面白いイベント情報を求めてイベニア

| レポート&ニュース |



SHARE

facebook

Twitter

ポールダンスで「発電」した照明と音響で、パフォーマンス! 『自家発電ナイト2016』

アイコン息切れした姿もすべてが表現になった夜

2016/08/05(公開:2016/08/04)
覆面のポールダンサー「メガネ」さんが踊ることで発電する装置を使って、ライトを照らし、音楽を鳴らす。パフォーマンスを電気というエネルギーに変換する、その先に見えてきたものとは。




●ダンスポールを回して発電

ステージ中央には一本のポール。スケルトンの台の上に伸びた銀色のポールが、アーティストのメガネさんが使う発電装置だ。

メガネさんがそのポールを握って回すことで、ライトが点きラジカセから音が鳴る仕組み。露出度の高い衣装を着用したメガネさんが、発電装置や電気コードの配線などを確認していた。


「じゃあ始めましょうか」とゆるい雰囲気の中で自家発電ナイトが始まった。メガネさんがポールを握って回り始めると、小さなライトが点いて古いラジカセから音楽が流れる。



激しく回転すれば煌々とライトが輝く。だが、回る速度が落ちたり、回るのを止めたりすると、ステージが暗くなって音楽も止まってしまう。時には真っ暗になることも……。最初は正直「見づらいな」と感じた。音楽が途切れるのでノリづらいのだ。
 




しかし、メガネさんの動きに連動して、照明と音楽がついたり消えたりする様子に、見ている側の気持ちも段々とシンクロしていき、ステージから目が離せなくなった。

ポールダンスを踊るメガネさんの前に、アーティスト全13組が次々に登場しパフォーマンスを繰り広げた。生演奏をバックにしたり、おにぎりを作ったり、アクロバティックな動きを披露したり……。時には他のパフォーマーがポールを回すことも。










●夢はポールダンスで発電工場を作ること!? 

どうしてこんなことを行っているのか? メガネさんに話を聞こうとしたところ、「パフォーマンスしながら質問に答えますよ」とおっしゃってくださり、急遽、観客の前での公開インタビューとなった。

青山健一さんがステージ後方に壁画を描く。それを照らすライトを灯すために、パフォーマンスして発電をするメガネさんに話を聞いた。



-- なぜポールダンスで「自家発電」を行おうと思ったのでしょうか? 自家発電なら太陽光など他の方法もあったのでは?

それは私がポールダンサーだからです。以前から、踊りが生み出すエネルギーを別の形に変えられないかなと、踊りながら思っていたんですよ。



-- この発電装置はメガネさんが作ったのですか?

いいえ。私には工学系の知識がないので、自家発電装置を研究している人を調べてメールで協力をお願いしました。断られ続けましたが、なんと岡山県の工業高校の先生が興味を持ってくれたんです!

-- 学校の先生とポールダンサー。意外な組み合わせですね。

一所懸命に書いた手紙に熱意を感じて下さったようです。ただ、作り方を教えてもらっても私には作れないので、最終的にはダンスのポールを送りつけて作ってもらいました(笑)



-- 今後の展開は?

今は発電装置がこれを含めて3台しかありませんが、これからは装置をもっともっと増やして大勢でパフォーマンスしたい。さらには、発電装置を体育館のような場所に100台以上並べて、ポールダンサーが24時間パフォーマンスして電気を作る、「発電工場」を作りたいですね。




●観客もポールを回してみた

メガネさんの発電装置は、ポールを回すことで生まれる摩擦を利用して発電するので、「普通のポールよりも重たい。負荷は十倍以上」とのことで、メガネさんはヘトヘトに。「回してみたい人がいたらどうぞ」との呼びかけに、観客もステージ上の発電装置に集まり、順番に回してみた。



体験した人たちからは「思ってたより重い」、「これは大変。体力使うわ」、「男でも重いです」などの声が上がった。観客もその仕組みに興味津々。自転車をこいで発電するのと同じ仕組みだという。





メガネさんが「軽い力でも発電できるといいんだけど。もっと効率のいい方法もあると思うの。誰か詳しい人いませんか!」と呼びかける場面も。

その一方で、メガネさんはこうも話す。「でも蓄電するのは違うのね。やっぱり私のパフォーマンスで、灯りが点いたり消えたりすることで生まれるライブ感は大切にしたいんです」



●自家発電の電気だからできること

自家発電ナイトは、東日本大震災をきっかけに始まったと聞いていたので、もっとエコを声高にうたうイベントなのかと思っていたが、それは間違いだった。

ペイントパフォーマンスをした青山健一さんは、以下のように語ってくれた。「電気をふんだんに使って、大量のライトを照らしたり、大音量の音楽を流せばそれは盛り上がるでしょう。でも自家発電の小さな灯りは、表現することの根源を照らし出してくれると思います」



リピーターの観客は「ステージが進んでいくと、メガネさんが疲れてくるのが見ているこちらにも伝わってくる。持てる力の全てをパフォーマンスに捧げる姿は心に響きます」という。また別の観客は「自家発電も含めて芸術です」と話してくれた。



主催者によると、今後もこの企画は続けていきたいとのことだ。単に『電気の大切さ』というだけにとどまらず、人の力、ライブでのパフォーマンスの力を感じた一夜だった。

取材/前田郁


































>さらに読む