東京・早稲田大学 坪内博士記念演劇博物館 六世中村歌右衛門記念 特別展示室
新耽奇会は、江戸時代の曲亭馬琴らによる「耽奇会」にならって行われたものである。参加者がそれぞれ自分の興味をそそられた、珍品・奇物を持寄って論評し合うというもの。昭和3年5月から、昭和11年5月までの間、断続的に12回・8年間にわたって行われた。
今回のイベントでは演劇博物館に所蔵されている、三村竹清が出品物を写生した記録帖『新耽奇漫録』が初公開される。また、数十万点以上にも及ぶ演劇博物館所蔵品からも奇物が紹介されるとのこと。
早稲田のシンボル大隈講堂
坪内逍遥銅像。右手を差し出しているが、この手と握手をすると早稲田大学に合格するというジンクスがあるらしい。右手が変色している。
味のある看板。新耽奇会の立て看板が群を抜いて怪しい。しかし、とても雰囲気が出ていてよろしい。折しもこの日は雨、ますます怪しくてよろしい。
この他にもいくつか展示イベントが行われていた
会場入り口に出品目録が置いてあった。中には展示品や、新耽奇会出席メンバーの説明なども細かく書いてあるので、ぜひ読みながら展示を見るとよいだろう。
小さな展示室には誰もおらず、柱時計の音が響く。薄暗い部屋でこうした不思議な品々に囲まれて、時計の音を聞いているとタイムスリップでもしたかのような気分になる。
曲亭馬琴が使っていた陶器で出来た枕、招き猫、世界地図、月の糞(昔、ある村で秋になると夜毎降ってきたらしい。長さ10cmくらいで、巻貝のようにねじれていて薄白い色をしている。実際は貝の化石らしい)、錦絵、葉巻のラベルで作られた「寿」字のついたて、瓦版「人魚図」、お岩さんの人形、骸骨の操り人形、こんにゃく石(Moving Stone) などなど不思議なものばかり。
こんにゃく石は触ることも出来た。見た目と手触りは石のようだが、端を持つと動く不思議な石。一路真輝さん提供「ベルサイユのばら オスカルの衣装」まで展示されていた。新耽奇漫録の一部をiPadで見られるコーナーもある。
古今東西の、不思議なもの、珍しい物、貴重なものが集められていてる。雑多なような、学術的なような、怪しいような・・・。小学生の男の子たちが自分たちの‘宝物’を持ち寄って、誰かの家で自慢大会をしているような、そんな印象も受けた。実際には、今のように情報やモノが手に入らなかった時代、知識人たちがお互いの経験、学問を生かして、好奇心と学問的興味を満たす場所だったのだろう。
「奇」を愉しむ、知的な集まり「新耽奇会」はとても魅力的だ。現在でも同じようなことをしたらさぞ楽しいだろう。彼らが‘新’耽奇会をやりたくなったのも頷ける。好古家、好事家たちに交じって、自分も「新耽奇会」を体験しているような気分を味わえた。
2013.10.25 文・写真 篠崎夏美