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「お風呂に入る女の子」たちを撮影。一糸まとわぬ彼女たちが問いかける。 やましたみか個展「風呂女子」

アイコン湯船に浸かる彼女と目が合った。

2015/02/10(公開:2015/01/25)
白い部屋に、蒼のコントラスト。


一糸まとわぬ女性たちが、浴室で、泡にまみれて、問いかける。
ベッドの上でくつろいでいる。
 
扇情的な姿をしているのに、まず「愛しい」と感じるのは作家の気持ちが作品に表れているからだろうか?
 

 
01.20〔火〕~01.25〔日〕/東京都 The Artcomplex Center of Tokyo



「 一日の終わり 一日の始まり
体温より 少し熱いお湯をかぶり
疲れか、細胞か、喜びか、
少しずつ、少しずつ
流して、洗って、ほどいてゆく
 
血の巡りと 心地よい水分に促され
わたしの身体が少し火照る、艶やかにふやける
 
眼に見えないほんの少し新しいわたしが
湯気に包まれつつも、外気に触れたとき
新しいわたしは何を思っているのだろう
 
今日もわたしたちは、お風呂にはいる 」

(やましたみか)

 
 
蒼い写真は「サイアノタイプ」という特殊技法で撮られている。

フォトグラファーのやましたみかさんは、大学時代にこの技法と出会い、そこからずっと蒼い写真を撮り続けている。現在ではデジタル加工での写真が主流を占めるなか、ほとんど100%近くハンドメイドの作業にこだわる。

「元々はフィルムで写真を撮っていたので、手の温もりを感じる、実際に触れるところがいいと思いました。この方法は薬品の調合が難しく、慣れるまでは大変で、始めても途中でやめてしまう人が多くいます。私は像が全然出てくれないことも面白く感じて、自分なりの方法を少しずつ確立していきました」
 
「青写真」、「日光写真」とも呼ばれるこの方法は、2種類の薬品を調合し紙や布などに薬液を塗布、光を当てて写真を焼き付けていく。


 
キャンバスに張られた荒い布地に印刷されていることで、より人の温もりを感じる。
 
モデルになっているふたりの女性は、やましたみかさんの友人たち。「風呂女子」を撮影することになった経緯を聞いてみた。
 

 
○なぜお風呂×女子というテーマで撮影しようと思ったのですか?
― モデルになっている子とルームシェアをしていたのですが、ある日家に帰ってきたら、ちょうど彼女がお風呂から出てきたところで。綺麗だな、これを撮りたいなと思いました。
 
女性がお風呂に入る時って、何かを流してリセットしている感覚がありますよね。撮影しながら客観的に見ても、神秘的だなと。
 

○撮影はどちらでされたのでしょうか?
― ラブホテルのお風呂です。女性同士だと、問題なく入れます。生活感があまりなくて、泡を多く使ったりライトがたくさんついていたり、広角を広く取って撮影するのにぴったりでした。
 

○表現方法に絵を描くことではなく、写真を選んだ理由はありますか?
― 昔から写真そのものが好きでした。絵は足していくもの、写真は引き算だと思っています。瞬間を止めることができるという感覚があったので、写真を選びました。

大学に入ったときは広告系の写真家も考えたのですが、自分が見たままの美しさをツールにしたいと思い、現在に至ります。

 
○青写真の魅力はどのようなところですか?
― 出身地が葛西のため、幼いころから海に親しんで育ちました。大学生の頃、海の写真を多く撮っていたのですが、この技法は海や水の写真と合うんです。自分のルーツと、なかなかうまくいかなかった作業過程が、結果的にしっくりと落ち着きました。
 
 
○最後にイベニアユーザーに向け、メッセージをお願いします。
― あらゆるものをお風呂でそぎおとしていく、女の子たちの姿をお楽しみください。

やましたみかさんの次の展示会は02.20〔金〕~同所にて。Extra Qualityに参加予定。


写真と同じ技法で文字を印刷した下着も

 
実際に作品を見た人からは、『女性が撮るからこそ成立している写真』、『被写体の女性の柔らかな感じが際立っている』という感想があったそう。確かに性的な動作をしていても、美しさのほうが際立つ「風呂女子」たちが印象的だった。

取材当日は、朝から雪が降っていた。写真を通して女性たちの滑らかな肌の質感と、お風呂の湯気や湿度を感じた。そして再び外気に触れたとき、自分がまるで入浴後の気持ちになっていることに気がついた。熱をおびた身体に冷気が心地良かった。


2015.01.23 文・写真 小松田久美
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