東京都 / アド・ミュージアム東京
イギリスの広告、デザイン、クリエイティブ業界の国際的非営利団体「D&AD」。1963年創設された「D&AD Awards」が50周年を迎え、これまでの受賞作品の数々が公開される。
D&AD賞は、イエロー・ペンシルの名で親しまれており、世界のデザイン、広告賞の中でも審査の厳しさに定評がある。イエロー・ペンシルは卓越したものだけ授与される。
しかし、そのイエロー・ペンシルの中から、さらに、‘真に革新的’で‘次の時代のクリエーティブを切り拓く’ようなアイデアにだけ、「ブラック・ペンシル」という栄誉が授けられる。あまりにも審査が厳しい為に、該当する作品が無い年もあるほどで、世界で最も受賞が困難なデザイン・広告賞として知られている。
入口を入った瞬間に、黒の空間に飲み込まれる。展示場所からしてスタイリッシュ。そこにならぶ、過去から現在までの、革新的な広告の数々。ちなみに、日本の受賞作品は2008年のUNIQLOのみ。これから多くの優れた作品が生み出されることに期待したい。
階段状になった会場の中央にはモニターがあり、座ってCM映像を見られる。両脇にはポスターが展示されている。今まで思いつかなかったようなアイディアもあれば、ごくごくシンプルなものもある。
斬新なアイディアというのは、いつの時代も、人々の心と、社会を動かしてきた。もう大抵のアイディアは誰かがやっているのではないか?と思うこともあるが、これらの展示を見ていると人間の発想はどこまでも柔軟で、どこまでも可能性がある、ということに気付かされる。
単なる宣伝広告ではなく、世界中で起きている社会問題、環境問題についての提言もあり、考えさせられるものが多かった。何十年経っても、優れたデザインが投げかけるメッセージの強さは衰えない。
この「美しき、ブラックリスト展」のキャッチコピーは、『デザインは、世界を救うつもりだ。』パンフレットや、ポスターの端に小さく書かれているだけだが、明確な意思を感じた。また、この展示を見た後なら、デザインで世界を救うことも出来るかもしれないと思えるくらいデザインの力を感じるイベントだった。
2013.11.10 文・写真 篠崎夏美