by ジャイアント馬場 (ナンシー関著・『何の因果で』帯より)
11.14[金]~11.25[火] / 東京都 / パルコミュージアム(渋谷パルコ・パート1・3F)
©Nancy Seki
サッカー選手
俳優・脚本家
海外アーティスト
アイドル・歌手
消しゴムに初めて彫ったのは友達に頼まれた「ゴダイゴ」や「ツイスト」のバンドロゴだった。自身もカラオケの女王であった彼女が手がけたミュージック・マガジンの表紙、CDジャケットの仕事。
ポップアート風の作品もあった。良く見ると直径1㎝ほどのハンコが押されている。とってもオシャレ!※ただしハンコの似顔絵はおじさん(どなたか存じ上げない)
木版画もある。同じ版画とは言え、消しゴムは「押せばへこむようなやわなもの」で、木を彫るというのは全く別の話だそうだが、かなりの腕前だ。ただし本人曰く「消しゴムは小手先で彫るものであるが、版木は心で彫るものである。 知らないけど。」とのこと(「版画展3」カタログより)
似顔絵だけでなく、こどもや動物など可愛らしいハンコ作品も展示されている。ものすごくカワイイ!中央のかなりギャルっぽいウサギが気に入った。タバコ片手に『私のこと好き?』って聞いてくる。こういうオンナノコ、いるいる。
連続ハンコも面白い。下の作品は『自信なき歌丸』。笑点の大喜利で、答えに自身のない時の歌丸は右側にいる円楽の顔色をそっと窺う。そして円楽が笑顔になると、自分も顔をほころばせ正面を向く。その一瞬の流れを12人の歌丸で表現している。良くそんな細かい瞬間に気付くものだ。そしてその微妙な表情を、消しゴムハンコだけで表すのもすごい。
渋い冷蔵庫。彼女の部屋にあったらちょっとイヤかも。あれ、でも結構オシャレかも・・・?
中古のウェディングドレスに水前寺清子のハンコを押しまくったもの。
私は誰でしょう?クイズコーナー。コメントも大きなヒント。しかし、版画だと意外と分からない。・・・というか、そもそもその人自体知らない、というケースが多い。あまり若い人だと『これ誰?』となるかも。
映像「通天閣はもう唄わない」 人気脚本家を‘憑依’させて書いたという、浪花ド根性物語。消しゴムコミックスとして作成したものをこの展示の為に映像化した。ナレーションはピエール瀧。ネイティブ・アメリカンと日本人のハーフである丁稚、チャーリーがカワイイ。
‘お色気’がテーマとなっているピンクの部屋も。非常に分かりやすい。レンタルビデオショップのアダルトコーナーみたいだ。見たことがないにも関わらず、「陰湿な愛欲生活」という同棲に対するイメージを植え付けた、由美かおる主演の映画『同棲時代』は彼女の‘お色気’の起源だったのだろうか。
これであなたも由美かおる
観光施設によくあるスタンプも、この展示の後だとことさら嬉しく感じる。
ショップも充実の品ぞろえ。『ナンシー関×倉敷意匠』、『ナンシー関×かまわぬ』、展覧会オリジナルグッズや、消しゴムハンコセットも購入可能。
11.14[金]~11.25[火] / 東京都 / パルコミュージアム(渋谷パルコ・パート1・3F)
©Nancy Seki
「ナンシー関」と聞いて、すぐにあの肖像画が浮かぶ人は何人いるのだろう。30代以下の人でナンシー関を知っている人は、かなり少なくなっていると思う。
ナンシー関は、人類初の消しゴム版画家にして、史上最強のテレビウォッチャー、そして稀代のコラムニストであった。
2002年に39歳の若さで亡くなったが、テレビに映る様々な人の顔から様々な事を見抜き、数多くのコラムと消しゴムハンコを生み出した。本人ですら自覚していないような失態、魅力をカッターで見事に浮き彫りにする。
そんな鋭い視線が失われてから12年。未だに多くの人々が『今のTVにはナンシーが足りない』と嘆く。 視聴者ばかりでなく、業界人たちもその才能にほれ込んだ‘ナンシー関’とは何者なのか?
「ナンシー関? 誰、それ。」という方の為に、彼女の偉業を伝える展覧会をレポートする。この展覧会イベントでは、残された生ハンコ、原稿などを展示する。年月を経てその見破りがどれほど的確であったかが分かるものばかりだ。
展覧会の見どころの一つが、約800個の消しゴムハンコ。ナンシー関は生涯で5000以上の消しゴムハンコを残しており、ここに並ぶのはその一部。とはいえ、これだけの数を一度に見られる機会は貴重だ。
俳優、歌手、アイドル、 アーティスト、政治家、文化人、スポーツ選手、お笑い芸人、大食いフードファイターまで・・・。テレビに映る人であれば、一般人以外ほぼ題材にしているのでは?と思うほどの幅広さ。
俳優、歌手、アイドル、 アーティスト、政治家、文化人、スポーツ選手、お笑い芸人、大食いフードファイターまで・・・。テレビに映る人であれば、一般人以外ほぼ題材にしているのでは?と思うほどの幅広さ。
野球選手
サッカー選手
俳優・脚本家
海外アーティスト
アイドル・歌手
相撲、プロレス、野球が大好きだった彼女は熱中するあまり、その人に完全になりきって、苦楽を共感・体感していたらしい。そこから作られるものは‘似顔絵’ではなくて‘自画像’でもある。
そして「スポーツにおいて、選手でなければ観衆(傍観者)にしかなれないと思ったら損だ」という言葉も残している。確かに当事者に気持ちになれれば、ナンシー関曰く「毎日がめくるめくような思い」を感じられるかもしれない。
版画と言うモノクロの世界、線だけで似顔絵を表現するのは素人にも相当大変なことは分かる。ナンシー関は極限まで余分なものをそぎ落とし、これ以上でもこれ以下でもない、という絶妙なバランスで似顔絵を成立させている。作品を間近に見ることが出来るので、その一彫り一彫りをじっくり観察してみよう。
また似顔絵に添えられた一言コメントは、本人が実際に言っているものもあれば、ナンシー関が独自に付け加えたものもある。短い言葉ではあるが、いかにもその人が言いそうなフレーズで、そっくりな似顔絵と併せて見ると思わず笑ってしまう。
消しゴムに初めて彫ったのは友達に頼まれた「ゴダイゴ」や「ツイスト」のバンドロゴだった。自身もカラオケの女王であった彼女が手がけたミュージック・マガジンの表紙、CDジャケットの仕事。
ポップアート風の作品もあった。良く見ると直径1㎝ほどのハンコが押されている。とってもオシャレ!※ただしハンコの似顔絵はおじさん(どなたか存じ上げない)
ナンシー関が優れていたのは、消しゴムハンコ作りだけではない。テレビウォッチャーとして日々テレビを見つめていた彼女。そこに映るものを見る目も非常に鋭く、的確だった。ヤワラちゃんこと谷亮子の政界進出を予言したり、今や大躍進を続けるテレビ東京にフォーカスしたり、物事の流れを見極める能力を備えていた。
さらに、敢えて時流と反することを発言することもあった。今や毒舌で不遜な態度を取るキャラを確立した有吉弘行だが、ちょっと前までは『電波少年』で猿岩石としてアイドル的な扱いをされていた。しかしそんな彼を「ふてぶてしい」と評したこともある。これも‘先読み’と言えるだろう。
テレビを見ている人たちが口には出さない意見、または自分の中でもはっきりとしていなかった‘もやもやした何か’を、ナンシー関は消しゴムから掘り出した。その文章に派手さはなく、シンプルなもので、それでいて笑える。『アイツ気に入らないなぁ~』なんて眺めているタレントも、くだらない番組も、そして世の中ですら、ナンシー関の手にかかれば可笑しみがあり、楽しめるものになってしまう。
16にも及ぶ、消しゴムハンコ制作過程を本人直筆の解説で見られるコーナー。非常にシンプルかつ分かりやすい説明で、これさえ覚えれば明日から二代目ナンシー関を名乗れるのでは?と錯覚するけれど、たぶん消しゴムに最初の一刀を入れた瞬間に襲名を返上することになるだろう。
お手本の似顔絵題材は関口宏だが「実は笑っていない目と前髪のメッシュがポイントになるだろう」、「重要な目や口元は息をとめて彫ろう。あんまり無理はするな。」など、ここでもナンシー節が光る。ちなみに関口宏のメッシュは「最後に仏像に目を入れるように」彫るそう。
木版画もある。同じ版画とは言え、消しゴムは「押せばへこむようなやわなもの」で、木を彫るというのは全く別の話だそうだが、かなりの腕前だ。ただし本人曰く「消しゴムは小手先で彫るものであるが、版木は心で彫るものである。 知らないけど。」とのこと(「版画展3」カタログより)
この作品はナンシー関の事務所に残されていた版木から、展覧会の為に刷りおろしたもの(printing:加山智章 エディション・ワークス)
似顔絵だけでなく、こどもや動物など可愛らしいハンコ作品も展示されている。ものすごくカワイイ!中央のかなりギャルっぽいウサギが気に入った。タバコ片手に『私のこと好き?』って聞いてくる。こういうオンナノコ、いるいる。
連続ハンコも面白い。下の作品は『自信なき歌丸』。笑点の大喜利で、答えに自身のない時の歌丸は右側にいる円楽の顔色をそっと窺う。そして円楽が笑顔になると、自分も顔をほころばせ正面を向く。その一瞬の流れを12人の歌丸で表現している。良くそんな細かい瞬間に気付くものだ。そしてその微妙な表情を、消しゴムハンコだけで表すのもすごい。
1996年に名古屋PARCOで行われた「顔面百貨店」の展示のために制作されたもの。NIKEエア・ジョーダンに前田忠明、ピーターラビットの可愛い食器につけられた似顔絵は非常にインパクトがあった・・・。誰が、いつ、何の為に使うのかは考えてはいけない。こういう作品なのである。アートなのである。
渋い冷蔵庫。彼女の部屋にあったらちょっとイヤかも。あれ、でも結構オシャレかも・・・?
ドンペリのボトルにも似顔絵が。田村正和、橋本龍太郎などドンペリが似合いそうなおじ様たち。因みにグラスはうつみ宮土理。
中古のウェディングドレスに水前寺清子のハンコを押しまくったもの。
私は誰でしょう?クイズコーナー。コメントも大きなヒント。しかし、版画だと意外と分からない。・・・というか、そもそもその人自体知らない、というケースが多い。あまり若い人だと『これ誰?』となるかも。
映像「通天閣はもう唄わない」 人気脚本家を‘憑依’させて書いたという、浪花ド根性物語。消しゴムコミックスとして作成したものをこの展示の為に映像化した。ナレーションはピエール瀧。ネイティブ・アメリカンと日本人のハーフである丁稚、チャーリーがカワイイ。
‘お色気’がテーマとなっているピンクの部屋も。非常に分かりやすい。レンタルビデオショップのアダルトコーナーみたいだ。見たことがないにも関わらず、「陰湿な愛欲生活」という同棲に対するイメージを植え付けた、由美かおる主演の映画『同棲時代』は彼女の‘お色気’の起源だったのだろうか。
そんなレジェンド・オブ・お色気、由美かおるボディ(ただし消しゴムハンコ製)になれるパネルもある。ジャイアント馬場に足蹴にされるパネルもある。
これであなたも由美かおる
観光施設によくあるスタンプも、この展示の後だとことさら嬉しく感じる。
ショップも充実の品ぞろえ。『ナンシー関×倉敷意匠』、『ナンシー関×かまわぬ』、展覧会オリジナルグッズや、消しゴムハンコセットも購入可能。
見えるものしか見ない。そして見破る。ましてや彫る。
見たものをそのまま、いやそれ以上に真実の姿で消しゴムハンコ、コラムにするナンシー関。数センチ四方の小さな消しゴムから、無限に広がる世界。
ナンシー関をあらゆる角度から楽しみ、その偉業に感服する遊園地。「ナンシー関?誰、それ。」という人にこそ遊びに行ってほしい。
2014.11.14 文・写真 篠崎夏美