東京・銀座十字屋ホール9階
「紙わざ大賞」とは・・・製紙メーカーの特種東海製紙株式会社が主催する、全国公募のペーパーアートのコンペティション。「紙」を使って、自由な発想で創作することがテーマになっている。紙という素材を追求し、紙の良さを広く知ってもらうために、1991年から開催されている。プロのアーティスト、デザイナー、アマチュア、学生、主婦のものまで、幅広い作品が集まる。
昔に比べて「紙」に触れることが少なくなった。新聞・雑誌の代わりにWEBサイト、手紙・葉書の代わりにメールやSNS。ましてや、紙を使って何かを作るなんて何十年やっていないだろう。このイベントでは、様々な「紙」を使った作品が展示されている。
会場入り口。ポスターも凹凸があったり、光沢があったり、かなり凝った作り。
会場内。全入賞作品85点が並んでいる。
これらの作品は接着材、骨組み以外は、全て紙を使っているのだという。それを知っても「これが紙!?」と思わず驚いてしまう作品ばかりだった。正直、ペーパークラフトのような、いかにも紙で出来ている作品が多いのかと思っていたが、その予想はすぐに打ち砕かれた。
まるで石膏か粘土に見える。カタルーニャ地方の「人間の塔」だろうか。
仮装をテーマにした作品。何人かいるので、戦隊もののようにも見えた。
紙のウェディングドレス。紙の可能性を感じる。胸元のレースも綺麗。
電線の切り絵
まるで油絵のようだが、これも紙。壁につかったら良い雰囲気になりそう。
手回し式の絵日記をモチーフにした作品。夏休みの工作を思い出す。
奥「鬼ヶ島」 手前「夢みるほうづき」
中央「秘密の花園」扉を開くと花園が現れる。こうして実際に触れられるのも楽しい。
個人的に一番好きな作品。折り花を器に入れてアロマオイルを垂らす。
照明になっているらしいので、灯りをつけたら光と香りも楽しめるだろう。
日本の伝統文化、水引。そういえば、これも紙で作られている。最近は色々なデザインがあって面白い。海外などでも喜ばれると思う。
一見油絵のようだが、小さな人型の紙が集まって出来ている。ものすごいパワーを感じた。
数センチの小さなパーツが集まって出来ている。そんな小さなものを、こんなに正確に積み上げるとは、発想、制作に加えて、その集中力も‘神業'である。
準大賞「風の肖像」 扇風機の胸像のようでもあり、風そのものを表現している。
「Let It Be玉」面白いタイトルだ。煙突のような穴からビー玉を転がす。ビー玉がどこに行くか分からない、「なすがままに」。子供に戻ったような気持ちで、真剣にビー玉の行方を目で追ってしまう。
リアルなリュウグウノツカイと、ダイオウイカ。
大賞「海にとける月」 トイレットペーパーで出来たクラゲ。シンプルだけれど、一番意外性と独創性がある。作ろうと思えば今日からトイレで作れるかもしれない、という身近さも面白い。
紙の肖像画、紙の服。
賞状。枠や、文字に影が出来ていて、立体になっていることが分かる。
本を読んでいたら「想像の翼」が生えてきたような、ロマンティックな作品。
クリスマスらしい可愛い作品も。
紙の兜だが、かなり強そう。
トランプが立体的に表現されている。細かさ、奥行きが素晴らしい。
左:平和紙業賞「八重桜」 右:竹尾賞「京の見世の間」
アンケートに答えたら、レターセットを貰えた。写真では分かりにくいが、凹凸で柄が付いている。
どれも紙という素材を追求した“紙わざ”ばかり。紙が持つ特徴、魅力を上手く引き出していた。こんな使い方もあるのか、こんな表現も出来るのか、と驚き、関心した。
加工しやすく、身近な紙。人類の文明は紙と共に発展してきたとも言える。ペーパーレス化が叫ばれているが、まだまだ紙の果たす役割は大きいし、これからも私たちの生活に欠かすことは出来ないだろう。
知ったつもりになっていた‘紙’の新たな可能性、秘めたるポテンシャルを見せつけられたような展示であった。
2013.12.13 文・写真 篠崎夏美