東京芸術劇場。
池袋にある芸術文化施設。
大都会の文化的な施設だが、そこに突如として牧場が登場した。
5㎡ほどの木の柵に囲われた芝生の土地
この一角だけのどか。そして、動物が残したと思われる‘痕跡’があちらこちらに・・・。
(お食事中の方、失礼しました。この先は、お食事が終わってから読んだ方がいいかも)
どこからか「めぇーめぇぇ、べぇぇー」という羊の鳴き声と、カロンカロンというベルの音。上か!?上にいるのか!?お客さんたちもキョロキョロ。鳴き声はどんどん近づいてくるようだ。
ひつじ登場!しかもエスカレーターで。
05.09[金]~05.11[日] / 東京都 / 東京芸術劇場 地下1階 ロワー広場
ひつじたちの正体は、カナダの劇団コープス。オリジナリティあふれる動き、演劇的なイメージが融合した、シュールなユーモアが魅力。数々の賞を受賞し、世界的に活躍している劇団。この「ひつじ」は日本各地で上演され、毎回大好評だそう。
人気の理由はそのリアルさ!着ぐるみではなく、ヒトの顔が丸出しの衣装。可愛らしさというより、ちょっと不気味さも感じる。一切媚びない、ひたすらに‘ひつじ’を演じる。そのしぐさや動きは、本物のひつじそのものである。
ヒツジやヤギに特有の、すわった眼も見事に再現
おとなしく柵に入るひつじさんたち。
・・・と思いきや、羊飼いに従わないじゃじゃ馬、じゃなかった、じゃじゃ羊も。
・・・と思いきや、羊飼いに従わないじゃじゃ馬、じゃなかった、じゃじゃ羊も。
結果、こうなる。
柵から離れたところに一頭だけ繋がれてしまった。しかし、人気者でお客さん数名と記念撮影していた。後でこのひつじも柵の中に入ったが、メスのひつじのお尻ばかり追いかけていたので、それが原因で隔離されていたのかもしれない。
ひつじの毛刈り開始!!
バリカンで毛を刈っていく。どんどんモコモコの毛が外れて、白い毛になっていく。途中でひつじ大暴れ!羊飼いはまるで柔道のような技を決めつつ、テキパキ作業を進める。
この表情である。
毛刈り終了。羊毛がなくなって寒いらしく、ちょっとプルプルしていた。
エサを食べたり、オシッコしたり・・・(ここが、ものすごくリアル!!)
乳搾りをしたり。・・・本当ミルクが出てきた!?バケツに入れたミルクを、コップで配る羊飼い。ぎょっとして断るお客さんもいる中で、小さい子供が美味しそうに飲んでいた。
あれは何だったんだろう?そして、どうやっていたんだろう?
大事件勃発!オオカミがきたぞー!!
大都会・池袋にこだまする遠吠え。オオカミだ!オオカミがきたぞー!!
やっぱりエスカレーターで!!
ひつじは『前足』を垂らしているだけだが、オオカミはきちんと四つん這い。
柵に向かうオオカミ!ひつじたちが危ない!
平和だった牧場は大パニック!!すんでのところで羊飼いがオオカミを追い払う。
ふぅー、良かった!!
そして、すごすごと帰っていくオオカミ。やはりエスカレーターで。
ひつじたちも帰って行った。
あっという間の30分間だった。ここは演劇場でもあり、牧場でもあった。ヒトがひつじを演じる。ただそれだけなのだが、わざとらしさ、媚びがない動きは見ていて飽きない。可愛らしくもあり、面白くもあり、思わず笑ってしまうシーンもあった。だが一方で、動物のふりをするヒトを見て笑うヒト、という構図に皮肉めいたものを感じたりもする。
静かな無言劇(メェメェ言うけど)だが、一度見たら忘れられない強烈なインパクトがある。もちろん、ひつじたちのユニークな動きを見ているだけでも楽しめる。
もし本物の羊を観る機会があったら、今回の演劇とその動きを比べ、観察せずにはいられないだろう。
そうなったら、あなたも‘ひつじ’の仲間かもしれない。
2014.05.09 文・写真 篠崎夏美