台湾出身の人気イラストレーター・蚩尤(しゆう)氏が手掛けた、制服イラスト集『制服至上3』。その出版を記念し、中野ブロードウェイのアートギャラリー「リトルハイ」にて個展が開かれている。
ただのサブカルなイベントと見過ごすのは、ゼッタイ惜しい! 台湾アートの「王道」を行く展示会の模様をお伝えしよう。
(日本初個展だった『制服至上2』のレポートはこちら
http://evenear.com/article/detail/262)
http://evenear.com/article/detail/262)
◆懐かしいのに新鮮。台湾アーティストならではの世界観に、心奪われる人続出!
制服を好んで描くイラストレ―ターは多い。しかし、蚩尤氏が彼らと一線を画す点は、徹底した写実主義にある。実際のデザインに忠実な制服はもちろん、水田や建物も細やかに描き出される。
来場客は口を揃えて「どこか懐かしさも感じつつ、よく目をこらすと日本とは異質のものが存在していて、そこ惹かれてしまう」と答える。ノスタルジーと異国情緒が両立する、台湾ならではの独特な風景だ。
また、生き生きとした少女たちの表情も魅力の一つ。日本のマンガやアニメの影響を受けているかと思いきや、あまり大袈裟になりすぎないよう、マンガより実物を参考にしているそう。資料として、日本の女性誌も買うとのことだ。
下描きは鉛筆で描き、パソコンに取り込んでデジタルで着色する。一枚描くのに、早ければ24時間(12時間×2日間)。描いている途中にイマジネーションがわき、描き足しを繰り返して2ヵ月かかることもあるそう。一つ一つがただの「商品」ではなく、「作品」なのだ。
◆もう制服は“卒業”!? アーティスト・蚩尤氏に直撃
展覧会初日、サイン会のために来場された蚩尤氏。ご本人へインタビューを試みた。
(通訳:GAEA BOOKS季亞倫)
――『制服至上』を3作目まで続けてきて、心境の変化はありましたか。
「しばらく制服から解放される!」という喜びですね。制服至上1では台湾北部、2は南部、3は中部の制服を描いてきました。
全体を通して、取材の許可を得るのが大変だったんです。特に1を描くときは、まだ作品が何も作れていないので、どういう作品になるのかわからず、学校側の警戒心が強くて。2冊目を出してからは、そんなこともなくなりました。
―― 「3で卒業」と過去にも発言されていますが、もう続きはないのでしょうか?
今のところ、続編は無いと考えています。台湾は全部で509校あり、その中の160校をセレクションして出しました。これでほぼ「いい」と思うものは描き終えたと思っています。公立校は白いシャツに紺のスカートなど、似たようなものばかりですし。
―― 日本の制服も描いてみたいですか?
機会があれば。ただ取材の許可を得るハードルが、より高いですね。一昨年、漫画雑誌の『月刊!スピリッツ』に依頼されて描いたこともありました。そのときは普通の高校の制服ではNGと言われたので、自分で考えた架空の高校の制服を描いたんです。
―― 日本のマンガ・アニメなどはお好きですか?
ええ。一番印象に残っているのは『寄生獣』ですね。それから、ホラーマンガで有名な伊藤淳二の作品。どちらも自分のイラストのスタイルとはちょっと違います。
―― 絵に好みの女性像が反映されている部分はありますか?
そうですね。昔はすらりとした背の高い女性が好きでしたが、最近は小さめが好きみたいです。「制服至上」も3になって、女の子が小さくなりました。表情は、好みと関係ない気がします。笑っている女の子とか、どんな子かなと想像力の方を優先して描いているので、特に好みに寄せて描いているわけではないです。
―― 参考までに、好きな女優さんはいますか?
最近は、有村架純です。
―― 今後の展望を教えてください。
ひとつの目標として、アイドルを描いていきたいです。
そしてもうひとつは、台湾の神様を擬人化したもの。台湾では、自分は王道をいくアーティストだと思っています。ときには邪道に近いような、セクシーな絵も描いたりしていますが、ただエッチなだけではなく、そこに台湾の文化も取り入れたいですね。
残念ながら『制服至上』は今回で終わりという宣言がハッキリ出てしまった。しかし「機会があれば」という言葉もあったので、依頼があれば描いていただけるかも? 興味を持った国内の高校関係者の方は、ぜひオファーしてみてはいかが!?
※蚩尤さんのTwitterアカウント: @amatizqueen
◆制服美少女のグッズも充実
最後に、今回の個展で登場した新グッズを紹介。クリアファイルは前回の「四季シリーズ」に続き、新たに2種類が追加された(各450円・税込み)。ひっくり返すと後姿になるという、こだわったデザイン!
また、1回300円のガチャガチャを回してゲットできる缶バッジは、全8種類。シークレットも含めてコンプを目指すのもアリ? また、無料で入手できるポストカードと記念スタンプも。一人一枚のみ、確実に手に入れておこう。
蚩尤氏の「女子高生制服絵師」としての、仕事納めになるかもしれない今回の個展。7月24日(日)まで開催中。描かれた少女たちにとっては“卒業式”。ぜひ、来場したその場で目に焼き付けてほしい。
取材/平原学