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風船で初音ミク、とうらぶキャラ、ダイオウグソクムシまで! バルーンアートで様々なキャラクーを作る『痛バルーンアーティスト』ももさんにインタビュー。

アイコン痛車ならぬ、痛バルーンの魅力とは?

2016/02/09(公開:2015/06/25)

漫画・アニメ・ゲームなどに関連するキャラクターなどを塗装したり、ステッカーを貼ったりして装飾した「痛車」。「痛○○」のカテゴリーは、PC、スマホ、ネイルまで様々なジャンルにまで広がりを見せている。

痛バルーンアーティスト・ももさんは、そんな痛○○シリーズを独自にバルーンアートで再現した「痛バル―ン」を作っている。

 

痛バルーンは、二次元・サブカルチャーのキャラクターなどを風船で再現・制作したもの。ネットでは自分が好きなキャラクター(主に異性)を“俺の嫁”とする文化があり、その“嫁”を風船で作ったものを「空気嫁」と呼ぶことがある。そのため、主催する「もも痛バルーンすたじお」のキャッチコピーは『あなたの空気嫁、つくります』にしたという。

 


東京都庁認定資格『ヘブンアーティスト』の資格を持ち、MC・大道芸人として活動しているパフォーマーのももさん。これまで、百貨店をはじめとした商業施設のバルーン装飾、アーティスト・アイドルライブのステージ装飾、空間演出・プロモーション、結婚式やライブへのギフトや花輪を制作してきた。





2015年から痛バルーンを制作し、オタクイベントやアニメフェア、 クールジャパン・インバウンドのキャンペーン、PRイベントなども手掛けている。15万人が来場した「ニコニコ超会議」ではブース出展のほか、装飾も行った。


また、6月には初めての個展「痛車ならぬ!? 痛バルーン展~ダイオグソクムシ・ウェディング~」を開催。

深海生物の中でも圧倒的な人気を誇る、ダイオオグソクムシをモチーフにした展覧会。風船で作られたリアルな巨大ダイオウグソクムシがあちこちに出現し、ダイオウグソクムシ・ウェディングドレス、擬人化「グソクちゃん」のイラストなども展示された。














――バルーンアートの魅力はどんなところでしょうか?

風船って、幸せで楽しいイメージがありますし、子供からお年寄りまでどんな人でも好きですよね。割れるのが怖いという人もいますが、貰ったら嬉しいと思います。


――バルーンアートを始めたのはいつごろからですか?

風船を触り始めたのは大学に入ってからです。大道芸サークルに入って、人前でパフォーマンスをする中でバルーンアートをするようになりました。

  

―― ちなみにカラーコーンを使ったパフォーマンスもされているのですよね?

これも大道芸サークルで始めました。頭や顎に何かをのせるパフォーマンスがあるのですが、カラーコーンを載せたら面白いかな? と思って載せてみました。1つのカラーコーンの穴に、2つカラーコーンを差して……と扇状にどんどん重ねていきます。最初は4個くらいだったのですが、今は7個顎に載せられるようになりました。

1つ1キロあるのですが、自分で道具を持って移動するので腕がムキムキになってしまいました! タンクトップは着られないですね~。たまたま駅で向かい側のホームにいた友達に写真を撮られて「これ、あなただよね?」って聞かれたこともあります。カラーコーンを大量に持って歩いている女の子なんて、私くらいです(笑)

東京都庁認定資格『ヘブンアーティスト』の資格もいただきました。知事さんは何を考えてるんだろ、ってちょっと思いましたね(笑) 

でも、私のパフォーマンスを見て、笑顔になってくれたり、「元気がでたよ」って言ってもらえたりするのがとても励みになります。生きていたら色々なことがあると思いますが、一瞬でもカラーコーンのパフォーマンスやバルーンアートで気持ちが軽くなってくれたらいいな、というのを心掛けています。

 

―― 痛バルーンを作り始めたきっかけは?

バルーンアートを始めたころは一本の風船を使って、犬や花などよく見かけるものを作っていました。でも、常々もっと色々なことができるのでは? と感じていました。それまで絵画は学んでいたものの立体は初めてだったんです。三次元で表現が出来るのは面白かったのですが、なかなかうまくいかず悔しかったですね。自分の部屋でも、夜通し風船をひねって練習していました。

最初は似顔絵バルーンを作っていました。他の方はシールを貼って顔を描いていたのですが、私は絵が描けるので、ある時似顔絵を描いてみたらとても喜ばれて、バルーンでここまで出来るんだと気づきました。個人的にアニメ、マンガが好きなので、デフォルメして可愛くしたら二次元でも出来るのでは? と作ってみたら、とても反響が良かったのでこれは喜んでもらえると思いました。


―― これまでにどれくらいの数の作品を作ったか覚えていますか?

練習も含めるとかなりの数を作っているので、ちょっと覚えていないですね……。 

でも金額にすると、人生で一番お金をかけているものだと思います。企業に依頼されて作ったものもありますが、そういうものも入れたら総額200万円くらいになるのではないかと。年頃の女の子だったらコスメや服・バックにお金をかけると思うんですけど(笑)

また、風船は消耗品なのでどんどん買い足す必要がありますし、ゴムが劣化してしまって古いものは膨らますと割れてしまうこともあるので、管理が大変ですね。


―― 特に印象に残っている作品や、仕事があれば教えてください。

ニコニコ超会議で巨大なフィギュアを作ったことでしょうか。初音ミクなどのキャラクターの他にも、動植物など15点ほど作品を作りました。業者さんたちと同じくらい早く会場入りして、何もまだないところで3日間もくもくと作品を作りました。2人だけで作業したのでかなり大変でしたね……。

アーチにニコニコテレビちゃん(ニコニコ動画のマスコットキャラクター)を50個くらいつけたのですが、しばらくテレビちゃんは見たくなかったです(笑)


―― 制作のコツ、ポイントなどはありますか?

デフォルメのバランスですね。元々日本画を学んでいたのですが、バルーンアートは日本画に似ているといつも思います。日本画は下絵を多く描き、たくさんの線の中から自分が一番気に入った線を掘り起します。デフォルメするイメージなのですが、自分の頭の中でフィルタリングをして、実際の形とは違っても、対象を一番美しく見せる線を選びます。

風船で表現できるものには限界があります。その中でデフォルメをしつつ、モチーフの特徴を生かしつつ、一番可愛く見えるところを探っていく、というのが日本画と共通していますし、バルーンアートの面白いところでもありますね。

また、私の作品は骨組みがしっかりしていると言われることが多いです。ほとんどの方は外側から作っていくのですが、造形美術を習っていたこともあり『ここに骨がある、ここに血管が通っている』など、中身をしっかり詰めるというか、解剖学的な視点で作品を作ることにこだわっています。

 

―― 制作の過程と所要時間を教えてください。

下絵を描いて、色や形を決めて材料を用意したら、土台から一気に作ります。片手で持てるサイズだと、所要時間は5分から10分くらいでしょうか。人形になると30分位ですね。また、一点ものを作ることが多いので、顔にこだわると1時間くらいかかることもあります。


 ―― 顔はどのように描いているのでしょうか? 

顔は手描きにこだわってマジックで書いています。でも、いつも怖いことがあって……。風船はゴムなので、マジックのアルコールが揮発するときに割れてしまうことがあるんです。顔は最後に描くのですが、そのときに割れてしまって一からやり直すこともあります。命を吹き込むような気持で描いていますね。

あまり塗り重ねると割れてしまうこともあるので、そこも緊張します。重ならないように隙間を埋めるのですが、こういうところにも日本画の繊細な筆づかいの技術が生きているかもしれませんね(笑)

 

―― どれくらいの数のパーツ(バルーン)が使われているのですか?

例えば初音ミクの人形だと、身体まで含めて30本くらいでしょうか。ボリュームを出したり、外から見えない骨組みに使ったりと意外に数が必要なんです。


―― どういったモチーフのリクエストが多いですか?

やはりアニメやマンガのキャラクターでしょうか。ときどき「顔は〇○で、衣装は△△にしてください」などのリクエストをされることもあります。衣装やポーズも、その場でお客さんと相談しながら、自由に作れるのがバルーンアートの魅力でもありますね。

 

―― どんなキャラクターが作りやすいですか?

実はゴテゴテしているキャラクターの方が作りやすいんです。レース、編み込みなどパーツが多い方が作りやすいですね。日本のキャラクターは、シンプルで丸いものが多いので難しいです。例えばドラえもんとか、サンリオキャラクターとか……。

逆にピンクパンサーなど、海外のキャラクターは細長いフォルムが多いので、作りやすいですね。風船も元々海外のものなので、向いているのかもしれません。

少し形が変わるだけで可愛くなくなってしまうんですよ。出来栄えがカワイイか、カワイくないかはとても重視しています。自分が納得しないものは最初から作り直します。


 ―― 作品はかなりかさばりそうですが、保管はどうしているのでしょうか?

お客さんに渡すことが多いですね。大きな作品作る際は、一つ一つパーツをばらして持って帰れるよう工夫することもあります。余ったものはビニール袋に入れて持ち運ぶのですが、途中で会った子供にあげることもあり、サンタクロースみたいになります(笑)

また、風船は数日経つとしぼんでしまうのですが、持ち帰った痛バルーン“推しキャラ”の経過を観察のようにTwitterで報告してくれる方もいますよ。大事にしてくれているんだなぁ、と思います。

時には、作品を自分の手で割らなくてはいけないこともあります。何時間も、何日もかけて作っても、割るのは一瞬ですからね。ツライものがありますが、その場でしか見られないというのもバルーンアートの魅力だと思います。


―― 展覧会や、お店などの装飾の場合、現地でふくらませるのですか?

会場に搬入できるのは、どう頑張っても大きなゴミ袋2つ分くらいですね。あとは現地で作成します。いつも電車で移動しているのですが、作品を見た人が「これはあのキャラクターですか?」と話しかけてくれることもあります。

ちなみに、風船は熱さに弱いので電車の座席下のヒーターは大敵です! いつもガサガサさせて網棚に載せるので他の乗客に注目されます(笑)

 

―― 作品のどんなところに注目して欲しいですか?

元々のモチーフがどのように表現されているかを見て欲しいです。違うところも多いと思うのですが、二次元から三次元する中で、バランスやデフォルメされた形状など、バルーンで作るとこうなるのか、という発見があるのではないでしょうか。

 

―― バルーンアートをやっていて、良かったと思うのはどんなときですか?

やっぱり作品作りを見て楽しんでくれたり、喜んでくれたりしたときですね。痛バルーンは新しいジャンルですし、変わっているから目立ちますよね。アイキャッチになるので同じジャンルを好きな人を見つけやすいかもしれません。

作品をSNSで紹介して、友達同士や、知らない人同士のコミュニケーションのきっかけになり、新しい交流が生まれる様子を見ると嬉しいです。

 

―― 今後の活動予定、目標などを教えてください。

2015年9月18日(金)、19日(土)、20日(日)の三日間、大阪・天神橋筋四番街商店街にて、商店街をランウェイにして行う、「痛バルーン ファッションショー」を行います。風船で作ったウェディングドレスや痛バルーンドレスを着てもらうもので、モデルさんは一般公募する予定となっております。

さらに、痛バルーンは海外からの観光客の反応がすごく良いので、海外のサブカルイベントには積極的に参加したいですね。デフォルメや痛○○というジャンルは、日本独特のものでクールジャパンを象徴するものだと思います。痛バルーンが日本文化を知るきっかけになってもらえれば良いです。 


○パフォーマー・ももさん オフィシャルサイト http://mps-momo.go1by1.com/

○もも痛バルーンすたじお http://itaballoon.go1by1.com/about.html


文・篠崎夏美 画像提供・もも痛バルーンすたじお



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