東京・SHISEIDO GALLERY
スペイン絵画の巨匠、ディエゴ・ベラスケスの名画「ラス・メニーナス」をテーマにした、森村泰昌氏の写真作品が展示されています。森村さんは、セルフポートレートによって、自らを世界的に有名な絵画、有名人などになってしまうというアートで、世界的に知られているアーティストです。
ベラスケスのシルエット
森村さんは、「ラス・メニーナス」に出てくる、11人の登場人物になり、絵画を再現しています。さらに新たな物語を作って、全8幕の一人芝居として表現しています。
プロローグ
第一幕
第二幕
第三幕
第四幕
第五幕
第六幕
第七幕
第八幕
何とも不思議な作品たち・・・。
いつの間にか、絵の中に森村さんが・・・。画家、王と王妃は消えています。
この人たち、いつの間に絵から出てきたんだろう・・・。そして、私はいつの間に彼女たちの後ろに来てしまったんだろう・・・。
マリア・バルボラと、マルゲリータ王女の衣装とかつらが展示されています。敢えて、彼女たちを後ろから見せることで、絵の中に入りこんでしまったかのような錯覚を感じます。これは実際に作品の前に立って見ていただくと、その不思議さが良く分かるでしょう。
登場人物それぞれの写真も。
画家:ディエゴ・ベラスケス
宮廷道化師 小人:マリア・バルボラ
宮廷道化師 小人:ニコラ・ペルトサート
女官:イサベル・デ・ヴェラスコ
王女:マルゲリータ
女官:マリア・アグスティナ・サルミエント・デ・ソトマイヨール
王妃:マリアナ
国王:フェリペ4世
絵の中ではぼんやりとして、顔が良くわからないので、ラス・メニーナス以外の肖像画も参考にして作成されたようです。これを全部一人の人がやっているというのもすごいですが、かなり精巧に作られた衣装、かつら、その人に‘なりきる’メイクの完成度に驚き。
最近、メイクで有名人、アイドルそっくりの顔になってしまうという、ものまねメイクが話題になっていましたが、森村作品の場合、性別、年齢、国籍まで変えてしまうというもの。その集大成とも言える展覧会です。
絵の中のドア、鏡などの効果で、作品中の登場人物、そして外の鑑賞者が逆転。絵の中の人たちも、いつの間にか場所が変わっていたり、いなくなっていたり・・・。ギャラリーで作品を見ている自分、プラド美術館で「ラス・メニーナス」を見ている森村さん、モデルを見ているベラスケス、鏡の中の国王夫妻、など、様々な人の立ち位置と、視線が変化し、交錯します。
写真の額のガラスが反射し、まるで合わせ鏡のような役割を果たし、どこまでも不思議な世界が続きます。自分がどこを見ているか分からないどころか、一瞬どこにいるかも分からなくなるような、奇妙さと恐怖を感じました。