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謎に満ちた、高貴で不思議な6枚のタピスリー。「タピスリー界のモナリザ」の謎に迫る!

アイコン貴婦人と一角獣展

2014/04/16(公開:2013/07/11)

貴婦人と一角獣獣展国立新美術館

『うっとり、しませんか。』というキャッチコピーがついたこちらの展示イベント。
今回の目的は、謎に包まれた美しき6枚のタピスリー「貴婦人と一角獣」です。
クリュニー中世美術館の至宝、タペストリー界のモナリザ、とも言われる貴重な作品たちです。フランス国外に出るのは、なんとこれが二度目という「箱入り娘」なのです。
 
 
 
 
入り口を入ると、広い会場の壁にぐるりと6枚のタピスリーが掛けてあり、その迫力に
思わず目を見張りました。一枚一枚は大変繊細で優美なのですが、大きさもかなり
大きいですし、それが6枚集まると荘厳な雰囲気さえ感じます。
6枚のタペストリーには、それぞれ寓意が込められており、「触覚」、「味覚」、「嗅覚」、
「聴覚」、「視覚」という五感を表していると考えられているそうです。
 
では、最後の一枚は・・・?
謎めいたタピスリーに興味は尽きませんが、まずは一枚一枚見てゆきましょう。
 
 

【触覚】 
右手に旗を持ち、左手でユニコーンの角に触る貴婦人。
 
ユニコーンは甘えるように貴婦人を見上げています。サルは自分をつなぐ鎖を触り
その感覚を確かめているようです。また、この作品に侍女は見られません。
貴婦人の髪型、左側にいる獅子の顔つきが他のものと異なる事から、この作品だけは
別の時期に作られたとも考えられているそうです。
 
 
【味覚】
侍女が持ったお盆から砂糖菓子を摘まむ貴婦人。貴婦人の手にはオウムがいて、
お菓子をついばんでいます。獅子と一角獣は後ろ足で立ち上がり、荒々しい雰囲気です。
サルも木の実を摘まんで食べようとしています。
 
 
【嗅覚】
女が持ったお盆から花を選び、花冠を編む貴婦人。獅子と一角獣は旗を持ち、大人しく座っています。サルも籠から花を取り出し、その匂いをかいでいます。
 
 
【聴覚】
持ち運び式のオルガンを弾く貴婦人。侍女は譜面をめくっているのでしょうか?獅子が聞き入っているかのように穏やかな表情なのに対し、一角獣は口を開け険しい表情に見えます。サルは見当たりません。

【視覚】
貴婦人は手鏡を持ち、そこに映る一角獣の姿を一角獣自身に見せています。貴婦人の膝に手を置き、じっと見つめるユニコーン。獅子は何やら左の方に視線を向けています。侍女とサルはいません。


そして、最後の一枚(・・・といっても、そもそもこの6枚がどんな順番で見るべきなのかは未だ分かりませんが)が、様々な憶測を呼び、このタピスリーを謎に包まれたものしています。それが「我が唯一の望みに」と言われる作品です。この作品は他の物より大きく、雰囲気も異なります。



【我が唯一の望みに】

青いテントの上部の垂れ幕には「我が唯一の望みに」という文字が書かれています。そして、貴婦人は侍女が持つ小箱に宝石をしまおうとしているのか、取り出そうとしているのか?そして、「我が唯一の望みに」とは何を意味するのか?『愛』、『純潔』、『結婚』、『感情』などを意味するという説もありますが、謎のままです。


 
さぁ、これらの情報をもとに、私なりにこの謎を解明したいと思います!!!
 
 
 
一般的にはドレス、髪型、顔つきが全て異なることから、6枚のタピスリーの「貴婦人」はそれぞれ別の人物とも考えられているようです。しかし、敢えて別々の人を登場させる、というのがどうも不自然に感じられます。 
 
私は、顔つきが違う、というよりも、貴婦人の年齢が変わっているように見えました。特に、目元や口元のしわです。そして、貴婦人の傍らにいるユニコーンの大きさもやや異なっている印象を受けました。
  
 
つまり、並び方は、触覚が一番先。貴婦人も髪を下ろして若々しく、一角獣も小さい。また、このタピスリーだけ作られた時代が異なるらしい、ということからこの一枚が先に作られたのではないか?と推測しました。味覚、嗅覚、聴覚は、ちょっと難しいですね。むりやりこじつけるならドレスや髪型から、味覚が一番最後でしょうか?
 
 
その次は視覚。ここの目の上のたるみがどうも気になるのです。伏し目にしている様子を再現したのかもしれませんが、加齢によるシワかな?それから触覚以外で
 
一角獣に触れているのは視覚だけです。触覚より一角獣との距離が縮んでいるようにも見えます。
 
 
そして、最後はもちろん我が唯一の望み、です。これは装身具を「外して」テントに入るところなのかなぁ、と思いました。
 
 
この一連の作品は、五感=人の欲を捨てて、崇高な望みを手にすることの暗示なのではないでしょうか。
 
 
 
 
 
 見方は人それぞれ、あなたはどう思いますか?
 
 
 
 
 
さて、タペストリーには、千花模様(ミルフルール)と言われる、大きさ、種類も様々な花や植物がちりばめてあり、そこかしこに動物もあしらわれています。
 
 
これだけでも見ごたえはありますが、なんといっても個人的に注目したのは、貴婦人が身に着けているドレスや、装飾品です。その精密なこと!豪勢なこと!!
 
ドレスはそのずっしりとした重み、金糸刺繍のきらめきまで見えるよう、装身具の宝石も一つ一つが輝いています。
 
 
本当に一枚一枚のドレス、一つ一つのアクセサリーが凝っていて、ずっと見ていても飽きません。一部分をじっくり見ても様々な発見がありますし、全体として見てもとても美しく、不思議な作品です。
 



また、今回の展示会ではタピスリーに描かれている様々なモチーフを、彫刻、装身具、ステンドグラスなど同時代のおよそ40点の品々で読み解くコーナーもありました。これを見るとさらに理解が深まるかもしれません。


 
そして、このイベントのもう一つの目玉が、凸版印刷の最新技術によるバーチャルリアリティー映像です。壁に大きく「貴婦人と一角獣」の映像を映し出し、肉眼では確認出来ない細かい部分も拡大して見ることが出来ます。タピストリーが大きいので、高い位置になって見えにくい部分も正面に映されるので、美しさをより感じられて良かったです。織り目の一つ一つまで分かるような超微細・超美麗な映像を優雅な音楽と共に楽しめます。(音楽はCDとして販売されていました)
 
 
中世ヨーロッパ美術の最高傑作、タピスリー界のモナリザとも言われる作品、たっぷり堪能させてもらいました。非常に細かい織りや、美しい図案も素敵でしたが、不思議で、高貴、謎めいた雰囲気にとても魅了されました。
 
 
 
2013.07.10 文・写真 篠崎夏美
    
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