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原宿のオシャレストリートを抜けたら地獄だった…。カワイイ地獄はここにある!「グロテスク☆ポップ~地獄と世俗」

アイコングロなのにポップ、ポップなのにグロ!

2017/02/04(公開:2016/12/14)
カワイイが正義の街、原宿。以前この駅に降り立ったのは、小嶋独観先生の企画展「珍寺大道場 大博覧会」のためだった。

おしゃれな若者の波をかき分け向かったのは、前回と同じイベントスペース、デザインフェスタギャラリー。白を基調としたおしゃれな外観。しかし、開け放たれたドアからは、再び地獄の風景が隠れることなくダダ漏れていた。



今回訪れたのは、小嶋独観子さんの 地獄をモチーフにした珍寺盛りだくさんの企画「グロテスク☆ポップ~地獄と世俗展」。夫の小嶋独観さんとともに世界の珍寺を回っている、珍寺フリークの間では知らない人はいない、珍寺界のパイオニアだ。


◆キッチュでラブリーな「地獄」

珍スポット好きを、もはやそのタイトルだけでゾクゾクさせる企画展。独特な世界観を布とミシンで作った大きな掛け軸型のキルトで表現した。 グロやエロというテーマながら、カラフルな表現によってキッチュさとラブリーさが醸し出されている。

モチーフとなったのはタイ各地にある「地獄寺」。『悪いことをするとこんな目にあうぞ』という教訓を、グロテスクなオブジェなどで伝える寺である。立派なお寺が世界にはごまんとある中、どうしてよりによってこのシュールな寺をテーマとしてピックアップしたのか。



学生時代、美術を学んでいたという独観子さん。海外でたくさんの美術館を見て回る中で、著名な芸術家の作品よりも、民衆が作り上げる、信仰心のあまり気持ちが先走り、感情が溢れすぎてしまう作品がおもしろいと思うようになったという。

そんな中、宗教や建築物に精通していた独観さんとともに訪れた、タイの地獄寺のスゴさに魅せられてしまったとのこと。子育てがひと段落して創作意欲が湧いてきたため、作品の制作に着手し、初めは学生時代に学んでいた抽象画をモチーフに制作を開始した。



地獄寺をモチーフに取り入れてみたところ、ミシンや布で表現できる世界観と非常にマッチし「これだ!」と閃いた。その後は、なんと展示物すべてを4ヶ月で作り上げたというから驚きだ。

地獄寺だけでなく、独観子さんの友人・知人を昭和のエロティックと掛け合わせた「俗っぽい」作品もあり、地獄と世俗の対比がなされている。






◆女子力の高い「餓鬼」

地獄を表現した、というとおどろおどろしく恐ろしい作品をイメージする方が多いかもしれない。しかし今回並ぶ作品に恐ろしさはひとつもない。逆にポップでカワイイ。これこそキモカワ、というものだと思う。それは独観子さんが作品に使う生地によるところが大きい。

例えば、背景には花柄の真っ赤なレースが使用された、餓鬼を表現した作品。炎にはスパンコールが散りばめられている。餓鬼の肌はサテン、長―い舌はビロード。およそ地獄とはかけ離れた女子力の高い装飾によって、ポップさが1万倍くらいに増え、サテンとビロードで表現された餓鬼の存在感はハンパない。 





裸の女性モチーフも多用されているが、これも地獄寺からインスピレーションを得たもの。神話などのストーリーが付くと、裸の女性を描いたり作ったりするのが不思議とエロいものではなくなるという。枝にたわわに実った女性をオーナメント風に仕上げた作品は、刺繍により温かみとキュートさを増している。



全裸の女性が絡み合うような額縁は、オーガンジーの布を纏う事で優しいラインを描いている。




独観子さんがチョイスした表現の手法である「手芸」と、テーマの「地獄と世俗」が、驚くほどマッチし、会場に一体感を出していたのは間違いなかった。

会場には掛け軸型の大きな作品の他に、早稲田大学院でタイの地獄寺について研究しているという末恐ろしい若者・椋橋彩香さんの写真の展示も。



街で身につけていたら、良い意味でも悪い意味でも目立ちそうな、独観子さんお手製の 衣料品も並ぶ。


さらに学校や会社で、いろんな意味で注目を浴びそうな文房具や雑貨の販売、夫の独観さんの書籍の販売が行われていた。



ちなみに以前の企画展で、私は珍寺・珍スポットがコラージュされたノートを購入。かなり真面目な打合せシーンでもそれを頑なに愛用していたところ、クライアントの仲間内で「あの人のノートすごいよね」と陰口……いや、話題になっていたことがあった。今回も激しい品ぞろえで、訪れる人々が恐る恐る手に取っていた。


「おもしろければそれでいいじゃん、と思えるようになった。賢いと思われなくてもいい、と吹っ切れるようになったのは年の功。20歳では、今回のものは作れなかったと思う」

そう言い切る独観子さんはかっこよかった。長年誰よりも多くの珍寺を訪れ、得たインスピレーションというのは計り知れない量だろう。それが彼女のひらめきによってこれからも次々と作品になっていくのを、我々珍寺フリークは心から待ち望んでいる。

(森嶋千春/イベニア)




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