ファイア by ルブタン(3D)
東京・有楽町ヒューマントラストシネマ
エキシビジョンの前に、まずはこちらを鑑賞。
「クレイジーホース」は1951年に創立され、世界中の人々を虜にしているパリの老舗ナイトクラブだ。ナイトショーの最高峰であるクレイジーホースが80日間限定で上演した「FIRE」は、世界的シューズデザイナーのクリスチャン・ルブタンが演出、デイヴィッド・リンチが音楽を手掛けた。この伝説となったファッショナブル、かつ芸術的でエロティックなショーにあらゆる角度から迫った映画である。
FILLICO ファイアbyルブタン公開記念ジュエリーウォーター。中身は水だが、スワロフスキーの付いた豪華なボトル入り。
Fire By Louboutinオリジナルドリンク
クレイジー・チェリーをオーダー。チェリー×コーラ。コーラの暗闇から浮かんでくるのは、官能的で甘いチェリー味。
客層は男女比4:6といったところか?カップルで来ている人もいるが、女性の一人客が多め。クレイジーホースも半数以上が女性客だという。この映画は女性のためのヌードショーを歌っており、クリスチャン・ルブタンプロデュースということも前面に押し出されている。
元々、クリスチャン・ルブタンは、クレイジーホースにインスパイアされて、デザインを始めたのだという。10歳ごろからキャバレーや、レビューに出入りするうち、その華麗で妖しい世界にすっかり魅了されてしまった。
そんなダンサーフェチ、脚フェチ、靴フェチのルブタンによって作られたショーは、女性たちの美しさを最大限に引き出している。厳しい審査で選ばれた、完璧な身体のダンサー達、彼女たちの肉体をさらに輝かせるのは、ルブタンの靴だ。
官能、魔法、芸術、夢、非日常、毒、媚薬・・・。そんなキーワードが浮かんでくる。ヌードショーは男性のためのものというイメージがあるが、これは女性にとっても芸術作品である。映画開始直後から、トップレスの女性たちがずらりと並ぶが、いやらしさというより、整然とした美しさが前面に押し出されている。
・神よ、我等の素肌にご加護を
・ブードゥー
・官能のレッスン
・スプートニク
・レッグマニア
・マスターロイド
・スキャナー
・アップサイドダウン
・懺悔
・パープルアンダーグラウンド
・ファイナルファンタジー
・ウエストサイドクレイジー
(タイトルは実際のものと異なる可能性あり)
12の演目から構成されている。イギリス近衛兵、夜光塗料、SF、鏡など、演出も凝っている。もちろん、足元にはルブタンのハイヒール。まるでトゥシューズのようなものなど、靴を見ているだけでも飽きない。映像はほぼ、足から始まり、舐めるようなカメラワークで全身を映していく。が、圧倒的に靴と脚が主役の映画だった。
ダンサーたち体形も統一されており、動きのキレ、揃い方はなかなか見られるものではない。どうしたらそんなに素早く動けるのか、という場面でも全く騒々しさを感じない、まるで花びらが風に舞うような軽やかさである。 ロープで宙吊りになる、シルク・ド・ソレイユもかくやというほどのアクロバティックな演技もあった。ヌードショーということを忘れてしまう。実際のショーでは観られない角度や、距離でダンサーたちに迫っている。
小さなランジェリーさえ脱ぎ捨てれば、そこにあるのは身体の一部のような靴だけ。クリスチャン・ルブタンの靴作りは「服を脱がせる靴」がテーマになっているが、それを体現しているようなショーだった。あまりにも裸が画面いっぱいに溢れ、靴が身体の一部のようになっているので、服を着てルブタンの靴を履いている姿が想像出来なくなるほどだ。
ダンサー、演出、光、音響、パリのエンターテインメントの最高峰との評価も頷ける。全てが輝き、それらが一つになる眩暈がするほど官能的で、美しい、惹き込まれる世界があった。
東京・伊勢丹新宿店本館2階婦人靴プロモーションスペース
写真撮影は不可だったが、2階婦人靴売り場のプロモーションスペースに「クレイジーホース(Crazy Horse Paris)」の世界が表現されている。ルブタンのレッドソールを思わせる、真紅がとても印象的。タブレットではここでしか見られないクレイジーホースの舞台裏などの特典映像、デイヴィッド・リンチ(David Lynch)による特別音源も体験出来る。
また、クレイジーホースのダンサーになったようなセクシーな写真が撮れるフォトスポットもあり、撮影した写真を投稿するフォトコンテストが開催されている。
映画の写真パネルに合わせて、使われていたものと同じ靴や、似た雰囲気の靴が展示されているので、映画を振り返りながら見ると面白い。ただ、あそこまでに完璧な女性たちが履いて、さらにはあんなに素晴らしいダンスを披露しているのを見てしまうと、なかなかこれを履く勇気は出ないかもしれない・・・。
しかし、ルブタンの靴が女性、特に大人の女性の美しさを引き立ててくれる‘魔法の靴’であることに変わりはない。
2013.12.25 文・写真 篠崎夏美