銀座のド真ん中にあるアンテナショップ「銀座NAGANO」では、長野県の様々な魅力を発信中。長野の名産品の販売や、ワークショップ、また移住や転職相談なども行われています。
3月頭に実施されたイベントは……「信州伊那谷の昆虫食」。いろいろなトークショーに加え、長野県南部の伊那谷の貴重な昆虫料理を食べることもできるそう!
テレビで昆虫を食べるシーンを見るたびに「どんな味なのかな?」と気になっていた筆者。早速お邪魔しました。
■実は女子向け? 昆虫食の魅力を語り合う「昆虫女子会」
この日のイベントは二本立て。昆虫食の実食の前に「昆虫女子会」が行われました。昆虫食を愛する2人の女性によるトークショーとのこと。
……あまりに昆虫だらけの世界に圧倒されそうでしたが、大丈夫なのでしょうか?
結論から言うと全く心配なし! しかも、昆虫女子のトークはとても具体的でわかりやすく、聞き終わる頃には実際に昆虫を食べてみたい気持ちが高まってきました。
登壇者は、食虫植物研究家の木谷美咲さんと、虫食いライターのムシモアゼルギリコさん。これまで数多くの昆虫を食べてきただけでなく、自ら調理もされているまさに昆虫食のプロフェッショナル!
会場は満員。約50人の昆虫男子&女子に囲まれつつ、昆虫食トークが進んでいきました。
昆虫食への誤解その1:毎日食べている……わけではない
昆虫を食べているというと、毎日昆虫だけしか食べていないと思われがちだが、実際はタンパク質の量などを考えるに、主食よりもおかず的。調理にあたっても鮮度が大事で、保存は肉や魚と同様にパック詰めして冷凍保存するのがよいそうです。
木谷さんからは、カマキリの赤ちゃん(ちりめんじゃこみたいに美味とのこと)を食べようとカマキリの卵をうっかり部屋に置いたまま出張に行き、1週間後戻ったら部屋一面がカマキリだらけになったという失敗談が語られました。
昆虫食への誤解その2:貧乏だから虫を食べている……のではない
セミなど野生で手に入りやすい昆虫もいますが、市販品となるとむしろ高価な昆虫が多いです。例えば、今回食事会で出てくるハチノコは100gで約1500円(!!)。さらに海外では、昆虫は肉よりも数倍高い高級食材として重宝されることもあるんだそう。
昆虫食への誤解その3:食べてお腹を壊した……ことはない
おふたりとも、昆虫を食べて体を壊したことは、これまでに一度もなかったそうです。ただし、食べ方にはルールがあるとのこと。初めて昆虫を食べる人に向けての注意事項を教えて頂きました。
・甲殻類アレルギーがあったらNG。
・一度にたくさん食べず、少しずつ食べる。
・生食いは厳禁。茹でたり揚げたり加熱調理のものがよい。
・そして、もちろん毒には注意
たとえばハチの毒は加熱で処理できるので、調理すれば安全に食べられるとのこと。ただし昆虫の中には、ツチハンミョウ科のように神経性の毒を持っているものや、キョウチクトウスズメのように虫自体に毒が無くても主食が毒草のため、腸内に毒が残っている恐れがあるものも。食べ方や種類によっては危険なのです。
いろいろと注意点はありますが、何より昆虫は美味しいのでやめられない、とのこと。
ギリコさんからは、これまで食べた中で特に美味しかった昆虫として「サクラケムシ」の名が挙がりました。桜の葉を主食とする毛虫なので、桜の香りが漂います。また茹でると毛もしんなりするため、調味料がからみやすく、軽く砂糖を和えるだけでまるで和菓子みたいなんだとか!
さらにスズメガ、カミキリムシなどの名前、また「タランチュラはカニミソの味がする」など気になって仕方ないフレーズも飛び交う中、ザザムシの話題に。
ギリコさんは先日、漫画アクション(双葉社)で連載中の雑食グルメコメディ『桐谷さんちょっそれ食うんすか!?』の取材に同行し、ザザムシ漁を体験。冬の天竜川で虫を集めるという非日常の体験に「信じられないくらいリフレッシュできた」と語りました。
漫画では、ザザムシ漁やその味について4月発売の号で2回にわたって紹介される予定とのこと。ちなみに美味しいザザムシのつくだ煮をつくるコツとして、ほかの虫が混ざると味が落ちるので、きちんと選別することが大事なんだそうです。
会場隣のキッチンスペースで、まさに昆虫ごはんが準備される中、昆虫食の魅力について、トークは白熱。
まず昨今のニュースで報じられている通り、世界の人口増加による食糧難問題の解決策として注目を集めています。加えて、昆虫の生命力をいただくイメージから、気持ちが元気になるという面もあるかもしれません。
さらに特に女子向けオススメポイントとして、栄養学的にはアミノ酸やミネラルが豊富。また、外骨格に動物性の食物繊維であるキチン質が含まれるため、ダイエットサプリのように体内の余分な脂肪を排出させることが期待できるんだそうです。
ほかにも、セミパ(セミを食べるパーティー)、昆虫食レシピを考えるコツ(素材の味を生かしつつ、料理で物語を作る)ことも。
木谷さんはハチノコのおにぎりと食虫植物のウツボカズラ飯を合わせて、ひとつのお皿の上で輪廻転生を表現されたりもしたそうです)など、話題はとどまることを知りませんが、1時間を越えたところでお開き。いよいよ実食です。
■伊那谷の昆虫をふんだんに使った「昆虫ごはん会」
トークショーの場から一気に食堂に早変わり。今回の昆虫の提供者、伊那谷で「塚原信州珍味」を営む塚原さんから、昆虫食についてのお話がありました。
昔は子供たちが竹筒にいれて採って食卓に並んでいた昆虫も、今では採る人もそして量自体も減り、安定的な供給は困難。今回出されるイナゴもハチノコも、昨年天候不順であったので少ししか採れなかったとのこと。
現在、ハチノコは2kg3000円程度で提供していますが、全然儲けが出ない。しかし、地元の食文化を守り、昆虫食が広まるようにと、採取・販売を続けているそうです。
そんな昆虫話の横で、スタッフは大忙しで全員分のメニューを調理中。ハチノコを混ぜたご飯は、普段は米2合(約300g)に対してハチノコ60gで作るそう。しかし今回は1kgに対し500gという昆虫大増量(いつもの約2.5倍!)の大盤振る舞い。
(注意:次からは昆虫食のアップが続きます。虫が苦手という方は注意してくださいね)
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まずお皿に並べられた伊那谷の昆虫は3種類。イナゴ(赤茶色)、ザザムシ(黒)、蚕のさなぎ(薄茶色)の佃煮です。
ハチノコのご飯は、白ご飯にハチノコのつくだ煮を混ぜたものと炊き込みご飯の2種類。味付けが上手なのか、ふわっと甘く香ばしい匂いが漂ってきて、食欲をおさえきれません。
いよいよテーブルを囲んで実食です。ちょっと意外だったのが、昆虫食未経験の人よりも食べたことがある人のほうが多かったということ。思っていた以上に浸透しているのかもしれません。
親子で来場している方もいたので、お話を聞いてみました。お子さんがイナゴの佃煮が好きで、お母さんはお弁当のおかずにも入れているのだとか! 肉よりもイナゴのほうが好きで、今回他の昆虫も味わえるということで来てみたとのこと。食べ比べた結果、やはりイナゴが一番美味しかったとのことでした。
また昆虫料理はお酒に合うという情報から、下のフロアで販売している長野県産のワインを一緒に味わっている方もいらっしゃいました。ザザムシを食べるのは初めてで、感動したとのこと。ワインよりも日本酒のほうが合いそうかな? という感想もいただきました。
会場は大入り満員だったため、残念ながら筆者の分のお皿は無し……。ただハチノコご飯が少し余っていたので、特別に分けて頂きました。ご飯の中にしっかり原型をとどめた状態で昆虫が入っています。
人生初の昆虫。まず殻がアクセントとなって、クリスピーのような軽くパリパリとした歯ごたえがあります。胴体部分(?)の食感はミンチ肉のようで柔らかい。そして何より、全体の味付けが甘くて、美味しいんです。
最後に昆虫女子の木谷さんとギリコさんから「何度食べても、やっぱり箸が止まらなくなる美味しさだった」という感想をいただき、実食イベントもおひらきとなりました。
伊那谷は元から食べ物が豊かなエリア(寒天やお菓子、ウイスキーや薬用酒などの会社があります)。今回昆虫食について注目してみても、昔ながらの伝統の食文化もある上に、実際に美味しい昆虫も多くいることから、昆虫食の宝庫とも言えるそうです。
残念ながら次回の開催は未定とのことですが、伊那谷の産直市場などでは昆虫食が売られており、もちろん安全に美味しく食べることができるのだそう。
春の訪れを感じるこの時期。虫がたくさんでてきて“虫食い”さんたちにとっては良い季節と思いきや、意外にも昆虫食のハイシーズンではないそう。しかしながら、栄養たっぷりな虫を食べれば新生活も元気に過ごせるかもしれませんよ。
(イベニア/高柳優)