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「ミュージアムで音を出してもいいの!?」 音のおもちゃ箱みたいな空間。見て、触って、音と遊ぶ!『スズキユウリ “Playing with Sound”』

アイコン予想もしなかった音楽が生まれる。

2014/08/29(公開:2014/08/24)
グォーン ガガーン・・・

ピコ ピピピ ピコ・・・

キュル キュルル・・・


会場のあちこちから、様々な音が聞こえてくる。


スズキユウリ “Playing with Sound” 

08.22[金]~09.23[火] / 東京都 / ポーラ ミュージアム アネックス   

音と人の関係性のデザインを探求する、サウンドアーティスト・デザイナーのスズキユウリ氏。アートユニット「明和電機」に所属していたこともあり、現在はロンドンを拠点に活動している。今回、日本で初めての大型個展が行われる。

“Playing with Sound”と銘打った展覧会イベントのテーマは、その名の通り「音と遊ぶ」。音を使った作品や、現在開発中の新作も発表されている。

レセプションではスズキ氏本人による実演と解説が行われた。


◆Garden of Russolo  ホワイト・ノイズ・マシン
拾ったノイズ(音)に対して同じ量のノイズを返す。この作品はスズキ氏がインドに滞在中に生まれた。元々ノイズ(騒音)は嫌いではなかったそうだが、食中毒とデング熱に冒され3週間もの間寝込んでしまった際に、初めてノイズを厭わしく思ったという。ホワイトノイズで町のノイズを掻き消せないか?という発想から作られた。

自分の出した音が‘掻き消される’という体験。望まずに‘掻き消される’のは嫌な気分かもしれないが、自ら‘掻き消してみる’のは面白い。


  
◆Looks Like Music
難読症で楽譜が読めず、バンドをクビになった経験があるスズキ氏。ビジュアルで音楽を認識できないだろうか?と考え生まれたアイディア。楽譜が読める人はもちろん、読めない人も楽しめる作品だ。

紙に黒い線で線路を描くと、白い乗り物がその上を走る。線路の長さはその曲の長さとなる。乗り物が線の上を動き、黒い線を横切って塗られた色を読み取ると音楽を奏でる。

スズキ氏は「カラーチェイサー」と呼んでいたが、色を追いかけて音楽を演奏するポップで可愛らしい作品。それぞれの乗り物はドラム、ベース、アルペジオ、コード、グリッチ(機械などが劣化した時生じる『ブチッ』というような音)を出す。色によって音も変化する。例えばこれは青の音、緑の音、など音を色で認識できる。


普段なかなかこんな大きな紙に何かを書くこともないし、自由に線を引いたり、色を塗ったりということもないから、それだけでワクワクしてしまう。曲の長さ、音、楽器を決めて演奏するというこのインスタレーションでは、作曲家になれると同時に演奏家にもなれる。来場者が思い思いに線を描き、色を塗る。それが積み重なることで、一つの大きな楽譜が出来上がる。


  
◆OTOTO
日用品、水、植物まで、あらゆるものが楽器になってしまう。正確には電気を通すものに繋げば、何でも楽器になる。スズキ氏の発明会社「Dentaku」よりキットが発売されており、今回のイベントが日本初公開。

植物は音を出してコミュニケーションをとっている、という学説があるが人間がそれらの音を聞けるようになるにはまだ時間がかかりそうだ。しかしこのOTOTOを使えば、一足早く植物と音で会話が出来るかもしれない。

紙も鉛筆も電気を通すので、自分が描いた絵の音を聞くことも出来る。描き方によって音はどのように変化するだろうか?

    
 一つ一つ実演するスズキ氏
  
  
某大手通販サイトの箱が、こんな素敵な楽器に!実際に弾いてみると思ってもみなかった音が出る。 



  
◆The Sound of the earth
真っ黒な地球儀・・・ではなく、3Dの『地球儀型レコードプレイヤー』。世界中の音や音楽が断片として録音されていて、 30分間かけて北半球から南半球まで音の世界旅行ができる。

スズキ氏が旅先で録音した音が入っている。その地域を象徴するものばかりではなく、個人的な思い出のある音も入っているそうだ。地球上で海にあたる部分には音が入っていない。
※残念ながら今回の展示で唯一‘触れない’作品だが、動画で音声を聞くことが出来る。


  
◆Garden of Russolo
作品タイトルの由来は、イタリアの作曲家ルイージ・ルッソロ。彼が発明したに騒音を出せる楽器、「騒音芸術」からインスピレーションをうけたプロジェクト。自分が発した音がこれらの装置を通すと、早くなったり、大人の声が子供の声になったり、言葉が反転されたり(※)様々に変換されて戻ってくる。
(※ローマ字表記にして逆から読む。例えば『YOUKOSO』は、『OSKOUOY』になる) 

美術館は、大声で話してはいけない、走ってはいけない、音を出してはいけないというイメージがあるが、そこで敢えて自分の足音などを楽しめる作品を考えたという。



実際レセプションの最中も、人の足音や話し声に反応して、まるで犬がうなるような「グォー!ガォー!」という音を出していた。そこに他の作品の音も混ざり、会場全体がでたらめだけど、賑やかで楽しい演奏会のようになっていた。 

どの作品にもハッキリとした意図と、それを実現させる技術が盛り込まれている。現代アートであり、一部は優れた製品でありながら、とても親しみやすい。思いもよらない仕掛け、思いもよらない音楽。実際に触れて音を出せば、いつのまにか笑顔になってしまう。
 
「音の体験ワールド」で音と遊んでみたら、 耳で聞くだけではなく、自分の手で触ったり、目で見たり、様々な感じ方が出来ることに気付かされた。


2014.08.23 文・写真 篠崎夏美
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