機械といえば、普通は「人間にとって役にたつもの」、「社会的意義のあるもの」を想像するだろう。しかし、ここで競い合われるのは、機械(メカ)の『頭の悪さ』。
日々アタマの悪いマシンを作り続ける、世界トップ(ワースト?)レベルの作家6人による作品発表会が、お台場カルチャーカルチャーで開催された。実用性もないし、社会的意義も一切ない。そんなメカのオンパレードである。
この日の出演作家は、以下の通り。
・石川大樹さん(ヘボコン主催・デイリーポータルZ編集)
・爲房新太朗さん(デイリーポータルZライター)
・てらおか現象さん(マンガ家、Fabcrossライター) ※写真NGということでモザイク
・藤原麻里菜さん(Youtuber)
・マンスーンさん(ハイエナズクラブ、オモコロ等ライター)
・森翔太さん(パフォーマー、映像作家)
司会はfabcross・越智岳人さん。
◆無駄に技術はすごいけど、いらないメカが続々
特に印象に残ったメカを紹介しよう。
・しょうゆかけすぎ機(石川さん)
「これはデバイスと言っていいんでしょうか?」という司会の言葉に、「電気が通っていればデバイス」と断言する石川さん。
・麦茶とめんつゆを入れ替える機械(石川さん)
ポンプで麦茶を吸いあげ、めんつゆに入れ替える機械。嫌がらせ以外の何物でもない。
・自動でFacebookの友達申請をする装置(爲房さん)
ルーレットを回して、止まったところの相手にどんどん友達申請をしてしまうという、恐怖のマシンだ。
・黒ひげ危機一髪を救う機械(爲房さん)
ナイフで刺されて飛び出した黒ひげを、両サイドのスポンジが優しくキャッチ。
・SDカード仏像(てらおかさん)
中古のSDカードをヤフオクで買い、復元ソフトで勝手に復元させる「記憶メディアの墓荒らし」(客の一部がドン引き)。実際に復元してみたところ、「北海道の大学生が教育実習で母校にいく、みたいな幸せそうな写真が出てきました」とのこと。
意外にも、エロ系の画像はほとんどなかったらしい。SDカードを成仏させるため、樹脂の中にとじこめた仏像を完成させ、当日1万円で販売していた。
また、メカではないが、「ラッセンからイルカを消す」というてらおかさんの作品が登場。美しい風景だけがちゃんと残っている。出演者も「すごくいい! この絵欲しい!」と絶賛。
・パピコを一人で食べられるマウント(藤原さん)
藤原さん「パピコって、2人いる前提で作られているじゃないですか。それが容認されているこの社会が許せないんですよ」
・ペッパー君(マンスーンさん)
また、なんとか自作でペッパーくんを作れないか、と思い作成したという。白い身体につぶらな目。胸には「テーブルコショー」の文字。たしかに、“ペッパー”くんである。
既に一部では有名な「仕込みiPhone」の実演も。制作者の森さん曰く、長袖でないと隠せないので、夏は不向きとのこと。
その他、のりたまのふりかけ部分とのりを仕分けるメカ、「いっせーのせ!」ゲームの相手をしてくれるメカ、お菓子(ハーベストやアポロチョコなど)のギザギザをギヤに見立てるメカ、全自動だーれだマシーン、歩くたびにおっぱいが大きくなる装置、好きなアニメキャラをペロペロできるマシンなどが紹介された。
◆「ファッション」をテーマにした新作発表会は、問題作ぞろい?
第2部は「ファッション」をテーマにした新作発表タイム。ゲストコメンテーターとして、きゅんくん(ロボティクス・ファッション・クリエイター)が登場した。
・撃てるメガネ(石川さん)
頭の悪い人がなりたがる職業、1位はスナイパー? 理由は「なんかかっこいいから」。つまりファッション感覚。しかし、スナイパーになると捕まる。そこで考えたのが、銃を使わずに人を殺せる「撃てるメガネ」。実際に弾を撃つわけではなく、メガネ自体が発射するのだ。
ここで衝撃の事実が。なんとアイディアが明和電機と丸カブリしていた! しかも発表日まで同じという偶然。
石川さん「僕は1カ月前から作っていた。明和電機さんはこの時点でまだ完成していない。だから僕の作品です!」
・ウェアラブル回転イカ一夜干しマシン(爲房さん)
イカを回転させて一夜干しにするマシンを身に着けたいと作ったそう。フラフープにイカをつけて回す。ファッションの既成概念を打ち破る作品だ。
・コアラのマーチの絵柄を消すマシン(てらおかさん)
「僕はそもそもファッションに興味がない。なので、ファッションを消そうと思いました」
湿ったスポンジを回転させ絵柄を溶かしてなじませることで、ファッション(コアラの服)を消す。「完全にファッションを否定してますね」 「さようなら…ファッション…」
最終的にファッション(服)どころか、コアラまでキレイに消えてしまった。会場にロッテの関係者がいないことを祈る。
・全自動ハンカチ落としマシン(藤原さん)
モニターを確認し、後ろからイケメンが来たらハンカチを落とす。「機能的」、「これカブっている人に声かけづらい」など、賛否両論。本人曰く「原宿とか歩いたらカッコよくないですか? 実際には誰にも声かけられなかったけど」とのこと。
・ドキドキあほ毛マシーン(マンスーンさん)
アニメや漫画でよく見かける、ぴょんと立った毛束。心拍センサーと連動し、ドキドキすれば動く仕組みだ。
きゅんくん「コスプレっぽいし、女の子はいいかもしれない。2次元と3次元の壁をぶっ壊してますね」
マンスーンさん「きゅんくんに褒められて、ドキドキしてます」
・ウェアラブル風車服(森さん)
扇風機で服についた風車を回す。
司会「アングラ劇団みたいですね」
きゅんくん「モーターを使ってない風車、ってのが良いですね」
森さん「そう、みんな電気に頼り過ぎですよ」
全員「いや、一番電気使ってるじゃないですか!(扇風機で)」
さらに大掛かりな一人紙吹雪マシーンも登場し、背中のマシンから紙吹雪をまき散らしていた。
オススメの工作材料を発表しあうコーナーでは、ステンレスステー、塩ビパイプ、収縮チューブ、ギヤードモーター、ホットボンド等が紹介された。
てらおかさん「制作が終わったとき、いつも思うんですよ。結局またホットボンドに助けられたな、って」
石川さん「ネジは、穴をあければなんでも止められるから良い」
森さん「段ボールがオススメです。落ちてるんですよ。あと、タダなんで」
物販コーナーにも多種多様な「頭の悪い」商品が並んでいた。
いまだかつて、これほど人類にとって役に立たない機械があっただろうか? この上なく無駄なクリエイティビティーのオンパレード。役に立たないメカにバリューを見いだす。それこそが、これからの時代を生きる我々にとって必要な価値観ではないだろうか?
最後に、このイベントを一言で言い表している藤原さんの言葉を紹介したい。
「いらなーい! でもすごーい!」
取材/村中貴士