エアリアルとは・・・天井から吊るした長い布(ティシュー )や、フープを使って空中で行う、アクロバティックパフォーマンス。
写真提供 徳江みさほ様
東京都 / エアリアルジム・くぅ
頭上約8メートルの高さで繰り広げられる、ダイナミックで華麗な演技の数々。シルク・ド・ソレイユなどで有名になり、最近ではエアリアルを学ぶレッスンなども人気がある。このエアリアルを、専用スタジオで学んでいる12人が集結し、ショーを行うイベント。
それぞれ新体操、ダンス、芝居など、出身は違うが、皆エアリアルを極めたいという思いは同じ。そんな彼女たちの‘今’を表現する。
会場となるのは倉庫の一角にあるスタジオ。
中に入ると、外観からは想像もつかない世界が広がっていた。まさか、倉庫の中がこんな風になっているとは・・・。 オシャレなBGM、雰囲気のある照明。天井からは長い布や大きな輪が吊り下げられている。これに人がぶら下がったりするのだろうか?実物を目にしても、なかなか信じられない。
まるで軽いストレッチでもするかのように、開演前から柔軟性を活かした技を披露していた。
公演前に出演者の方たちが挨拶をしていたが、皆さん首や手足が細く長く、しなやかなのが印象的だった。姿勢が良くて、一つ一つの動きにブレがない。エアリアルをしていると、こういう身体になれるのだろうか。
公演が始まると、彼女たちはするすると布を登って行く。音もなく、力ずくで登っている様子もなく、本当に‘するする’という表現がぴったりである。あんな高いところでポーズを決めるだけでも大変だと思うのだが、全くそれを感じさせない。白を基調とした衣装に、長くて白い布を巻き付けて演技する姿は、天女が宙を舞っているようだ。その一方で、時には妖しげな照明とセクシーな衣装で、獲物を待ち受ける蜘蛛のようにも見える。
優雅な演技を笑顔で行う彼女たちだが、命綱などはない。少しでも気を抜けば、約8メートルの高さから地面に叩きつけられる。また、「シュート」という巻き付けた布をほどきながら地上に降りてくる技があるのだが、こうした演技は布の位置によっては首が締まってしまう危険もある。そうしたことを想像すると、一瞬ハラハラするものの演技を見ているうちにあまりの華麗さにそれを忘れてしまう。
また今回の公演は、観客とパフォーマーの距離が非常に近く、迫力があった。一番前の観客からステージまでの距離は数十センチ。空中演技では、頭すれすれにパフォーマーが横切る場面もあり、スリリングでもある。
空中での演技も素晴らしいのだが、ダンスなどの振付もそろっており、手足の指先まで気を配っていることが分かる。衣装も場面ごとに変わり、BGMもサンバ、スウィングジャズ、ポップミミュージックまで幅広く、そのシーンに非常にマッチしていた。
最後のプログラムでは、ゲストとして出演した元劇団四季の方が、「ライオンキング」の『 サークル・オブ・ライフ. 』生歌を披露。感動と共に、45分のステージはあっという間に終了した。
地上で演技する何倍もの筋力、体力、集中力が必要とされるエアリアル。美しく優雅でありながら、ダイナミックな演技に魅了された。12名の出演者、それぞれが「現在進行形」で思っていること、感じていること、ここで演技できる喜びを、目一杯表現していることが伝わってくるステージだった。
2014.05.19 文・写真 篠崎夏美