「やばい!何これ、気持ちわるーい!!」
「めっちゃうけるー!キモッ!!」
目の前の女子高生二人が、ポスターを指差して笑っている。
彼女たちの視線の先にあったのは、こんなポスターだった。
彼女たちの視線の先にあったのは、こんなポスターだった。

まさしく、これから私が取材に行こうとしているイベントじゃないか。‘へんないきもの’展だし、へんで良いんだけど、何となく知り合いがバカにされたような気分になってしまう。『笑ってるけど、キミタチも他の生物から見たら‘へんないきもの’かもしれないよ~?』とか思ってみたり。
しかし、そんな‘へんないきもの’をわざわざ見に行く人間も、十分へんなのかもしれない・・・。
東京都 / サンシャイン水族館スペース
「へんないきもの」の著者・早川いくを氏監修の特別展。ミステリアスな名前、変わった生態、不思議な形態の生物たちを紹介する。
広報の方によると、元々春休みの展示のテーマとして「へんないきもの」があり、せっかくなら早川さんとコラボできないか?ということで企画されたイベントだそう。30種類ほどのいきものが展示されており、この展示の為に早川さんが付けたオリジナル解説文と共に楽しめる。
トップバッターはチュウゴクオオサンショウウオ。一瞬岩かと思ったほど全く動かない。でかい。めちゃめちゃデカイ。『アイキャッチ』的な存在として展示しているらしいが、アイをキャッチしすぎ。
<麗しの狩人たち>
磨き抜かれた技は美しい。狩りの為に様々な能力を発達させた生き物を紹介している。シャコのパンチ力がすごい、とかは結構知っている人が多そうだけど、そんな既知の情報も早川さんが解説するとものすごく面白い。
なんてふてぶてしい顔なんだ・・・。カエルアンコウは、への字口、すわった眼、石ころみたいな身体、ちんちくりんの足のようなヒレを持つ、何とも言えない生き物。お前はカエルなのか?サカナなのか?小一時間問いただしたくなってしまう。
「世界三大奇蟲」なんてのもいる。‘へんないきもの’なので、虫も含まれるのだ。写真はあまりにアレなんで、敢えて掲載しない。ビビッて撮影出来なかったわけではない。決してない。
メンバー構成は、サソリモドキ、ヒヨケムシ、ウデムシ。それぞれのルックスも、スキルもさすが世界三大奇蟲!!気になる方は自分で調べてみて欲しい。ただし、かなりアレなのでご注意を。
で、出たー!!どこからどうみてもエイリアン!!・・・だが、これはガンギエイの干物。右の写真はナマモノのガンギエイ。砂に隠れているので見つけてみよう。
こんな恐ろしい外見だが、意外に美味しいらしく食用にもされるらしい。こんなものを食べるなんて、本当に恐ろしいのはやっぱり人間だよなぁ・・・。でも、夜道にこんなのが立っていたら、間違いなく通報されるレベル。
お巡りさんというか、アメリカのどっかの機関が飛んできて、捕獲して、研究するレベルかもしれない。
ムッチムチなカワテブクロとか、超悪女なフリソデエビも可愛かった。特にフリソデエビは、そのキュートな姿からは想像もつかない恐しさ。必殺仕事人のように獲物を仕留め、じわじわと肉を喰らう残忍な手口。でも、それがあの子の生き方(生態)なのよ・・・。
<守りに入って何が悪い>
とにかく自分を守るために進化したいきものたち。
そういえば、防災のプロも『まずは自分の身を守りましょう。でないと、隣にいる大切な人も守れません』と言っていた。
そういえば、防災のプロも『まずは自分の身を守りましょう。でないと、隣にいる大切な人も守れません』と言っていた。
イガグリガ二(左)は「素手で持ちたくない生き物ランキング」があったら、かなり上位に入りそう。見た目も、色も、ここまでカニっぽいのに、実はヤドカリの仲間。ちなみに、‘ミルクガニ’と呼ばれることもあり、身はミルクのような香りで美味しいらしい。そりゃ、こんなトゲトゲになるわ。ウニも、クリも、カニも、トゲトゲのものは美味しいもんなー。
ロングノーズバットフィッシュ(左)Long nose.But…fish.(鼻は長いけど、サカナ)?と思ったら「Longnose Batfish」でした。上から見ると、コウモリみたいに見えるからとか。魚類にも見えるし、両生類ぽくもあるし、どっちつかずのところもコウモリっぽい。
ちなみに泳ぐのが苦手という、魚としてどうなの!?という生態を持つ。でも、結構元気にぴょこぴょこ飛ぶようにして移動していたので、ちょっと安心した。海底の哲学者と名付けたくなるような、何やら思案しているような表情だが、多分何も考えていない。
まだ肌寒い季節にぴったりな、ファーのマフラー。・・・ではなく、1m以上ありそうな巨大なナマコ。
うぎゃああぁぁ!!ナマコは苦手である。幼少のころサイパンの海でナマコに驚き、転び、サンダルが抜け、サンゴで足を切る、という経験をしてトラウマになった。
うぎゃああぁぁ!!ナマコは苦手である。幼少のころサイパンの海でナマコに驚き、転び、サンダルが抜け、サンゴで足を切る、という経験をしてトラウマになった。
おのれナマコめ・・・。何もしてこないと分かっていても嫌だ。その見た目だけ(魚類には毒性もあるらしい)で敵を遠ざける。まさか、ナマコは非抵抗・非暴力を貫いたガンジー的な存在・・・?
ダイオウグソクムシ(左)とオオグソクムシ(右)。ネットでは「グソク」たんなどの愛称で親しまれているが、その大きさは‘グソクたん’なんて可愛いもんじゃない。やっぱり‘大王様’の風格が漂う。展示には『大王様からのひとこと』もあるので、心して読んでほしい。
こうして並べると大きさの差は歴然。なぜかダイオウグソクムシの近くに、一匹だけオオグソクムシがいてちょっと可愛かった。まさか大王に取り入ろうと・・・!?(左の写真、右下)
そして、予想通り裏側はエグイ。ちなみに、この子たちは展示の為に借りてきて数週間経つが、やっぱりエサを食べないらしい。
<適応能力ありすぎだ>
適応力があることは素晴らしいことだが、ここまで適応するか?逆に環境が変わったらどうするのか、ちょっと心配になってしまうくらいの適応っぷり。
パラダイス・スレッドフィン(左)目は退化してほとんど見えないらしく、長く伸びたアンテナで周りを探る。この水槽の前で、お上品なマダムたちが
マダムA「盲目っていうけど、どうやって盲目って分かったのかしら~?」
マダムB「アンテナを全部切り落としてみたんじゃな~い?」
マダムB「アンテナを全部切り落としてみたんじゃな~い?」
という会話をしていて、震えた。
ウミグモ(右)足だけ。脚だけ。内臓とか諸々が全て脚の中に入っているらしい。モールとか、針金みたい・・・。脚があれば移動出来るからそれで良いのか?いきものらしさ、より生きていくこと、を選んだ結果なのだろうか。
ハダカデバネズミ。衝撃のビジュアル。殆ど毛がないが、生まれたてではない。地中で生活するために毛、目が退化したのだ。それにしても、裸、出っ歯、ネズミ、悪口の寄せ集めが名前になってしまった可哀想なネズミである。
でも、本当に裸で出っ歯でネズミだから仕方ない。目を二重にして、歯の矯正をして、植毛でフサフサにしたらすごく可愛くなると思う。もはやハダカデバネズミじゃないけど。
へんないきものグッズも充実している。メンダコ可愛いよ、メンダコ。しかし、何といっても注目はダイオウグソクムシのぬいぐるみ。ほぼ実物大。かなりリアル。裏側も期待以上の仕上がり。
リュウグウノツカイ。元々常設展示されていたが、これも立派な‘へんないきもの’ということで、ここで展示されている。確かに、こいつも相当変だ。
人間から見たら‘へんないきもの’かもしれないけど、彼らは別に人間に可愛いとか、綺麗とか思われるために生きているんじゃない。ただ、生きて子孫を残すために‘へんな’見た目や、生態に進化しただけ。そんなふてぶてしくも、たくましい彼らの姿にちょっと憧れたりもする。
今回の展示は生物の多様性がテーマでもある。色んな生き物がいていい、色んな人がいていい。私も頑張ろう・・・。
いち‘へんないきもの’として、一生懸命に生きようと思った。
2014.03.23 文・写真 篠崎夏美