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『男のエロス』がテーマ。でも・・・“エロティック”だけどエロくない!?《おとこ・MEN – エロティックアート展》

アイコン男ってヤツは・・・。

2014/11/27(公開:2014/11/27)
なかなかインパクトのある展覧会のタイトルだが、大丈夫。女性読者の皆様も、もちろん男性読者の皆様も、安心して読んでいただきたい。理由はまたのちほど。


11.24[月]~11.30[日] / 神奈川県 / artmania cafe gallery yokohama 2F 



エロティックアート。しかも、男性が題材という少し変わった展覧会。「エロティック」という言葉から多くの人が連想するのは、セクシーな女性だろう。しかし、このイベントでは多様な感性や価値観で『男性のエロス』を表現する。

‘こうしたアート’に偏見はないと自分では思っているものの、取材に当たって多少の不安があったのは事実。メインビジュアルもなかなかにインパクトがあって「大丈夫かな・・・」と思ってしまった。

しかし、自分でも一体何が不安なのか分からなかった。



会場の入り口には大きな展覧会の垂れ幕


カラフルな旗やオブジェ (あわたようすけ)


ポップな色合いの作品 (あわたようすけ)

会場に足を踏み入れて思った。「あ、これは大丈夫だ」と。何が大丈夫なのか?
それは「下品ではないから大丈夫」ということ。

この時初めて気付いたが、私は“男”、“エロティック”というキーワードから、直接的な表現の下世話なものを想像していたのだろう(男性とアーティストの方々には大変失礼なことだけれど)
女性のエロティックアートは目にする機会が多いが、男性をテーマにしたものはまだまだ少ない。だからこそ、分からない=不安だったのかもしれない。

どうか女性の皆様も、もちろん男性の皆様も、安心して当レポートを読み進めていただきたい。


エキゾティックな雰囲気のエリア (あわたようすけ)

細かい文字でびっしりと‘男性自身’の悩み、ステータス、モテる条件などが描かれている作品もあり「男性はこんなことを思っているのか~」と半分驚き、半分微笑ましかった。男の性には可笑しみ、哀しみが付きまとう。


タロットカードをモチーフにした作品 (あわたようすけ)



神野戒 「死と乙女」

ギャラリーの白い戸に直接ペインティングされた、写実的なドクロの紳士。モチーフとなっているのはマティアス・クラウディウスの詩だという。この詩は乙女と死の会話で成り立っており、死へ誘われている恐ろしい内容のはずなのに、どこかエロティックな雰囲気を感じる。肉体がないのに色気がある。色気って、エロスって、佇まいなんだ。


Miranda
左から Mr.B Black and White photography NFS
“Colorful Penis”Acrylic on pater,2014
キャップにペイントした作品など

ストリート風、ポップアート風の作品。 ビビッドな色、力強いタッチ。こういうエロスの表現もあるのか!と思った。今回の展示を見て“いやらしい”感じがしないのは、ポップな作風のものが多かったからというのもある。また、‘裸’の肌色も使われている作品もほとんどない。主宰の粟田さん曰く、エロス=ピンクや赤などのイメージがあるが、敢えて今回はそうした色を使っていないと言う。

ちなみに、海外だと“エッチ”=ピンクとは限らない。アメリカは青、スペインは緑、中国は黄色が“エロい色”というイメージがあるらしい。文化圏が変わればエロスの意味合いも変わってくる。このイベントでも、リアル、抽象、サイケ、ポップ、様々なとらえ方でエロスを表現している。


なかがわ寛奈さんの作品

ぐにゃぐにゃした線で構成される、摩訶不思議な世界。実は絵を学んだことがなく、まだ作品作りの経験も浅いというなかがわさん。しかし、この独特な世界は彼女にしか作れないだろう。エロスという形のないもの、とらえどころのないものが描き表されている。このイベントの為に制作した新作も含め、約14点を出展しているとのこと。


万華鏡で好きな作品の、好きな部分を『のぞく』。


怪しげな箱、怪しげな垂れ幕をこっそりめくってみると・・・。

なかがわさんの作品は、エロスという言葉から想起される、見てはいけないもの、しかし覗いてみたいという抑圧からの解放がテーマになっている。そういえば『覗き』や『盗撮』でつかまるのは圧倒的に男性が多い。これも男性的なエロスなのか・・・?


いーじまーな。さんの作品 


パンツに入って、いつも貴方のそばにいます♡

男のエロスがテーマだが、ヌードになっているのは女性だけ。性的対象が女性の人にとっては、これも『男性側から見たエロティズム 』なのか・・・?なんだかぐるぐるしてきたぞ・・・。 


紫のクロス、青っぽい照明で、階段も怪しげな展示スペースに


ちょうちんやオブジェも飾られ「男のエロス祭り」状態


主宰の粟田洋介さん

◆開催の経緯
普段から男性がテーマのエロティック作品を作っているが、周りにはあまりそういう人がいない。他の人がどのような作品を作るのか見てみたかったというのもある。また、今回は参加作家7人中、男性は自分だけ。さらに約半分はこれまで男性をテーマにしたアートを作ったことがなかった。そうした人がスゴイ作品を作ってくるなど、女性が表現する男のエロスはとても興味深い。


◆入場や表現の制限について
年齢制限、出展する作品についての制限などは一切ない。子供から老人まで、誰でも見て欲しい。エロティックアートと言ってもジャンルはさまざまだが、今回の展示は少なくともポルノグラフィックではない。エロ本や、エロDVDと一緒に考えて欲しくないと思っている。

性的欲求に訴えている、と言われれば否定はしないが、もっとエロスは身近なものだと思っている。赤ちゃんの性別を確認するように、生まれたときから誰にでも関係するもの。それを「いやらしい!」と考えること自体がいやらしいのではないか。


◆どんなところに‘男のエロス’を感じるか?
何も感じない。作品に登場する男性は自分自身でもないし、性的対象でもない。ただ、同性愛の人を馬鹿にするつもりも全くない。例えば、タロットをモチーフにした作品は縛られた男を描いてみたい、という発想で作ったが自分は縛られるのはイヤ。だが、そうした自分にはない嗜好を持っている人がいることに興味はある。それと同じで、色々な人が色々なことを感じてくれればいいと思う。



どの作品も非常にユニークで、ポップで、オープンで、エロチシズムとユーモアがあった。性別や趣向に関係なく、男性のエロティズムの奥深さと素晴らしさを伝えてくれる。 

最初は若干の不安もあったが、展示を見て感じたのは「下ネタ」的なエロ、ではなく「愛」としてのエロスだった。何をエロスと定義するか?男性とはどんな人間を指すのか?等、難しい問題は一旦置いておくとして、見終えた後は温かい気持ちになれた。

レディー・ガガの「Born This Way」の歌詞で『ゲイでもストレートでもバイでも、レズビアンやトランスジェンダーでも、私は正しい道を歩んでいるわ、ベイビー 』というフレーズがあるが、まさにそんな感じ。みんなちがって、みんないい。




2014.11.26 文・写真 篠崎夏美
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