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驚きの小ささ! 指先サイズの日常を体感「田中智 ミニチュアワールド『Face to Face もっとそばに』」

アイコン拡大しても本物そっくり。精巧で美味しそうなミニチュアたち

2018/05/01(公開:2018/05/01)
パリパリとしたデニッシュの食感に、夏の蚊取り線香の匂い、お弁当箱に全てのおかずを詰めた達成感、そしておしゃれな店を訪れた時の胸のときめき……。







○本物よりも精巧!?  1/12スケールのお菓子や雑貨たち 

 何気ない日々のシアワセな瞬間を思い起こす、多数のミニチュアアート。そんな作品に出会える、アーティスト・田中智氏の個展「田中智 ミニチュアワールド『Face to Face もっとそばに』」が銀座の「ポーラ ミュージアム アネックス」にて5月27日(日)まで開催されている。

初日にも関わらず、開場する前からビルのエレベーター前に長蛇の列ができるほどの人気である。早速、会場内は作品を真剣に見つめる人で賑わいをみせていた。





会場内にはこれまで作られた約80点の作品がテーマごとに分けられて並んでいる。一般的な展示と比べて、子どもでも上から覗き込めるように展示の台は低めの位置に設置されており、LDE照明を用いた明るい空間の中で、作品の細部までじっくり観察できる。

誰もが驚くのは作品を拡大しても、全く違和感がないほど精巧に作り込まれていることだろう。おしゃれなセレクトショップやスイーツを模した作品の人気が高いようで、あちこちから「かわいい」「美味しそう」などの感想が聞こえてくる。





さらに会場の一角には、来場者が作品のサイズを実感できるスポットもある。会場全体は撮影も可能でSNSでのシェアも歓迎とのこと。はじめて田中氏の作品を知って興味を持った方も存分に楽しめる工夫でいっぱいだ。





◯作品制作のきっかけはドールハウス

意外にも田中氏のファンはミニチュアマニアばかりでなく、TwitterなどのSNSを通じて純粋に作品のビジュアルイメージにひかれ、作品のファンになったという人が多いという。

田中氏はトラックの運転手から作家に転身した、異色の経歴の持ち主でもある。ある日、ドールハウスを購入した際に欲しいミニチュアの小物が売っていなかったため、自作したことがきっかけだという。

作り方などを調べるうちに、ミニチュア作りなどで生計を立てる人がいることを知って本格的に制作を始めた。美大には通わなかったが水彩画を描いていたそうで、対象物をそっくり真似て描いていた経験が生かされているそうだ。





ミニチュアは、ドールハウスの中に置くための小物として作られてきた歴史がある。ドールハウスとは実物の12分の1スケールの家の模型。ここ10年ほどでさまざまな作家がバラエティに富んだ作品を生み出したことにより、アートとして市民権を獲得しつつある。

田中氏が作品制作の工程上で最も大切にしているのは、資料の選定と素材をどう作るか構想する準備段階だそう。樹脂粘土、プラスチック、紙、木など多くの選択肢の中から材料に最も適切なものをピックアップして時には混合して使用する。

その工程を経た後に制作にかかる時間は通常の小物なら一週間、ドールハウスは数ヶ月、もっと大きなものでは一年程とのこと。今回の個展では田中氏が実際に使っている様子や、制作過程についても知ることができる。





あえて自分でテーマを決めず、依頼やほかの人からの要望でテーマを決めることが多いという田中氏。それには作者の主観が入らないようにしたいという配慮もあるそう。

田中氏の作品は女性からの人気が高いが、ジオラマ的魅力から男性のファンも少なからずいるという話も伺った。また本人が主催するミニチュア教室の生徒は、10代から70代までと幅広い。

本物そっくりに複製された作品が普遍的な美を放つのは、田中氏の徹底的なプロフェッショナル精神によるものと言っても過言ではないだろう。



◯それぞれ違った感想を持って当たり前 

今回展示されている作品は、さまざまなショップやパンケーキなどのスイーツ、雑貨など西洋的なものが目立つ一方で、作り置きのおかず、コンビニのパン、そしてPCなど電子機器などの作品も。



そのほか、おせち料理や雛人形、端午の節句の鎧兜、お寿司など、古くから脈々と受け継がれる日本文化の軌跡を辿れるモチーフも少なくない。その確かな制作技術から海外のミニチュアファンからの評価も非常に高く、銀座という土地柄もあってか会場内には外国人観光客の姿も見られた。





田中氏の作品は複製ではあるが量産ではない。その精巧な作品たちは手作業だからこそ産み出せたし、多岐に渡る作品ジャンルを横断できたのもその技術力があってこそである。

これまで田中氏が主催するブランド「nunu’s house」から、3冊の書籍が出版されているが、これらも自ら出版社へ企画を持ち込んだ結果なのだという。教室も主催するなど忙しい中で、あえて他者との関わりの多い企画を考えるのは「自分一人ではできないことをしたい」という想いがあるから。

芸術・文化の一大拠点地と言える銀座で個展を開くことへの意気込みも強く、初めて作品を見た人にもミニチュアアートを知ってもらう機会になればと考えているとのこと。



また、今回は特別にPOLAのショップカウンターもミニチュアで再現。写真だけ見ると本当のブースのようだが、12分の1サイズのミニチュアだ。担当者からたくさんの資料を受け取り完成させたという。まさに、一人では絶対にできない見事な仕掛けのひとつ。同じビルの一階にはカウンターの現物があるので要チェックである。





展示のタイトルの「Face to Face もっとそばに」という言葉には、作品を見た人それぞれ一人ひとりに視点・感じ方の違いがあるという意味も込められているのだとか。ぜひ実際に足を運んで、自分自身の目で『本当の』ミニチュアワールドを確かめていただきたい。



◆会期
2018年4月27(金)~5月27日(日)
※会期中無休 / 入場無料

◆開館時間
11:00~20:00 (入場は19:30まで) 

◆会場
ポーラ ミュージアム アネックス(東京都中央区銀座1-7-7 ポーラ銀座ビル3階)


取材/丹野加奈子(イベニア)  









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