浅草橋・TODAYSGALLERYSTUDIOにて、伴田良輔氏の写真展「おしりとひかがみ展」が開催中。
ちなみに『膕(ひかがみ)』とは、膝の裏にあるくぼみのこと。実はここにフェチを感じる人が一定数いるらしい……。
◆おしりとひかがみだらけの会場
開催初日に会場にお邪魔すると、そこにはたくさんの“下半身”が並んでいた。 “おしりとひかがみ”だらけの異空間。お尻とひかがみがテーマなので、当然ながらモデルは全員後ろを向いた姿で、顔も見えない。
作品は250点以上。伴田氏がこれまで撮影した作品数は約3万枚の中から厳選した作品に加え、未公開ショット、新作まで含めた作品を展示している。
◆前代未聞の写真展。開催の経緯は?
主催企画のクリエイティブディレクターの浅岡さんに話を聞いた。
―― 開催の経緯を教えてください
うちのギャラリーでは美少女系アートやふともも写真の世界展など、アートの可能性に注目してきたところが多くありました。今回たまたま、写真家の伴田さんと知り合いの編集者の方がいらっしゃり、弊社から依頼致しました。
元々はおしりでの展示企画のご依頼だったのですが、「ひかがみ」というパーツがあることも知りまして……。
―― なぜ「おしり」と「ひかがみ」というパーツに着目したのでしょうか?
フェティシズムってすごく解釈が分かれるところでもあり、見る人によって捉え方も違います。また、写真家さんによってはこの言葉で括られることを嫌う人もいる。そういった不安定な要素こそが、アートの可能性なのかなと思い、着目しました。
―― 展覧会の見どころはどこでしょうか?
なんといっても、展示会の名のごとく、おしりとひかがみだけのパラレルワールドといった展示内容です。とにかくご来場頂き、目で、肌で、心で感じていただきたいです。
さらには、会場内に併設された「ひかがみの間」では、今まで写真家・伴田良輔氏が撮り続けてきたひかがみを、モニタを通して見られる仕掛けも準備しております。
◆フェティシズム写真の第一人者、伴田氏にインタビュー
作者である伴田良輔さんにも話を聞くことができた。
―― 「ひかがみ」を撮り始めたきっかけは?
20年前からおっぱいを撮っていて、ひかかみを撮影し始めたのは4、5年前かな。ある講演会で「ひかがみは撮っていますか?」と聞かれたの。挑戦を受けたわけだね(笑)。脚の裏部分には興味があったし、じゃあ撮ってみようとなった。そしたらハマってしまった。
―― ひかがみのどんなところが魅力ですか?
スカートなどの裾から普段見えている部分なんだけど、みんな気にしているようで気にしていない。女性自身も、お尻と同じでちゃんと見たことがある人はいないんじゃないかな。だからこそ「自分のを見てみたい」と撮影を希望する人もいますよ。
魅力は一つとして同じものがないところ。筋肉や脂肪の付き方によって、曲線や陰影が一人ひとり違う。一度撮影した人は忘れられないくらい、印象に残る。
そして、いい意味で繊細さや弱さが見えるところ。身体が疲れたときに “膝が笑う”っていうけど、ひかがみに“えくぼ”みたいなものが出る人もいますよ。
―― 撮影で気を付けていることはありますか?
モデルとの信頼関係は欠かせないね。これまでの作品を見てもらったり、その人の話を聞いたり。好きなファッションなどを取り入れることもある。
撮影は自然光の中でやるんだけど、アトリエの窓から入ってきた光に照らされて、すごく神々しいものが撮れることがある。まさに“神がかり”的なね。
光の加減によっては、身体が丘陵のように見える。常々、自然と人体はパラレルだと思っている。果物が妙にセクシーに見えて、人の身体に見えるとか、その逆もあるでしょ?
僕は「ネイチャー(自然)」も「ネーチャン(女性)」も好きなんだけど、共通するものが多いよね。「ネイチャー」の語源は「ネーチャン」じゃないかと思う(笑)。
―― とてもお尻がきれいに見えるポーズですね
撮影するときはうつぶせになって、お尻を上げてもらうんだけど、あまり腰を上げ過ぎるとエロくなってしまうので、角度に気を付けている。きれいなS字、曲線が出る人もいれば、猫背になってしまう人もいて、これも人それぞれ。
たまにポーズのアドバイスをすることもあるんだけど、スッと腰が上がって姿勢までよくなって帰る人がいるよ。
それからひかがみをマッサージすると、かなりリラックス効果があることが分かったので、今度「ひかがみセラピー」でもやろうかな(笑)。
―― 「良いひかがみ」というのはあるのでしょうか?
おっぱいもお尻もそうだけど、いい悪いはない。その人が今まで生きてきた積み重ねがそこにあるわけで、それが美しい。単に太い細い、長い短いじゃなくて、陰影がいいんです。まさに『陰翳礼讃』。
今回参加してもらったモデルさんは20代から50代まで幅広い。50代の人も、絶対どれか分からないと思う。クイズにしたいくらい!
―― 今後撮影したい身体のパーツは?
ひじの内側のくぼみ、腕の「ひかがみ」とも言えるところも良いと思う。でも、まだまだひかがみを撮り切っていない。今までは寝そべっていたり、脚を曲げたりしたものが多かったけど、はつらつとした雰囲気のモノを撮りたくて、今もショートパンツやスカートを履いたものを撮っているよ。
◆実際のモデルから型取りした「おしり」も
伴田さんが初めてお尻を撮影したモデルから型を取ったという石膏像は、一点もの。お尻に手をそえるのが伴田氏のこだわり。そうすることによって、写真や石膏でありながら柔らかさが表現できるという。
会場内で特に目を引くのは横幅180㎝という、大きなプリント作品。この大きさのものが3点ある。中にはほぼ実物大か、それ以上のものも。
近寄って見るとかなり細かい部分まで見て取れる。人のひかがみをこんなにまじまじと見ることはないので、不思議な気分だ。体温まで伝わってきそうなリアルさである。本来はモノクロが多い伴田氏の作品をカラーで多く見られることも特徴だ。
無数のおしりとひかがみが集まって作られたモザイクアートも展示されていた。離れて見ると、巨大なひかがみが現れる。
会場限定アイテムとして、クリアファイル、ポストカードや缶バッチなどが販売されていた。お気に入りのおしりやひかがみを見つけたら、連れて帰ろう。
また、会場内は自由に撮影ができ、撮った写真はSNSに投稿できる。SNSで『#おしりとひかがみ展』を検索してみると、多くの人たちがフェティシズムアートを楽しんでいることがうかがえる。
いろいろな角度から撮影した写真を見ていると、一瞬、身体のどの部分か分からなくなる不思議な感覚に陥る。脚なのにお尻に見えたり、他の身体の部分に見えたり。ちょっとしたトリックアートのようでもある。
美しく危険な曲線たち。しかし、煽情的とか、イヤらしい、といった印象は受けなかった。伴田氏も語ったように、あくまでも自然な、人体のパーツが持つ美しさがそこにはあった。そして、思わず触りたくなってしまうくらい、柔らかそうなおしりとひかがみは、見ているだけで癒されるのだ。
取材/篠崎夏美
「おしりとひかがみ展」開催概要
<開催期間>
2016年9月2日(金)~9月25日(日)11:00~19:00
<休館日>
月曜日 ※9月19日(月・祝)は開館
<会場>
TODAYSGALLERYSTUDIO
(東京都台東区浅草橋5-27-6 5F)
<入場料>
500円/3歳以下は入場無料