01.24[土] / 東京都 / ロフトプラスワン
カバーガールは鈴木咲さん ※イベントには出演しません。
自ら「世界最小の音楽フェスタ」を名乗り、様々な音楽PVをTwitterから発信している“東京 PVコレクション”によるイベント「TOKYO GIR'S PV COLLECTION」。会場には多くの映像ファンが集まった。
開演を待つ参加者のみなさん
まずは乾杯!
新進気鋭のクリエイターが明かす、女の子を可愛く撮る秘訣
「女の子を可愛く撮る方法は?」
『可愛い娘を選ぶことです』
開演直後、自己紹介もそこそこに会場からの質問に“まさかの”答えを出したのは、フジファブリック、でんぱ組.inc、フレデリックなどのPV(プロモーションビデオ)を手がけた映像監督のスミス氏。異色のPV制作を行うクリエイターの口から、どんな秘密が明かされるのか固唾を飲んで見守っていた聴衆は笑いに包まれた。
PV撮影について語る監督たち
普段めったにメディア露出しないスミス氏
スミス氏はその他、
「黙った時に可愛い人がいい、媚びた感じの人は選ばない(ロック系では特に)」
「身体能力が高い人、特に足が速いといい」
など、独自のPV出演女優の選定理由を明かした。なるほど、初見から『ん?』と思わせてくれるPVを制作する監督。メディアにもあまり出られないとのことだが、一筋縄ではいかない方のようである。
飾らない言葉で、赤裸々に語り続けるスミス監督。いや、もうちょっと格好つけてください…と思わずツッコんでしまいそうだったが、独特の美学とも言える制作スタンスを語ってくれた。
◆スミス氏制作:フレデリック『オドループ』
え?それってありなんですか!~知られざるPV撮影の裏側
藤代雄一郎氏は、2014年“最大のダークホース”と言われ、かつて“鹿解体ツアー”も行った摩訶不思議なユニット・水曜日のカンパネラのPV制作を多く手がけている。
同ユニットとの出会いはライブに出かけ仲良くなって撮影を引き受けるようになったことがきっかけだそうだ。
気鋭の映像監督・藤代雄一朗氏
元々「リンゴ飴を持ってる女の子はかわいい!」がテーマのWEBサイト“Ringo-a.me”を運営していた藤代氏。
現在はご本人とPVに出演する水曜日のカンパネラのコムアイ、他数名という最小限のチームでPVを作っているとのこと。スチル写真やWEB制作などをこなしつつ、映像制作を行うようになったらしい。「最近は褒められることが多いため、映像作品を多く手がけている」との話。
実はPV撮影にあたり、トラブルはつきものだという藤代氏。『モスラ』のPV撮影終了後には撮影をした埼玉県秩父地方からの帰路、大雪に見舞われ水曜日のカンパネラのメンバーともども、遭難寸前になったんだとか。「ああ、俺のせいで水曜日のカンパネラは消滅するのか…」と、気が気ではなかったと懺悔し、会場の同情(笑い?)を誘った。
◆水曜日のカンパネラ『モスラ』
司会の東京PVコレクション・笠本氏
「自信はいつだってあった」~映像監督になるまで
「もしプロフィールの欄に“趣味”の項目があれば“合成(注:映像の)”と書く」と述べた名嘉真法久氏。自身もメンバーのバンド「エイプリルズ」の楽曲PVを手がけつつ、様々なバンドの映像制作を行っている
映像作家・名嘉真法久氏
現在イチオシの作品が、90年代バブル期のイメージやファッションを現代に甦らせようと試みる稀有なアイドルデュオ、ベッド・インのPV。果たして“アイドル”という呼称が適当かどうか、微妙に謎…なのだが、2人のために手掛けた作品『ワケありDANCE たてついて』は、バブル当時を知る人間にとっては、懐かしさを通り越し“寒気”すら感じる作品。そりゃあもう…ドギツイのなんのって(笑)
◆ベッド・イン『ワケありDANCE たてついて』
エイプリルズ結成の頃から、映像制作を引き受けていたという名嘉真氏。「当時はまだ個人で映像合成を手がけるような人間がおらず、自分がパイオニア的存在ではないか?」とのこと。今となっては、当たり前の技術やソフトがなく、活動を始めた頃は、競合が存在しなかった。そのため作品がテレビ放送されると、仕事の依頼が舞い込むようになった。
現在は映像作家を名乗り「ナカマオフィス」も構える同氏。様々な苦労もあったようだが、 それでも「自信はあった」と語ると同時に「これだけやってるんだから、報われないとおかしい」と言えるくらいには努力を傾けられたとのことである。
「100万円手元にあれば、今日からでも映像制作できます」
協力者として、映像作家でありクラウディ株式会社代表の森岡千織氏も登壇された。実は同氏のはからいにより、途中15分の休憩中も登壇者のマイクはオフとせず、通常であれば楽屋で話す内容も参加者にそのまま公開された。
クラウディ代表・森岡千織氏
スミス氏は編集作業をマック&ファイナルカットで行っていると判明。また名嘉真氏や森岡氏も交え機材についての情報交換が、聴衆をすぐ目の前にして交わされた。
「iMacは30万、Windowsなら15万くらいで、必要なソフトは学割があるし、100万円あれば今日からでも撮れる!」と、将来の映像作家希望者が多くいた会場へ情報提供があった。以前に比べ、始めるための環境は格段に良くなっているようだ。
YouTubeは“敵であり味方”~インターン・バイトさん絶賛募集中!
映像制作を始めるための環境がとても良くなっているという話から、YouTubeとPV・MV(ミュージックビデオ)の関係についても話が及んだ。
今は音楽も、インターネット上でYouTubeを通して聴くことが圧倒的に多くなっており、楽曲の知名度を上げるために、PV・MVが不可欠な状態になっているといえる。そのため、ライブハウスなどでバンドと仲良くなり、映像制作を請負うという方法が現実的なものになっているようだ。
普段聞けない制作秘話が飛び交う
スミス氏は“氣志團”とインディーズ時代から付き合いがあり、藤代氏は水曜日のカンパネラがまさにそう。森岡氏も同様に、まださほど有名でないバンドからの依頼で、低予算であってもPV制作をしているとのことだった(また、必要性は理解しつつ制作費用について、きちんと考えているバンドは少ないという話もあった)
名嘉真氏はエイプリルズに加え、写真家の青山裕企氏の作品の映像化を「同窓生だから」という理由で依頼されてもいる。森岡氏はTwitterを介した営業活動も積極的に行っているとのことだが、イベントを通じて聞いている分には、「仲が良かったから」や「知り合いだったから」など、“人づき合い”を通じた依頼を多く受けている印象を受けた。
「YouTubeがあるのはいい環境だと思う。その分自作のVHSビデオのようなものを売って収益を上げることは出来なくなったが、発表できる場があることが重要」(名嘉真氏)
「YouTubeはあっても無くてもさほど変わりはない…。(他の投稿作品に)負けないようにするしかない」(スミス氏)
その後、スミス氏・名嘉真氏から「インターン・バイトは随時募集中!」という、映像制作希望の聴衆には、願ってもない発表があった。
「お金は払えないけど、お金に替えられないものを伝えます」(スミス氏)
多くのPV制作を手がけた監督から直に教えを受けられるなど、そうそうない。終演後には希望者が話を聞くため、両氏の前へ列を作った。
各監督が制作した多くのPVが紹介された
PVに残された「可愛い」は永遠~意外なあの人もPVに出演
「美少女が美少女でいられる期間は短いと思う」、そんな風に名嘉真氏は語った。その一瞬の“きらめき”を映像に残すのがPV監督の仕事であり、良さであるとも。
彼女たちの姿を映像に残しながらも、それだけに終わらない“あの手この手”でミュージックビデオのPVは制作されていた。
「バンドさんのいいところが見えるようなPVをつくろうとしている」、「人を気分よくだませる能力も大事(笑)」などなど、多くの現場をくぐり抜け作品を作り上げてきた監督・クリエイターだからこそのコメントが聞けた当イベント。とても盛り込めない量の制作秘話や裏話、制作費についてなどの話が出た。
やろう!と思えば、本当に出来てしまう環境がある時代。『やる、やらない』を決めるのに本人の“やる気と覚悟”以外、必要なものがない。やりたいんなら、いますぐやればいいじゃないか!終演後、そんな風に感じた。
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2015.01.26 文・写真 川方賢史