先日行ったライブで、「プロ仕様の機材での撮影はお控えください」とアナウンスされていて、軽い衝撃を受けた。つまり、プロ仕様でなければ撮影可能という事。実際、多くの人がデジカメや携帯で撮影していた。これまで参加したライブイベントと言えば、撮影禁止はもちろん、カメラすら会場に持ち込めないものが多かった。
ただ、海外アーティストの多くは、プロ機材でなければ撮影可能な場合が多いらしい。先日のライブも、海外アーティストの日本公演だった。日本でも一部アイドルグループなどが、実験的に撮影を許可する動きがある。CDなどが売れなくなって来ている今、ライブ事業が利益の中心となっており、撮影を許可することでよりライブに観客を動員するのが目的だという。中には撮影に特化した席を販売するところもあり、そこには自ら撮影するファンの他、撮影を委託されたプロまでいるという。
また、最近訪れた写真展でも「写真撮影、Facebook、Twitterへのアップ歓迎」とわざわざ表記してあった。博物館、美術館も一部の条件下で撮影可とするところが増えている。海外の博物館などはフラッシュをたかなければ撮影可というところもあり、これも海外の方式が日本に広まってきているのだろうか。
肖像権、著作権が絡むとややこしいが、今回は単純に、撮影可能のイベントが増えてきた理由、今後のイベントでの「撮影」がどのようなものになるのかについて考えてみたい。
●なぜ撮影可能なイベントが増えたのか?
これは、SNSの広まり、という一言に尽きる。今までもブログなどで個人の意見、体験を発信する場所はあったが、Twitter、FacebookなどのSNSの台頭により、それがより顕著になった。ほどんどの人が、自分が、見たり、聞いたり、体験したりしたことを他人に知ってもらいたいと思っている。よって、どこかイベントに出かければその写真と一言をSNSにアップする。見る側からしても、単に文章だけよりも写真や動画付の方が面白い。
そして、これに目を付けたのがイベント主催者だ。多額の広告費、多くの労働力、長い時間をかけずとも、勝手に来場者が宣伝してくれる。こんなに効率の良い告知はない。しかも、人は企業側よりユーザー側の、知らない人より知人や家族からの情報を信用する。こういった点からも、SNSでイベントの写真を広めることが企業にとってありがたいことなのだ。
文字よりも写真の方が分かりやすい。そして、‘広めたい’というユーザー側の意志と、‘広めてほしい’というイベント主催者側の思惑が上手く合致したために、撮影を許可するイベントが増えたのだ。
●今後イベントでの撮影はどうなっていくのか?
イベントでの撮影を許可することは、メリットばかりではない。以下のようなデメリットが生まれる可能性もある。
・来場者の減少
写真で満足してしまい、実際に会場に行かない
・悪質な写真
アイドルのコンサートなどで、否定的な画像(半目になってる写真、衣装のトラブル写真など)をわざと流布させる
・会場でのトラブル
混雑するイベントでの撮影は、他の参加者の移動、見学の迷惑になる。また、作品だけでなく他人が写ってしまう可能性もある
・イベントの希少性
その場でしか見られない、というイベントの価値が薄れる
こうしたことからも、全てのイベントが撮影可能になることはないだろう。しかし、‘一部撮影可’なども含め、写真が撮れるイベントが増えていくことは間違いない。来場者が撮影したものを使って宣伝をしたり、公式画像を作るなど、新たな試みも行われるかもしれない。その為に必要なことは、運営者側の管理と参加者のモラルだ。
運営者は、撮影可否をしっかり分かるように告知・説明する、また会場内も撮影する人と観覧する人がお互いにスムーズに動けるような動線にする、悪質なケースには毅然と対応する。撮影する人は、「フラッシュ、三脚利用不可」などのルールを守る、見ている人の邪魔にならないようにする、写真の利用については著作権・肖像権に触れないようにする。
簡単で、当たり前のことだが、こうした配慮でより良いイベントが、より多くの人に知られるようになるのであれば、こんなに素晴らしいことはない。イベントの写真や、動画の共有がイベント業界全体の発展につながることを願ってやまない。
2013.09.03 文・篠崎夏美