敷地の組み合わせは何通りもあるので、自分好みの街を作り、オブジェとしても楽しめる。ゲームとしてはちょっとありきたりな印象。
⑥kamikado
海外ではメジャーな‘ミカド’というゲーム。ちなみに海外ではポッキーは『Mikado』という名前で販売されている。このゲームで使われる棒からイメージされているのだろう。棒を動かさないように取って行き、点数が多かった人が勝ち。細い棒に見えるが、何枚もの紙が重ねられている。美しさ、という点では6つのゲームの中で一番美しい。ただ、ミカドゲームにつかう竹ひごが紙になっただけなので、目新しさはない。
動画で遊び方を説明するなど、分かりやすい展示だった。しかし、もっとゲームを遊ぶスペースを確保した方が良いと思った。展示されている作品をそのまま使って遊べるのだが、作品を見たい人にとっては邪魔になってしまう。別に体験コーナーなどを設けて、椅子なども置いて自由に遊べるようにした方が、もっとこのゲームセンターの魅力を感じられるのではないか。
物販コーナーもあった。
これらのゲームは購入可能。
それ以外にも素敵な紙グッズがいっぱい。
紙で作られた精巧なミニチュア。
ユニークな器も全て紙。
紙ならどんな形にも、色にもなる。そして、軽い。
紙で出来た椅子に、紙テープのフック。この紙テープのフックはなかなかしっかりしていて、壁やものに貼るだけでフックになるので便利。
ディスプレイも紙を使っている。なんだか大根に見えてきた・・・。
外から見るとこんな感じ。
厚紙で出来たフライヤー。裏返してみると・・・
ゲーム大会に参加できるメダルが。本物のゲームセンターみたい。
人とモノ、人とヒトとの繋がりが希薄になりつつ現代。
実際のゲームセンターは、基本的に人と機械で、他の人とゲームを楽しむにも、バーチャルな世界でしか接することは出来ない。
しかし、紙のゲームセンターでは、人とモノが向き合い、そしてモノを通じて人とヒトが向き合うことが出来る。同じ場を共有出来る。そして、自分の手で紙に触れ、動かすというリアルな体験が出来る。
小さい頃に、リビングのテーブルや、和室のこたつに集まって、トランプやボードゲームをした記憶が甦った。懐かしく、でも新しい紙のおもちゃ。紙の持つ可能性に改めて気づかされた。
2013.09.04 文・写真 篠崎夏美