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【これが砂・・・!?】砂が生み出す儚い芸術 「サンドアートパフォーマンスグループSILT巡回展『光と影が織りなす幻想的な砂絵の世界』

アイコン一粒は小さいけれど、集まれば大きな世界に。

2014/08/23(公開:2014/08/21)
祈りを捧げる一人の乙女。 



柔らかなタッチで、細部まで緻密に描きこまれている。



実はこの作品、だけで描かれている。



開催中~08.31[日] / 東京都 / コンテナート

「嵐」、「UVERworld」のコンサート映像、資生堂MAJOLICA MAJORCAの広告映像、BVLGARI、L'OCCITANE、FIAT、CHRYSLER、docomo、Johnnie Walkerなど、数々のブランド・企業のイベントも手掛けるサンドアートパフォーマンスグループ「SILT」によるサンドアートの展覧会。 

「サンドアートパフォーマンス」とは、ガラスの上に次々と砂絵を描いていき、物語を展開させるパフォーマンスアート。SILT(シルト)は、2012年に船本恵太さんによって結成された日本のサンドアートパフォーマンスグループ。船本さんは世界で初めてのサンドアートの教育機関も設立している。

 
冒頭で紹介したのはSILTメンバー・安蘭さんによる生の砂絵「寧静の祈り」。通常、作品制作時間は長くても1~2時間だが、この作品には14時間もの時間が費やされている。

細かい部分は竹串や割り箸を使っているが、基本的には道具は使わない。指、爪、手のひら、手の甲、腕など、様々な部分を使うそうだ。下絵もなく、一度描くとやり直しは難しいため、集中力と根気が必要だ。チベット仏教の「砂曼荼羅」は、色砂を使い何週間もかけて曼荼羅を描くが、まさにそれと同様で修行のような精神力が求められるのだろう。


サンドアートは一瞬の芸術だ。作り上げたらまた崩してしまう。それが魅力でもあるし、そもそも保管が非常に難しいということもある。だが、今回のイベントでは珍しい生の砂絵を展示している。

しかし、展示はもちろん、運搬も大変だったそうだ。アクリルのふたをかぶせ、タクシーで人の歩みほどのゆっくりとした速度で会場近くまで行き、2人がかりで砂を動かさないように慎重に運んだとのこと。展示している台を動かしてしまうと、たちまち作品は崩れてしまう。

作品そのものも魅力だが、生の砂絵が展示されていること自体、すごいことなのである。


※なんと、展示期間中に事故によって砂絵が一部崩れてしまったそう・・・!!
だが、修復をライブペインティングとして鑑賞出来るようにしたとのこと。これはこれで貴重な機会だ。

   
サンドアートは原画を残せない。撮影したら絵を消し去ってしまう、それが魅力でもある。
原画を撮影したものを作品として展示・販売するが、どうしても「原画でない」と価値を低く見られてしまうそうだ。

そのため作品は全て一点もののプリントである。後から着色したり、ラメによる加工をしたり、オブジェを付けたり、作家のサインを入れるなど作品に付加価値をつけ、世界で一つだけのものにしている。

  
作品に使った砂を小さなボトルに入れたオブジェが付いている

作品に使われる砂は、アメリカ、オーストラリア、アフリカ、ヨーロッパなど、世界各地から集められる。例えば同じサハラ砂漠の砂でも、エジプトのものよりモロッコよりの方が良いなど、細かく違いがある。色味も様々なので、作品の雰囲気によって選ぶ砂の種類も変わってくる。

サンドアートにはキメが細かく、柔らかく、軽いものが適しているそうだ。砂が柔らかいとはどういうことか聞いてみると、固い砂は上から落とした時に跳ねてしまい、思ったところに落ちないとのこと。色合い、粒の大きさだけではなく、こうした点も作品作りに大きな影響を与えるのだ。

  
左)SILT代表・船本恵太さん
船本さんはもともとクレイアニメや、砂アニメーションのワークショップを行っていた。砂アニメーションとは砂絵を少しずつ動かし、コマ撮りで制作するアニメの事だ。現在はサンドアートを使ったライブパフォーマンス、映像の他、商業サンドアートの開拓にも力を注いでいる。

右)あんじぃあんじゅさん 作品「看護猫」
猫のふわふわした毛、深い色に光る瞳が砂で表現されている。砂をいじっている時の感触や、思い通りにならないところ、ちょっとした加減で変化するところが魅力だと言う。作品を作るのが楽しくそれだけで満足なので、残らなくても構わないのだそうだ。

 
日本初のサンドアート絵本「ぼくね、ほんとうはね。」(文・川本真琴 サンドアート・SILT)


   
ギャラリーティー「ヒカリノマチ」
コンテナートでは展示に合わせた紅茶を提供している。この紅茶には、セミドライの種なしブドウとニワトコの実、ハイビスカス、フランボワーズの天然香料が入っている。

まるでワインのような色合いだ。ブドウの甘酸っぱさ、ハイビスカスのトロピカルさが際立つ、爽やかな味わい。ニワトコの実やフワンボワーズも味に深みを与えている。

名前の由来はマイケル・ウィンターボトム監督の映画のタイトル「ひかりのまち」。ドイツの老舗紅茶メーカー『ロンネフェルト』の紅茶を使用している。世界で唯一の
7ツ星ホテル「バージアルアラブホテル/アラブ・ドバイ」でもロンネフェルトの紅茶は採用されている。コンテナートではこうした紅茶を購入することも出来る。

 

サンドアートは下から光を当てることによってはっきりと絵が見える。影の強弱で濃淡を表現する手法は水墨画にも通じる。だから日本人が惹かれるのだろうか。作品がまた元の砂に戻るという‘諸行無常’さも、日本人の遺伝子に刷り込まれた‘ワビサビ’を愛する心に訴えかけるのかもしれない。

新しい芸術のサンドアート。パフォーマーもまだ少ないのだが、日本には海外に比べて多くのパフォーマーがいる。これは船本さんらによる教育機関の功績もあるだろうが、日本でサンドアートの需要があるということに他ならない。やはり日本人はサンドアートが好きなのだろう。

小さなものたちが集まり一つの作品になる。それは儚く、描かれては消えてしまうものだからこそ美しく、我々を魅了するのかもしれない。



2014.08.21 文・写真 篠崎夏美


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