新宿 損保ジャパン東郷青児美術館
―不思議な出会いが人生を変える―
損保ジャパン本社ビル前 ポスター
何だか難しい‘シュルレアリスム’ですが、この展示会を見れば、何となく正解に近いものが分かるかもしれません。そして、最後までこの記事を見ると、シュルレアリスムの驚きの事実も分かるかも・・・。
シュルレアリスム(シュールレアリズム)とは、第一次世界大戦後に起こった芸術運動である。伝統的な美術、決まり事の枠から脱けて、シュルレアリストたちは自由な表現を目指した。様々な試みは無意識、集団意識、夢、偶然などに重点が置かれている。斬新で、自由で、軽やかなこれらの動きは「遊びの要素」が本質にある。
・・・と言われても良く分からないと思います。私も何となくシュールレアリズム、を分かった気でいましたが、こうやって書いてるとまた良く分からなくなってきます。でも、展示会を見て分かりました。要するに、小難しい理屈は要らないのです。「面白い」「楽しい」「時には悪ふざけ」といった、まるで子供のように無邪気で遊び心がある芸術運動なのです。展示室にあるのは、仲間たちと交代で完成させた一つの絵、言葉遊び、奇妙なオブジェ、不思議な絵・・・。見れば見るほど変で、良く分からないものたち・・・。
でも、分からなくていいんです!楽しければいいんです!この展示会を見るとそんな気分になってきます。シュルレアリズムという一見難解な芸術も、「遊び」に焦点を当ててみる
と、ぐっと身近になってきます。芸術家たちが集まって、自分たちなりの遊びを楽しんだ、そんな風にも見えてきます。常々思うのですが、芸術を楽しみたいなら考えてはいけませんね。芸術に答えはありません。「なんだこれ?!」という驚きと好奇心と自由な発想があればいい、ということを気付かされました。
また、この展示会の魅力は、日本、海外、様々なのコレクションが一堂に集められているところ。シュルレアリスムにまつわる絵画、オブジェ、写真、書籍など、およそ200点、これだけ様々な作品を、一度に見られるのは貴重な機会です。総合的に見ることで、よりシュルレアリスムの魅力を感じられます。
そして、もう一つの魅力は、徹底的に『遊び』を取り入れているところ。展示会にも技法を説明するコーナーや、ちょっとした体験コーナがあり、よりシュルレアリスムを身近に感じられます。一階ではワークショップが行われており、無料でシュルレアリストたちが行った手法を試すことが出来ます。楽しそうなワークショップの内容を写真でご案内します!!
ワークショップ会場入り口
結構広い会場です。
広い机にはきちんと道具が用意されています。
(ワークショップ終了後に写真を撮らせていただいたので、がらんとしていますが
開催時間中は子供から大人まで、たくさんの人が楽しんでいました)
紙を4つに区切り、頭、胸、胴体、足を別々の人が描いて一つの絵を完成させる。
最後に紙を広げると、そこには見たこともない生物が・・・。
いつ、どこで、だれが、なにを、どうした、を自由に書いて、ページをめくれば、思いもかけない文章が。
中々奥深いですね。ある意味詩的でもあります。
紙に絵の具を置いてたたみ、広げると不思議な形が。ロールシャッハテストみたい。
紙の下に物を置いて、クレヨンでこすればその形が紙に浮き上がる。
コラージュ。ある方がご自身で作成され、ブログで紹介されていたものもありました。
レベルが高い!!この他にも面白い作品がたくさんあったので、フォトコーナなどで紹介したいと思います。
さて、ここからが本題です。ここまでワークショップを見てきて、何かお気づきになりましたでしょうか?
そう、実はこれらの手法、「誰しも小さいころにやったことがある遊び」ばかりなのです。
なんてこった、難解なシュールレアリスム、実は子供の遊びだったんです!!
でも、これこそが芸術家たちが求めたモノなんですね。伝統に囚われない、既成概念に縛られない、ルールに乗っ取らない、規則性に従わない。そうすると、子供のような自由で柔軟な発想こそがシュールレアリズムとも言えます。激動の時代を生きた芸術家たちの、とにかく、もっと自由に、もっと意識の奥まで表現したい、もっと、もっと!!という悲痛なまでの思いすら感じます。
どうですか?シュルレアリスム、ちょっと身近に思えてきませんか?
ワークショップに使う紙は展示室にもたくさんあり、お持ち帰りも出来るので、ぜひ家でシュルレアリスムしちゃってみてください。子供から大人まで、楽しくシュルレアリスムを体験できるイベントでした。
2013.07.29 文・写真 篠崎夏美