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ゆるすぎるアートが集まる、2年に一度‘脱力の祭典’がやっぱりゆるかった。「スロウアートビエンナーレ2014」

アイコンくだらないけど、キラリと光る。

2014/09/24(公開:2014/09/24)
ブルース・リーは言った。

「Don’t Think.Feel!!」 (考えるな、感じろ。)


カンフーだけでなく、人生の極意であり、アートを見るときの極意でもある。
・・・と個人的には信じている。

特に現代アート。前衛的で難解なものが多い(と思っていた)。一見すると「何だこれ?」、じっと見ても「良く分からない」。しかしある日、天啓を受けたかのように一つの考えが閃いた。

「そうだ、感じるんだ・・・!!」

小難しいことは分からないけど「色がきれい」、「この線はなんだろう」、「なんか人に見えなくもない」などなど。もっと純粋に、シンプルに、作品と向き合えばいいのだ。

分からなきゃ分からないで良い。あるがままを受け入れるのだ・・・。

当たり前のことなのかもしれないが 、以降良く分からない作品も臆せず鑑賞出来るようになった。 私にとっては悟りの境地に達したような気分だった。

だが今回のイベントは、それでも思わず突っ込まずにはいられないことばかりだった・・・。



09.21[日]~09.27[土] / 東京都 / デザインフェスタギャラリー原宿


2年振りに開催される‘脱力の祭典’こと、「スロウアートビエンナーレ2014」。
何だこれは? 意味が分からない。 どうしてこうなった。 時代が追いついていない。
頭の中が「???」になってしまうような、思わず脱力してしまうような作品が並ぶ。 

スロウアート(SLOW ART)とは
「言葉では表せない脱力感、思わずクスッと笑ってしまうその佇まい。時代の隙間からうすぼんやりと立ちのぼる、 下らないけど面白い作品」 © DFG 

スロウアート」は、このイベントを主催するデザインフェスタギャラリーの造語。ファインアート(純粋な芸術)に対して、面白い親しみやすい作品を集めている。アートは難しいと思われがちだがこうした作品を見て気軽に楽しんで欲しい、という思いがあるそうだ。

    
会場は道に面していて非常にオープン。というかそもそも道路側に壁がないので、外からでも中を見渡せる。通りがかった人がふらりと立ち寄って、ゆるーい、おもしろーい作品を楽しめるようになっている。外からの爽やかな風も入ってきて、非常に心地よい。


さて、鑑賞を始めよう。

あれ?誰かが飲んだボトルが置きっぱなしになっている。
ダメじゃないか、ちゃんとゴミ箱に捨てなきゃ・・・。

   
長谷川維雄「EXTRA VIRGIN PIMENT AIR (エクストラ ヴァージン ピーマン エア)」

・・・作品だった。

夏の太陽をたっぷり浴びて、元気に膨らんだピーマン。その中にある空気を水上置換法により、一つ一つ丁寧に集めたもの。『ピーマンの中の究極に純粋な空気100%』。‘空気を抜いた後のピーマンは抽出者が責任をもって食べております’とのこと。 そうかそうか、食べ物を無駄にしていないなら安心(?)だね。

・・・ってオイ!! ・・・はっ、いけない。ベタな一人ノリツッコミをしてしまった!

以前テレビの企画で「ピーマンの中にある空気だけで、水中で呼吸できるか?」というものがあったが、それよりはだいぶ現実的(?)だね。世の中には色んな人がいるので『いやー、欲しかったんだよね!!ピーマンの中の空気100%のやつ!』という人がいるかもしれない。
※ちなみに特にピーマンの匂いはしないそう。

しょっぱなから驚くべき作品だ。まだまだ突っ込みたいが抑えて鑑賞を続ける。


おや、今度は三角コーンが置いてある。展示物に近寄りすぎないためだろうか?




長谷川維雄 「カラーコーンの地蔵」

・・・地蔵だった。

三角コーンにお地蔵さまが彫られている。道を守るものという共通性から、カラーコーンと地蔵を組み合わせた作品。三角コーン×地蔵、この発想はなかった・・・。

へぇー、これは良いかもしれない。 ありがたいし、目立つし、イタズラされなそうだし、一石三鳥だね。後で調べたら色は赤、青、黄、緑あって、1つ3000円で販売中らしい。うちの前にも置いてみようかしら。

大丈夫、大丈夫、まだ平静を保てるぞ。あるがままを受け入れられているぞ。

  
左)Kaz 「無題」モノクロ写真
右)長谷川維雄「発泡スチロール版画 (ハナ・キンタロ・ハヌマーン)


もこ 「無題」 

『どうぞツッコんでください』と言わんばかりの作品。

意味不明な『ビッグウェーぶ』。なぜか最後だけひらがな、漂う昭和臭、謎だらけのイラストである。一体何の目的で描かれたのか、ツインテの少女はなぜ「ちくわ」のプラカードを持っているのか、白い猫はもしかしてキ○ィさんなのか、右の生き物は何なのか。

ダメだ・・・ここで突っ込んだら負けだ・・・。 何かに負ける気がする・・・。(プルプル)


   
カクライミサト 「kakuline 1000series」

瓶にギッシリ詰められたのは、プラスチックの小片。よーく見ると、油性マジックで色や模様が描かれている。わー、プラ板(プラバン)じゃないこれ!?懐かしすぎる。 プラバンで架空の動物を1000匹作ったそう。1000匹・・・。スロウアートだけど、作業工程は全然ゆるくない!! 



小山維子(Yukiko Oyama)「ドローイング」

うーん、芸術的。これ以上ないと言えるくらい、シンプルな線と色。正直、具体的に何が描かれているかは分からない。何も描かれていないのかもしれない。それでも見ていると、何だか心が落ち着くのはなぜだろうか。

よし、良いぞ。これだ。ブルース・リー師匠の「考えるな、感じろ」を実践できてるぞ、私。


   
左)波能かなみ「のらいぬ」
右)古田与四郎 「Z」

「のらいぬ」は王道的ゆるカワ。しかし、首輪と鎖を外して去っていく犬の背中には、哀愁と強い意志がある。2枚組なのでそこに物語が生まれて想像を掻き立てる。

作品の横に貼られている作家名・タイトルなどの説明タグは、全てアーティストの手書き。個性が出ていて面白い。ちなみに 「Z」のタイトルは、もしかすると「乙」かもしれない。なんせ手書きで良く読めないスロウないい味出してるもので・・・。


   
左)HERAO GRINNING 「Sight Seaing」
右)nana 「無題」


あれ、こんなところにドアが落ちているぞ。


Stalker 「Door of her house」

・・・作品だった。

「これが、あの女のハウス(のドア)ね」

彼女が好きすぎて、いつも一緒にいたくて、ドアごと持ってきちゃった♡ってことかな?でも、彼女ごと持って来ればよくね?スロウアートなのに、間違った方向の熱意と凄まじい情念を感じるよ! 
※全然違う解釈だったらすみません。


   
左)ゆりだいん 「パイ投げ」
右)Dogu Arin「tragedy of 2014」


     
左)森葵 「やまだなぁ」
右)森葵 「あめだなぁ」


この絵で、このタイトル。挑戦的・・・。特に「やまだなぁ」にはすごい鬼気迫るものを感じる。この不安感は何・・・!?なんか『進撃の○人』っぽいから? 

メインビジュアルに使われていることもあって、「あめだなぁ」自分的にはかなり『THE・スロウアート』な絵。こういうゆるいけど、真似できない、というのがアートの神髄のようにも思える。



作家のプロフィールカードもすごい。暗号は何と書いてあるのかまだ解読出来ていない。
誰か教えて。


アート鑑賞の極意を悟ったはずだが、自分の経験と思想を根本から覆す作品ばかり。頑張っては見たものの、やはり「どうして?」、「何の意味があるの?」とツッコみ、考えずにはいられなかった。途中でツッコむのに疲れた考えるのをやめたが、自分はまだまだのようです、ブルース・リー師匠。

   

それにしても‘スロウアート’って、なんて素敵な言葉なんだろう! ゆったりと、気軽に楽しめる雰囲気が全て詰め込まれていて、ぴったりのネーミングだと思う。 

目が離せない、くだらない、ニヤニヤしちゃう、面白い。そんな魅力的な作品がいっぱい! こういうのもあるんだー、と見る人もゆったり楽しんで欲しい。 

想像もしない作品に出会えるから、アートは面白い。



2014.09.24 文・写真 篠崎夏美
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