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憧れの‘あの人’のお手紙を覗いちゃった!?意外な一面が・・・ 「あの人の直筆」(前期)

アイコン字は人を表す

2014/10/31(公開:2014/10/31)
徳川慶喜 、坂本龍馬、西郷隆盛、夏目漱石、シーボルト、江戸川乱歩、三島由紀夫・・・。

教科書にも登場する超・有名人たち。しかし、私にとってその存在は非常に遠い。‘歴史上の人物’というより、ほぼ‘神話レベルの人物’と言った方が良いくらいだ。

当の本人たちには大変失礼な話だが「本当にいたのかなぁ?」なんてことまで思ってしまう。有名過ぎて、偉大過ぎて、頭では分かっていても、なんだか現実味がない。


「あの人の直筆」

10.18[土]~11.18[火] / 東京都 / 国立国会図書館新館1階展示室
※展示替え、展示箇所の変更あり。
前期:10月18日(土)~11月1日(土) 後期:11月4日(火)~11月18日(火)


国立国会図書館で所蔵している古典籍資料、憲政資料等から、歴史上の有名人約150人の直筆を集めた展示会イベント。文字だけでなく、絵画や脚本の原稿も紹介される。 

政治家、軍人、 経済人、学者、作家、画家、そうそうたる顔ぶれ。
教科書に載ったり、小説、テレビ、映画の題材になったり、お札になった人まで・・・。

皆さんかなりの有名人。でも、顔や名前は分かるけれど、どんな字を書いていたのかまで知っている人はいるだろうか?今回のイベントでは様々な‘直筆’資料が展示されており、‘あの人’の知らなかった一面を知る機会を提供する。


【体験コーナー】
展示だけではなく、実際に文字をなぞったり、クイズに答えたりすることでより詳しく内容を知ることが出来る。

●あの人の文字をなぞってみよう
お手本の上に半紙が置いてあり、ペン習字のように歴史上の人物たちの筆跡をなぞる。ただでさえ使い慣れない道具なのに、達筆な文字をなぞるのはかなり難しい。

しかし、与謝野晶子の文字をなぞれば気分は文豪、坂本龍馬なら気分は幕末志士、徳川斉昭なら気分は藩主!


   


●坂本龍馬の直筆署名スタンプコーナー
直筆資料の署名部分がスタンプになっており、自由に押せる。自分の持ち物に押せば、思わず「日本の夜明けぜよ!」なんて言いたくなってしまうかも?




●署名あてクイズ
署名の画像を見て、誰の署名かを当てるクイズコーナー。下の扉を空けると答えが見える仕掛け。一般的に知られている号ではなく、本名の人もいるので、難しい。その前に、何と書いてあるのか分からないものも・・・。その場合、文字の雰囲気で書いた人を想像する、というなかなかハイレベルなクイズ。
 

※ネタバレ これは夏目漱石。「夏目金之助 」という本名の署名。



【展示コーナー】 ※展示内容は前期・後期で変更となっている可能性あり
名前の部分にリンクがある人物については、「デジタルコレクション」で画像を見ることが出来る。
    
細川ガラシャ 細川忠興夫人書簡(『細川忠興同夫人等 書状』のうち)
※右の書簡は前期のもの

◇細川ガラシャ
今回紹介されている資料の中で一番古いそう。侍女に宛てた手紙で周囲の人たちを気遣う内容。優しい性格が表れているが、何といっても散らし書きの優美さにが目をひく。のびのびとしていて、まるで文様のよう。細川ガラシャといえばその美貌が有名だが、
美しい人は字まで美しいのだ。
 

徳川慶喜徳川斉昭
‘ショーグン’、 ‘ハンシュ’ の直筆、である。恐れ多い・・・。見ているだけで「ははぁ~っ!!」と平伏したくなるくらいの威圧感を文字からも感じるのは気のせいだろうか。

徳川斉昭は “烈公”とも呼ばれ、かなり激しい人だったようだ。『也』という字の終わりを虎の尾っぽのように、勇ましく跳ねあげているのがカッコいい。とても真似したい。(冒頭で紹介した「あの人の字をなぞってみよう」で体験可能)


◇曲亭馬琴、滝沢路
『南総里見八犬伝』 の著者として知られる馬琴は、晩年には視力が落ち73歳頃にはほとんど失明した。このため、息子の妻・お路(滝沢路)が口述筆記をすることになる。馬琴は自分が代筆させたにも関わらず誤字が多いとか、嫁の文句書き添えている。

曲亭馬琴本人と、代筆したお路の字を比べて見ることが出来るが、正直そんなに違いは分からない・・・。 お路は馬琴のために、字を学びながら代筆したそう。こんな舅相手に大変だっただろう。いよ、お路!頑張れ、お路!!



漱石書簡

◇夏目漱石
正岡子規に宛てた葉書。非常に仲が良かった漱石と子規。学生時代、そして漱石が留学している時も、かなり頻繁に手紙をやりとりしていたそうだ。この葉書は漱石が学生時代に書いたもの。学校を休みがちな上に、試験の出来が良くなくて落第しそうな‘のぼさん’に「哲学の追試受けた方がいいよ、マジで」という感じでアドバイスをしたもの。

結局子規は受けずに落第してしまったそうな・・・。 仕方ないやつだなぁ~、という漱石のボヤキが聞こえてきそう。


◇柳原白蓮 
NHK連続テレビ小説「花子とアン」でも大人気だった‘蓮子様’のモデル。美貌の歌人、筑紫の女王 、大正三美人という呼び名もさることながら、その波乱の生涯も彼女を語る上では欠かせない。そんな白蓮の文字は優美にして、繊細ながらも強い意志が感じられる。


陸奥宗光
奥さんへの手紙。‘カミソリ大臣’とも呼ばれていたそうだが、かなりの愛妻家だったみたい。“亮子の写真を送るように頼んでいた”という内容の説明文があり、「亮子=娘さんかな?子煩悩パパだったんだな♪」と思ったら、亮子さん=妻だった!!

亮子さんは「鹿鳴館の華」 、「ワシントン社交界の華」、と呼ばれるくらい、美しく聡明な方だったらしい。外遊中も、50通以上の書簡を送って「君の写真が欲しい」、「一週間に一回は手紙欲しい」とか言ってたらしい。陸奥さん、可愛い!!確かに、こんな美人な奥さんだったら写真送ってー♡ってなるのも分かる。


◇白洲正子
おじいちゃんである、海軍大臣を務めた樺山資紀に宛てた手紙。10歳の時に書いたものらしいので、恐らくこの展示の中では最年少。可愛らしい女の子のイラストがあり、その横に『ぼくよ』と書いてあるところを見ると自画像らしい。自分の事を‘ぼく’というボクっ娘だった?

いやー、可愛すぎる!いくら薩摩の軍人と言えど、これにはおぢいさまもメロメロだったに違いない。宛名の書き方も「これで届くのか」と驚きつつ、子どもらしい無邪気さが表れていて微笑ましい。


やはり家族・親友に向けて書かれた文字には、その人の人柄が一番よく表れていて興味深い。

その他にも人気小説や、話題の映画の登場人物たちの直筆が次から次へと登場。一気に彼らが身近になること請け合い。

歴史的な事件に関わるものや、その真っ最中に書かれた文書もあり、当時の緊迫した様子がリアルに伝わってくる。書かれた状況、何を使って、どんなものに書かれたのか、直筆文字は様々なことを知る手掛かりになる。 


パネルがたくさんあり、人物の紹介だけでなく、当時の郵便事情、筆記用具、文化についても知ることが出来る。
 

【レプリカコーナー】
デジタル画像をプリンター用和紙などに印刷製本(和綴じなど)したレプリカを、実際に手に取って読むことが出来る


河鍋暁斎(暁斎絵日記) 
その日起こったことを軽快なタッチで描いた絵日記。友人たちからも非常に好評で、皆が持って帰ってしまうので、本人の手元には一冊も残らなかったという。

 
大久保利通書簡
「♪大久保さんからお手紙ついた」 大久保利通から届いた手紙を読んでいる気分になれる。しかし、書いてある内容は「奉職ノ目的アイ立チガタク辞表差出候 速ニ御放免クダサレ」 歴史的な動きにもつながる大変重要な事項らしい。巻いてある手紙をくるくる広げたり、また戻したりという体験もレプリカなら可能。


【PCコーナー】
電子資料を閲覧出来るスペース。この展覧会に出展されている資料のほとんどは『デジタルコレクション・電子展示会』で見ることが出来る。

平成26年度企画展示「あの人の直筆」
出展資料一覧
http://www.ndl.go.jp/jp/event/exhibitions/list1410_2.pdf 

拡大・縮小自在でじっくり見ることが出来たり、今回の展示では一部しか紹介されていないものの全体を見たりすることも出来たりする。これはスゴイ!あなたの部屋も
国会図書館!! 

    
当時の学者が描いた植物の絵。ちなみに、国立国会図書館には日本有数の本草学のコレクションがあるそうだ。


◇石田英吉「亡友帖」 
最後に一番印象に残った展示を紹介したい。7.2mもあるという「亡友帖」だ。坂本龍馬の「新政府綱領八策」も含まれており、その部分だけを広げて展示会で紹介したことはあるものの、全てを広げて展示するのは、今回が初めてとのこと。

   
亡友帖
 
石田英吉が亡くなった友人たちを偲んで作ったものらしい。坂本龍馬、中岡慎太郎、木戸孝允、高杉晋作ら、幕末の志士たちから生前に受け取った手紙など、直筆を張り付けて一軸にまとめている。どんな気持ちでこれを作ったのだろうか。

最近、母から聞いた話を思い出した。ある日親戚から『これはあなたが持っていたら?』と、一枚の葉書を渡されたのだという。

それは亡くなった母親(私から見ると祖母) から届いたものだった。何十年も前の葉書だが、字を見た瞬間に様々な思い出が蘇ったそうだ。 「遺品を見ると悲しくなるから、自分の手元にあるものは処分してしまった。それなのに、今になってこんなものが出てくるなんてね・・・」と悲しいような、嬉しいような複雑な表情を浮かべていた。

その人が書いた字は、強烈にその人の存在を残す。
ただの文字かもしれないが、そこには書き手の気持ちが残る。


意外に豪快だったり、意外と繊細だったり、字を見ることで‘あの人’により近づける。これまで「教科書の中の人」だった人たちが、確かにそこにいたということをまざまざと感じた。日本を造り、支えて来た人たちの息づかいを感じることが出来る。

同時に文字を書くこと、それを残すことの意味についても考えさせられた。


国立国会図書館の展示(東京・関西)Facebokページ


2014.10.30 文・写真 篠崎夏美
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