05.30[土] LMJ東京研修センター(5 階特大会議室)
「あなたはクズですか?」
見知らぬ人にそう聞かれたら、あなたはどう答えますか?
少なくとも、自信を持ってクズだと答えることのできる人はいないでしょう。
むしろ、どうして自分がそんなことを聞かれるのかと不快感を示す人のほうが多いかもしれません。
しかし、ここで一度立ち止まって考えて欲しいのです。あなたの考えるクズってどんな人ですか?
クズですが、何か?
まだ見ぬ世界の扉を開ける時には、ほんの少し勇気がいると思うのです。まして、この扉の向こうにクズがいるとなると。
本講座は、クズ初心者向けに開催する1日限定の講座です。
もう、世の中にエリートはいりません。クズの方が面白い。
本講座は、クズになりたいけど周りにクズがいない、どうやったらクズになれるのか分からない。
そんな方たちに向けた講座です。
※クズな男性を理解したい女性にもオススメです。
是非、この講座をきっかけに、「クズ道」を極めてください。
本講座では、各業界で活躍されている方ではなく、例えばプロ雀士などにもなれない、「本物のクズ」が講師となります。
(株式会社ハイ クズ養成講座HPより引用)
ということは、この会場内にいるのは、これからクズになりたいと憧れる人やお知り合いになりたい人……。そして、ある意味一流なクズの先輩が、クズになるための講義を行ってくれるというわけです。
受講生のみなさん。ここだけ見ると大学の講義風景に見えなくもない。
講義風景はいたって普通。ガラの悪そうな人もいなければ、ヤジを飛ばす人もいない。むしろ受講生は皆真剣に聞き入って、クズとは何たるかを学んでいます。今回の受講生は30名程でしたが、ほとんどの受講生は1限から受講されていたそうです。なんて真面目なクズの卵達(筆者は午後から受講)。受講生の8割は男性で、ほどよく人生経験をつんだ味のある大人が多かったように思います。
ちなみにこの講座を受講するきっかけを他の受講生の方に伺ってみたところ、「クズ養成講座というタイトルを見て即決した」、「内容に興味があった」、「ギャンブル狂いの知人の気持ちが知りたくて」、と様々。しかし、残念ながら(?)自称クズの方はお会いできませんでした。
今回の講義のラインナップは『パチンコ・スロット』、『麻雀』、『競馬』、『友人からのお金の借り方』、『酒・タバコ』。気になる異性に趣味を聞かれた際、決して応えてはいけないNGワードのフルラインナップです。ですが、クズはそんな事気にしません。
“どうすればラクして生活できるか”。クズの思考回路はその一言に尽きるそうです。生活保護や医療扶助・住宅扶助といった公的制度、これらはクズからすれば喉から手が出るほど欲しいもの。しかし、選ばれし者しか手にすることができないので、ただのクズは諦めるしかありません。
そうすると頭をかすめるのがギャンブル。元手が何倍にもなって手元に返ってくる、まさに現代における錬金術です。もちろんこれは当たればの話。なかなか当たらないからこそ、クズはあれこれ考えるのです。どのやり方が一番ラクできるのか、どうすれば勝率が上がるのかを理論的に考察したギャンブル攻略方法。
銀行などの金融機関での限度額を超えてしまったクズを、あたたかく迎え入れてくれる友人、最後の砦でもある彼等にお金を借りるのに必要なスキルとテクニック。人生を楽しんでいるクズにとって、今も、そしてこれからも欠かすことのできないパートナー、酒とタバコの歴史。
偉大なる先輩クズの汗と涙の結晶ともいえるべきこれらの知恵が、たった一日でレクチャーされるのだから、決して高いものではありません。
クズ流・友人からのお金の借り方
「お金が欲しい。でも働きたくない。そんな思考回路を持つ彼等が感謝する理由。それは次につなげるためです。感謝されて嫌な気分になる人なんていません。
仮に今回お金を借りることができなかったとしても、決して恨んではいけません。腹が立ったとしても、もともと貸してくれなくて当たり前なのです。そこで怒ってしまうのはあなたの感謝が足りていない証拠です」
雀荘の廊下に住んで家賃2万円という講師は、こう語りました。
心からの感謝は時に相手の心を動かします。
テクニック伝授の前に言われたこの心得。これだけ聞いていると、自分が今いるのはクズ講座だという事を忘れてしまいそうになります。真正面からお金貸してと言われて貸してくれる人なんていません。
いくらクズでも大切な人間関係、いざというときに持つべきものは友。それを一番よく分かっているからこそ、クズは付き合い方に細心の注意を払っています。こうした日々の積み重ねがあるからこそ交渉のテーブルに着くことができるのです。
交渉のテーブルに着くことができたら、あとはひたすら心理戦です。相手もうすうす金のことかと感づいている中での交渉は容易なものではありません。しかしここで先人の知恵が光ります。錯覚を利用したり、相手の深層心理に呼びかけたりすることで自分に優位な展開に持っていこうとします。
今回の講座で、初心者のクズでも使いやすいワザとして紹介されたもののひとつが、『相手の期待に応えたいという気持ちを逆手に取る』というものでした。
例えば、友人からある日突然「あなたはオシャレだ」という評価を得たとします。すると、次にその人に会うときからオシャレに気を使うようになる、その人にオシャレな人だと思わせ続けたいという心理が働きます。
これを応用して「あなたはいつも私を助けてくれるね。お願い事を無下に断ったりしないよね?ホントに便りにしてるよ」これを日々言い続けてみましょう。するとお金を借りる際の成功率がグッと上がります。
もちろん、これは数あるテクニックのうちのひとつ。相手によっては簡単に見破られてしまう可能性もあります。そのために普段の生活からお金を借りられるようなヒントをどんどん見つけていきましょう。借りる金額・相手・自分のキャラクター、これらを研究していって自分にあったテクニックを磨いていってみるのはいかがでしょうか。
酒とタバコはクズのたしなみ
クズでなくても好きな人が多い、酒とタバコ。二日酔いにならないよう飲む量を加減するなど明日の心配をしたり、世間の嫌煙ブームに押されて肩身の狭い思いをしたりしている方も多いかと思います。
「恥」、「幸」、「夢」……。酒と聞いて思い浮かべるもの。酒には無限の可能性があります。
自分の欲求に対して素直なクズはガマンなんてしません。むしろ逆風をポジティブにとらえます。
例えば……
・金がかかる⇒好きなことに金を使うのは素敵なこと。それにお金は借りられるもの! 借りた金で飲む酒はとてもオイシイです。
・体型が悪くなる⇒なんでもすぐに酒のせいにするのは悪い癖。
気持ちの持ち方ひとつで、いくらでも前向きにとらえるのがクズの精神です。だからこそ多少のアクシデントが起きても大丈夫。
講義中のスライドの一コマ。よく見てみると……
メリット(天秤の軽い方)
・人間関係が広がる ・楽しい ・ストレス解消 ・食欲が増える
・人間関係が広がる ・楽しい ・ストレス解消 ・食欲が増える
デメリット(天秤の重い方)
・アルコール依存症 ・お金がなくなる ・体型がわるくなる
『酒のデメリットも実は愛すべきメリットだ』と力説していた最中、まさかの事故。…逆だ、パワポの“メリットとデメリット”の位置が逆だ。
大丈夫、まずは一杯飲んで落ち着くんだ。(ビールぐびり)
もし会社のプレゼンで資料を逆にしてしまったら、悪夢以外の何物でもありません。しかし酒を飲んだ先輩クズは、絶体絶命の状況を笑いに変えてしまいました。酒にはクズの秘められたポテンシャルを引き出す力もあるようです。
きちんとした(?)お酒についての説明がある一方で、当たり前のようにビールの空き缶が置いてある机もあります。講義中に飲酒とは、クズの中のクズ!! さすがです。
現場の図解
クズにとって大切なもうひとつの嗜好品、タバコ。コロンブスが新大陸発見をした際、原住民から友好の証としてタバコをもらいヨーロッパに持ち帰ったと言われています。まさか『クズ養成講座』でコロンブスの肖像画を見るとは思いませんでした。コロンブスも新大陸発見から500年以上たって『クズ養成講座』で、自分の顔が出るとは思ってもみなかったことでしょう。
味や香りの好みはそれぞれ違うので、ダバコの銘柄や味・印象についての意見交換会が行われました。
感想が“おいしい”って、主観的すぎませんか……?
・ラッキーストライク
(アメリカ製のタバコなのでにおいもヘビーで癖があるが、その分おいしい)
・マイルドセブン(自販機やコンビニなど日本中どこでも買えるから)
・セブンスター(重めで味はおいしい)
・キャスター(一番入りやすい入門編)
・クールブースト(メントール入りのブーストがついているので二度おいしい)
・フィリップモリス(それほど癖がなく吸いやすいが販売中止になった)
筆者はタバコを吸わないのでこの話題はよく分からなかったのですが、会場の雰囲気をみる限りでは、皆がそれぞれにこだわりを持って銘柄を選んでいるようです。吸う人には違う銘柄への橋渡しを、吸わない人へは未知の世界への扉の鍵を。クズは決して押し付けることはしません。もし吸う機会があれば、と紹介してくれました。
オススメ銘柄やタバコの歴史などを熱く語る場面も
クズってピュア。クズって素晴らしい
冒頭のように「あなたはクズですか?」と聞かれたら、自信満々にイエスと答える度胸はいまだに無いです。クズだなんて失礼な! という感情が湧くというよりも、実はクズに秘められている能力の高さに気がついてしまった以上、おいそれとクズを名乗るのもいかがなものかと考えてしまったからです。
講座を開くに至った経緯を、株式会社ハイの上野さんに聞きました。
「クズになるための講座になっていますが、昨今コミュニケーションがうまく取れない若者が増えているというなかで麻雀・酒・タバコというのは何かのキッカケになるのではないかと思います。
何事もしすぎるというのは良くないので、クズになりすぎるというのも良くない、たばこを吸いすぎる・酒を飲みすぎるというのも良くないことだと思います。ある程度遊びがあった方が人間面白いのではないのかと思います。その思いから今回のクズ講座を開催させていただきました」
この講座を通じて知ったクズのスキルは、決して一朝一夕に真似ができるものとは思ってもいません。しかし、ひとつひとつをよく見てみるとギャンブルであれ酒やタバコであれ、好きなものを極めた結果なのです。
ラクをしたいという原動力のもと、好きなものや興味のあるものを突き詰めた、最も自分に正直なピュアな存在、それがクズではないのでしょうか。
クズの思考回路が分かったことで、自分の欲求に正直な存在だという新しい見解が開けました。クズからの要求に対して、ほんの少し生暖かい対応ができるようになるのではと思います(最終的には断りますが!)。
2015.05.31 あおきみか