目を閉じてみる。そのまま立ち上がって、一歩踏み出す。
それだけでも怖いのに、純度100%真っ暗闇の中で運動会をやるらしい。
どういうこと・・・?
09.12[金]~11.03[月] / 東京都 / DIALOG IN THE DARK TOKYO ダイアログ 「DIALOG IN THE DARK(ダイアログ・イン・ザ・ダーク )」とは・・・
完全に光を遮断した空間の中にグループで入り、暗闇のエキスパートであるアテンド(視覚障がい者)のサポートのもとで様々なシーンを体験します。“暗闇のソーシャルエンターテインメント”とも言われ、世界中に広まっています。
完全に光を遮断した空間の中にグループで入り、暗闇のエキスパートであるアテンド(視覚障がい者)のサポートのもとで様々なシーンを体験します。“暗闇のソーシャルエンターテインメント”とも言われ、世界中に広まっています。
以前体験したダイアログ・イン・ザ・ダーク レインバージョン では、ちょっとした段差につまづきそうになることもあり、少しの移動も大変でした。そんな状態で運動会なんて、本当に出来るのでしょうか?それに‘運動会’自体もかなり久しぶり。普段ほとんどスポーツもしないし、やや不安です・・・。
◇前回のレポートはこちら http://evenear.com/article/detail/166/
◇前回のレポートはこちら http://evenear.com/article/detail/166/
サポートをしてくれるアテンド(視覚障がい者)の方々は、スポーツ好きが多いそう。中には、IPC 陸上競技世界選手権第5位(国内新記録達成)の選手や、今年10月にアジアパラリンピックに出場する選手もいるんです!
さらにアテンドと一緒に電車に乗ると、アテンドだけがあまり揺れていないこともあるそう。これは身体感覚が優れていて、インナーマッスルが鍛えられている証拠なんだとか。確かに、視覚以外の様々な感覚を使って生活していたら、身体にも影響が出そうですよね。
会場に入ると、既に運動会の雰囲気満点!!
紙で作られた紅白の花に、メガホン、万国旗、入場門・退場門まで・・・。そしてBGMは「マイムマイム」など、思わず身体が動きそうになる運動会の楽曲が流れます。うわー、この感じ、すっごく懐かしい!!※この後、この感覚が何度も訪れます。
いつもは‘ちゃんとした靴’で取材していますが、今日はスニーカーを履いてきました。靴ひもを結び直していると、校庭で自分の出番を待っていたあの緊張と興奮が鮮やかによみがえります。やたらときつく靴ひも結んでたなぁ、とか、校庭ってほこりっぽかったよなぁ、とか・・・。日差しの感じとか、周りのざわめきとか、そりゃあもうリアルに思い出して懐かしくなりました。
何年ぶり!?ハチマキをしたら気分が引き締まった。
今回は9名のチームで体験。入場門前に集合すると、ハチマキが配られます。赤組、白組があるみたいです。前髪を気にしつつ、後ろで結んで・・・っと。うわー、この感じ、すっごく懐かしい!! やっぱりハチマキすると、なんかシャキッとしますね!意気揚々と、でもちょっとドキドキしながら薄暗い部屋の中へ。
説明を受けて白杖を選びます。今回のアテンドは‘えばやん’。落ち着いていて、かつ溌剌としていて、思わず「先生」と呼びたくなってしまう感じ。 ここでまずは身体感覚をチェック。片足立ちをしてみます。私は数秒でフラフラしてしまいましたが、これが暗闇だとどうなるのでしょうか・・・?
さらに暗い部屋に移動。お互いの顔はもちろん、シルエットすら分かりません。ここでニックネームで自己紹介。さっきまでは何となく緊張してよそよそしかった人たちが、お互いに笑いながらあだ名で呼び合っています。こんな短時間で初対面の人と仲良くなれる場所を、私は他に知りません。
ここから純度100%、正真正銘の真っ暗闇の中に入っていきます。2回目ですがやっぱり少々怖いです・・・。本っっ当に何も見えないんですから。全く見えないのでもちろん人にぶつかります。最初は「わっ、すみません。触っちゃった!」などと言っていたのですが、そのうち慣れてきてどんどんタッチしてコミニュケーションを取れるようになります。人に触るとこんなに温かくて、安心するんだということを身を以て実感します。満員電車などで知らない人に触れるってちょっとイヤなのに、環境が変わるだけでこの違い。面白いくらいです。
暗闇の中であの競技をやっちゃいます。
プログラムの一つに「玉入れ」があります。かなり難易度が高そうですよね・・・。予めカゴの位置を触って確認し、さらに競技中はアテンドさんがカゴのところで鈴を鳴らして位置を知らせてくれます。鈴の音を頼りに「あっちかなー?」という感じで玉を投げ入れます!
うーん、全然入っているかどうか分からない!!そして、地面に落ちた玉を拾うのもかなり難しいのです。真っ暗なのでかがんで手探り状態・・・。踏まれたり、つまずいたら危険なのでお互い声を掛けあったり、誰かがまとめてみんなの分の玉を拾ったり、かなりチームワークが必要になります。
そして各チームの玉入れの結果は、ダイアログ・イン・ザ・ダークSTAFFのTwitterで発表されます。私たちのチームは7個でしたが、果たして皆さんのチームは何個入れられるでしょうか?(27個も入れているチームがいたようです。すごい・・・!!)
その他の詳しいプログラムについては、残念ながら秘密ですが「真っ暗闇なのに!?どうやってやるの?」と思う競技ばかりです。そして競技そのものも面白いのですが、そのチーム分けもとってもユニーク。他の参加者たちとワイワイ楽しめること間違いなし!普段自分がいかに色んな感覚を使っていなかったのか、と愕然としてしまうかもしれません・・・。
そして、運動会の後は楽しい打ち上げも!ビールや麦茶で乾杯出来ます。これも、もちろん真っ暗闇の中。どうやってテーブルにつくのか?どうやってお金を払うのか?どうやって食べたり飲んだりするのか? いつもとは全く違う打ち上げを体験出来ます。
ネタバレは出来ないので、真っ暗闇の運動会をイラストで描いてみました。
「?」のところは実際に体験してみてのお楽しみ♪
暗闇の中で‘見えない身体’を感じる。
あっという間に体験は終了。ほの暗い部屋に移動して、今日の運動会の体験を語り合います。誰かが「『ハチマキ』にみんなのサインが欲しい」と言い出して、ハチマキを交換し合ってちょっとしたサイン会が始まりました。うわー、この感じ、すっごく懐かしい!!
チームのみんなと色々な感想を話す中で、アテンドのえばやんがとても印象に残ることをおっしゃっていました。
『私たちは、皆さんと何も変わりません。皆さんが全ての感覚のうち、90%を視覚で判断しているとしたら、私たちはそれを聴覚や触覚で判断しています。どれくらいの割合をその感覚に集中させているか、という違いだけなんです』
ダイアログ・イン・ザ・ダークを体験する前は、どこかで‘自分とは違う’と思っていた部分があったかもしれませんが、今回2度目の暗闇を体験してみて、結局は人と人の関係なんだということを強く感じました。
同時に最近ニュースになっている、視覚障がい者の方や、盲導犬に対する心無い事件が頭をよぎりました。見えないということがどういう事なのか、私もこうした体験をするまで分かっていなかったかもしれません。インフラをもっと整備すべきとか、もっとお互いに思いやりを持って、とか色々な対策は考えられます。その中のひとつとして、まずはシンプルに自分も体験してみる、という方法もあるのではないでしょうか。相手の立場になる、という以上に様々な経験と考えを得られるはずです。
暗闇の中では余計な情報が入ってこない分、自分自身と向き合って、自分の体幹を意識しました。そして、懐かしい運動会を楽しむと同時に、これまで体験した事のない新しい運動会を体験することが出来ました。
2014.09.15 文・写真 篠崎夏美